看護師採用試験の小論文対策|テーマ例と書き方のコツを解説

看護師採用試験の小論文対策|テーマ例と書き方のコツを解説

最終更新日:2024/04/03

看護師の採用試験では小論文が課されることも多く、小論文の内容は採用を決める判断材料のひとつです。今回は小論文の書き方がわからない人のために、書き方のコツや出題されやすいテーマを解説します。ぜひ参考にしてください。

看護師採用試験の小論文で採用側がみていること

小論文は与えられたテーマについて自分の考えを論理的に述べるものです。採用側は小論文の内容から受験者の人物像を読み解き、病院が求める人材なのかを判断します。

看護師採用試験の小論文で、具体的に採用側がみているポイントは以下の4つです。

  1. 考えや価値観
  2. 論理的思考
  3. 客観的な視点
  4. 知識の幅

4つのポイントをそれぞれ具体的に解説します。

1.考えや価値観

小論文は主張する内容により、その人の考え方や価値観がわかります。そのため、採用側は小論文の内容からその人の看護観や看護師としての素質を読み取り、求める看護師像とマッチしているかをみています。

考え方や価値観は一般論ではなく、その人の経験から得た考えや価値観が評価される傾向にあるようです。また、受験者が入職後に活躍できる人材かを判断するために、看護師として働く熱意や目標もみられるでしょう。

2.論理的思考

論理的思考とは「物ごとを正しく理解し、筋道を立てて考える力」のことです。小論文は感想文や作文とは異なり、与えられたテーマを正しく理解したうえで、根拠に基づいて自分の主張を述べる必要があります。

この論理的思考は、多くの患者さんと接し、多職種の方との連携が求められる看護師にとって必要なスキルのひとつです。そのため採用側もテーマに対する答えが書かれているか、主張と根拠が噛み合っているか、内容に一貫性があるかなどを重点的にみるでしょう。

3.客観的な視点

小論文は主観である自分の考えを述べるものですが、主張を裏付ける理由には客観的な視点も求められます。なぜなら、主張の理由が主観的な内容に偏っていると、納得感が薄れてしまうからです。

独自の感性に基づいて述べられた主張は、看護師の仕事においても偏って判断する可能性が否めません。そのため採用側は、小論文の主張を裏付ける理由に客観的な視点があるかをみています

4.知識の幅

採用側は、小論文の内容から受験者がどの程度の知識を持っているかもチェックします。看護師採用試験の小論文でみられている知識には、一般常識や日本語力はもちろん、看護や医療の知識も含まれます。

とくに小論文で看護や医療、社会情勢などに関連するテーマを課す病院は、受験者が持っている専門的な知識の幅をはかる意図があるかもしれません。

【看護師採用試験の小論文】出題傾向とテーマ例

ここでは看護師採用試験の小論文の出題傾向とテーマ例を解説します。

小論文の出題傾向は2つに分けられる

出題されるテーマは病院によりさまざまですが、出題傾向は大きく「条件なし」と「条件付き」の2つに分けられます。

1.条件なし

条件なしの小論文とは、与えられたテーマに対して自分の考えや価値観を自由に述べるものです。例えば「あなたの看護観について自由に述べなさい」のように、テーマに当てはまっていれば小論文の内容は自由に書いて構いません。

看護師採用試験で小論文を実施している病院は、条件なしのテーマを採用している場合が多いようです。条件なしのテーマは自分自身について、看護、医療についての内容で出題されることが多く、出題する意図は受験者の看護観や価値観を知るためだと考えられます。

2.条件付き

条件付きの小論文とは、与えられた課題文や資料について自分の考えを述べるもの、回答の仕方に条件が付け加えられているものです。例えば「課題文を読んで超高齢化社会について論じなさい」「チーム医療について実習の経験をふまえて述べなさい」などがあります。

条件付きのテーマの場合、設問を正確に読み取って文章を組み立てる必要があるため、論理的思考や知識の幅を読み取りたい意図があると考えられます。

出題されやすいテーマ例

出題されやすいテーマは、大きく3つに分類できます。それぞれの具体的なテーマ例と採用者側の出題意図を解説します。

自分自身の考え方に関するテーマ例

自分自身の考え方について問われるテーマ例には、以下のようなものがあります。

  • あなたの看護観について
  • あなたの理想の看護師像とは
  • 看護実習で心に残ったこと
  • あなたの強みと課題について
  • 10年後の自分について
  • 看護師になったらあなたが貢献できること

自分自身の考え方に関するテーマを出題する目的は、受験者の価値観や看護観を知るためです。また、強みや課題を客観視できているか、成長意欲があり将来に期待できるかを読み取る意図もあると考えられます。

このようなテーマが出題されたら、自分の経験から得た考えを主張し、体験談を交えた理由を根拠として述べると説得力のある小論文になるでしょう。

医療・看護に関するテーマ例

医療・看護に関するテーマ例には、以下のようなものがあります。

  • 再生医療について
  • 高齢化社会における医療のあり方
  • チーム医療において必要な看護師としての心構えとは
  • 看護師の必要なコミュニケーション能力とは
  • 今までの臨地実習(看護実践)の中で経験した倫理的ジレンマについて

医療・看護に関するテーマには、具体的な医療用語に対する考えを求めるものや、医療・看護知識を必要とする分野においての看護師としての姿勢を問われるものがあります。

医療・看護について出題する目的は、受験者の医療・看護分野の知識の幅をはかるとともに、看護師としての姿勢を読み取る意図があると考えられます。与えられたテーマの課題を分析し、課題に対する自分の考えを述べることが大切です。

社会に関するテーマ例

社会に関するテーマ例には、以下のようなものがあります。

  • 2025年問題について
  • 働き方改革について
  • 最近の気になる医療ニュースについて
  • SNSの普及とコミュニケーションの欠如をどのように考えるか
  • 災害医療について

社会にふれたテーマは、近年取り上げられている社会情勢や社会問題について出題される傾向があります。

社会について出題する目的は、社会の動向に関心を持ち一般常識として知っているか、関連知識を持っているかを知るためです。看護師採用試験の小論文で社会についてのテーマを出題する病院はさほど多くありませんが、対策としてニュースや新聞で取り上げられている社会情勢には関心を持っておきましょう。

【看護師採用試験の小論文】書き方のコツ

ここでは小論文の書き方の4つのコツを解説します。

時間配分の目安を決める

限られた時間で書き上げる必要がある小論文は、時間配分がポイントです。目安で構わないので、何分までに何をするのか決めましょう。ちなみに、文量は制限時間内に指定された文字数の8割以上埋めるのが基本です。できれば9割程度埋められると良いでしょう。

文字数や時間制限の指定は病院により異なります。病院から指定される文字数と制限時間の例をまとめました。

  • 30分で400文字書く
  • 60分で800文字書く
  • 75分で1,200文字書く

看護師採用試験では800文字、時間制限60分の病院が多いようです。病院によっては採用試験当日に小論文が出題されるのではなく、事前にテーマが出題され期日までに郵送での提出を求められることもあります。事前提出の場合は、様式が決められていることがあるため注意してください。

制限時間が60分の場合の文章構成、記述、見直しの時間配分は以下のとおりです。

やること 目安時間
(60分の場合)
文章構成 ・設問を読み解く
・主張する内容とその理由・根拠を決める
・文字数の配分をざっくり決める
15分
記述 ・文章表現に注意しながら書く 40分
見直し ・読み返して内容をチェックする 5分

上記を参考に、文字数や制限時間に応じて時間配分を考えて書きましょう。制限時間に対し文章構成が2〜3割、記述が6〜7割、見直しが1割程度の時間配分がおすすめです。

構成は「答え」→「理由」→「結論」を意識

小論文の文章構成にはいくつかの種類がありますが「答え」→「理由」→「結論」の順に書くと、相手に伝わりやすい文章が書けます。各内容の文字数の目安は以下のとおりです。

構成内容 文字数の割合の目安 目安文字数
(800文字の場合)
答え 私は〇〇と考える。 全体の1〜1.5割 100文字
理由 その理由は△△△だからだ。 全体の5.5〜6割 450文字
結論 よって、◯◯である。 全体の3割 250文字

それぞれの項目に書くべき内容を詳しく解説します。

答え

冒頭では最も伝えたいこと、つまりテーマに対する自分の考えを書きます。「〜〜について私は◯◯と考える」のように、はっきりと簡潔に書くことが大切です。書き出しから自分の考えを明確にすることで、読み手に主張する内容が伝わりやすく、次に書く理由の理解度も深まります。

理由

次に自分がなぜそのような考えに至ったのか、理由を述べます。理由は自分の考えの正当性を高めるために体験談や具体例、社会的事実を盛り込みましょう。理由を説明する場合も書き出しから理由を明確にし、その後に具体的な説明を付け加えると相手に伝わりやすくなります。

結論

最後に結論としてテーマに対する自分の意見を再度示します。結論には自分の考えを踏まえた今後の目標や解決策を盛り込むとまとまりが良く、将来への意欲もアピールできます。

具体例を理由に加える

小論文では自分の考えに対する理由に具体例を加えるとより説得力が増します。なぜなら一般論を理由に考えを主張するよりも、体験談など具体例を加えたほうが読み手にとってイメージしやすいからです。

例えば「患者さんに寄り添う看護」のテーマで出題された小論文で「個別性が大事」という意見を主張する場合「看護は全てのライフステージの人を対象とするため、患者さんの状況は人それぞれだから」と説明するよりも「実習で私とクラスメートは糖尿病の男性患者さんを受け持ったが、それぞれの患者さんのライフスタイルや求めるQOLは異なるものであった」と説明することで説得力が増すはずです。

理由を具体的に書くためには、経験や知識が必要になるため、日ごろから経験や知識をストックしておきましょう。

一般的な書き方のルールをおさえておく

小論文では、文章表現や原稿用紙の使い方において注意すべき点があります。

  • 文末表現を統一する
  • 一人称は「私」で統一する
  • 一文は50文字を目安に短く簡潔に書く
  • 同じ表現の繰り返しは避ける
  • 原稿用紙の基本的な使い方を守る

なお、看護学生専用の「就活のトリセツ」では、小論文を見直すときのチェックポイントや原稿用紙の使い方などがわかりやすくまとめられています。さらに、面接から入職までの採用試験対策も掲載されているので、こちらもぜひチェックしてみてください。

就活のトリセツ

※ナース専科就職ナビより

【看護師採用試験の小論文】対策方法

ここからは看護師採用試験の小論文の対策方法を紹介します。小論文は情報収集や練習が必要です。志望先の採用試験に小論文がある人は、早めに対策しておきましょう。

過去問で志望先の傾向を知る

まずは志望先の過去問情報を集め、出題傾向をつかみましょう。なかには、過去に出題された問題を公式サイトに掲載しているところもあります。過去問情報が公開されていない場合は、志望先の口コミサイトを活用する方法もあります。

学校の先輩に志望先の採用試験を受けた人がいれば聞くのもおすすめです。教えてもらえない場合もあるかもしれませんが、志望先の説明会で質問してみても良いでしょう。

実際に書いてみる

過去問の傾向がつかめたら、実際に小論文を書いてみましょう。過去問情報がわからない場合は、出題されやすい看護観などのテーマで練習してみましょう。

実際に原稿用紙を使い、時間を測りながら練習します。最初は手が止まってしまうかもしれませんが、時間内に書けるところまで書いてみましょう。時間内に最後まで書ききれなかった場合は、時間をかけて仕上げた後、振り返ります。何度か練習するうちに、時間配分や書き方のコツがつかめるようになるでしょう。

添削を受ける

練習で書いた小論文は、添削を受けるのがおすすめです。可能であれば学校のキャリアセンターや先生に添削を依頼し、第三者の意見をもらいましょう。添削してくれる人がいない場合は、家族や友達にお願いするのもおすすめです。自分では気づかない視点の意見をもらえるかもしれません。

体験エピソードをストックしておく

小論文の理由を説得力あるものにするためには、日ごろの体験から得た気づきをストックしておくことが大切です。実習や学校生活で気づいたこと、感じたことを簡単にまとめておきましょう。まとめ作業することで、思考の整理や考えを言語化する力も身に付きます。

採用側の心に刺さる小論文を目指そう

小論文は看護師採用試験で実施する病院も多く、小論文の内容は採用を左右します。出題される小論文には書き方のコツや頻出テーマがあるため、しっかり対策することで本番も落ち着いて対応できるはずです。苦手意識を持たずに、しっかりと事前に対策しておきましょう。

執筆者情報

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柴田 実岐子

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福岡県生まれ。大学卒業後、一般企業に勤務し、社会人から看護師免許を取得。急性期外科などで経験を積んだのち、精神科、慢性期の一般病棟、健診センターなどさまざまな職場で勤務。さらに夜勤専従・派遣・応援ナースなど、多種多様な働き方を経験した。現在は離島移住をきっかけに、へき地医療に従事しながらライターとして活動中。