肝炎ウイルスの種類と性質・特徴、キャリア化するケース、母子垂直感染を防ぐ方法

肝炎ウイルスの種類と性質・特徴、キャリア化するケース、母子垂直感染を防ぐ方法

最終更新日:2024/01/31

新型コロナウイルス感染症は5類になりましたが、依然として新型コロナウイルスをはじめ、インフルエンザやノロウイルスなどによるさまざまな感染症は猛威を振るっています。ここでは肝炎ウイルスに焦点を当て、種類や特徴、感染防止の方法などを解説します。

問題 針刺し事故によって感染するのはどれか。

  1. RSウイルス
  2. B型肝炎ウイルス
  3. ヘルペスウイルス
  4. サイトメガロウイルス
  5. [第106回看護師国家試験より]

解答・解説

1(×)→ウイルスは飛沫感染や接触感染によって感染し、乳児の細気管支炎を引き起こします。

2(〇)→B型肝炎ウイルスは、針刺し事故等で血液を介して感染するほか、性交渉や産道感染(産道や母体の血液に存在する病原体が、出産時に胎児の皮膚や粘膜を通して感染する)などによっても感染します。

3(×)→ヘルペスウイルスは、皮膚・性器・口唇等に発症した水疱やびらんとの接触感染や、飛沫感染、性行為感染などによって感染します。

4(×)→サイトメガロウイルスは、産道、母乳、唾液、輸血を介しての感染が考えられます。

Point:病原微生物の感染経路をチェックしよう

覚えておきたい|ウイルスには敵も味方もいる

細菌、真菌、ウイルス、プリオンの構造から違いを知ろう」の回では、「ウイルスは増殖するときにだけ生きた細胞に感染し、リボゾームを乗っ取って自身の設計図(DNAまたはRNA)に沿ったタンパク質を合成させる」ことを学びました。このことから、わたしたちはウイルスに「狡猾な寄生者」というイメージをもっています。

しかし近年の研究では、ウイルスは、なにも人間に悪影響を及ぼすものばかりではないことがわかっています。一部のウイルスはわたしたちのDNAに組み込まれ、胚の成長を助けたり、免疫系を調整したりするなど、人間に恩恵をもたらしているものもあるそうです。

哺乳類が保有するウイルスは少なくとも32万種に及び、宿主に寄生して病気をもたらす恐ろしい面と、宿主の生存や進化を助ける協力者としての面があるようです。まだまだ未知な部分が多いウイルスですが、その特徴を知り、うまく付き合っていくことは、今後の人類の課題かもしれませんね。

肝炎ウイルスは現在5種類

ウイルスは特定の細胞に感染します。肝炎ウイルスの場合、そのターゲットは肝細胞です。わたしが国家試験を受けたころ、肝炎ウイルスはA型、B型、非A非B型(AでもBでもないもの)という、3種類しかわかっていませんでした。

しかし現在は、非A非Bといわれていたなかに、3種類(C、D、E)のウイルスがあることが判明しています(表1)。今後も検査技術の発展によって、新しいウイルスが発見される可能性があるでしょう。

表1 肝炎ウイルスの種類と性質表1 肝炎ウイルスの種類と性質

肝炎ウイルスは、宿主の身体に入ると、肝細胞に向かって移動していきます。このとき宿主の体内では、白血球による攻撃が始まります(参照)。ヘルパーT細胞の指示によりB細胞が抗体(武器)による攻撃を行うほか、肝細胞に入り込んでしまった肝炎ウイルスに対しては、キラーT細胞による細胞破壊が行われます。キラーT細胞によって肝細胞がどんどん破壊されていくのが急性肝炎で、肝細胞が急激に減少して肝臓の機能が低下したことにより、発熱、黄疸、倦怠感などが出現します。

肝炎ウイルスのうち、A型とE型はともに経口感染する特徴がありますが、これらは感染しても一過性であり、ウイルスは治癒により完全に排除されます。一方、B型、C型、D型は血液を介して感染し、肝炎になったあとに、そのまま体内にウイルスが居座ってしまい[キャリア]となる場合があります。

肝炎ウイルスがキャリア化する場合、しない場合

B型肝炎ウイルスは、免疫力の高い成人が感染した場合は、ウイルスを完全に排除できる確率が高く、ウイルスが[キャリア]となり慢性肝炎に移行する確率は低いと言われています。

一方、免疫力の低い胎児の頃に胎盤を介して母親のウイルスが感染した場合は、B細胞やキラーT細胞が未熟すぎて攻撃できないため、肝炎症状が出ずに、そのままウイルスが居座ってしまいます。この状態を「無症候性キャリア」といいます。無症候性キャリアのほとんどがいずれは肝炎を発症しますが、肝炎が落ち着いたあとに再燃して慢性化したり、不幸にも肝硬変や肝臓がんに移行したりする場合があります。

B型肝炎から母子感染を防ぐ対策

妊婦がB型肝炎に感染している場合、胎児を生後に感染から守るために、医療現場では次のような感染防止策が行われています。

生後12時間以内に新生児にHBグロブリンを注射することと、定期的にHBワクチンを接種することです。HBグロブリンは、B型肝炎ウイルスに対する抗体のこと、HBワクチンは、新生児自身がウイルスに対する抗体を作るように免疫システムを刺激する手段です。これらの対策によって、キャリアになる新生児は現在、激減したということです(図1)。

図1 新生児を母体のB型肝炎から守る方法図1 新生児を母体のB型肝炎から守る方法

エピソード|新人時代の針刺し事故とその後

かくいうわたしは、看護師1年目の頃、B型肝炎感染患者さんに使用した注射針を自分に針刺ししてしまったことがあります。現在のような針刺し事故防止のルールが確立する前のことだったのですが、それにしてもショックでした。

師長さんに言われてすぐに刺し傷を流水で洗い、内科を受診して、HBグロブリンを注射してもらいました。おかげで発症せずに済みました。わたしの場合は、体内にウイルスが入った瞬間を意識できたのですぐに対策をとれましたが、臨床現場では知らないうちにさまざまなウイルスに感染し、発症する可能性があります。

標準予防策(スタンダードプリコーション:患者の血液、体液、汗を除く分泌物、排泄物、あるいは傷のある皮膚や粘膜を感染源とみなし対応する方法)はそうした不幸から、医療従事者と患者双方を守るために考えられた予防策です。みなさんも学生のうちからしっかり体得してください。

執筆者情報

プロフィール画像

廣町 佐智子

hiromachi-sachiko

<日本看護研究支援センター 所長> 看護系短大・大学での教員経験ののち、2002年より日本看護研究支援センターにて、臨床看護師の看護研究指導に従事。同時に、解剖学や看護師国家試験対策の非常勤講師として、全国の看護学生の指導も経験。国家試験のすべての領域についてのわかりやすい指導には定評がある。