看護師国試対策|細菌、真菌、ウイルス、プリオンの構造から違いを知ろう
最終更新日:2024/05/14
世界を震撼させ猛威を振るったCOVID-19は、新型コロナウイルスと呼ばれるウイルスです。病原微生物には他に、細菌、真菌、プリオンなどが存在しています。それぞれの違いと特徴は何であるのかを構造からひも解き解説します。
問題 感染性因子とその構成成分の組合せで正しいのはどれか。
- 細 菌 ― 核 膜
- 真 菌 ― 細胞壁
- プリオン ― 核 酸
- ウイルス ― 細胞膜
[第105回看護師国家試験より]
解答・解説
1.(×)→細菌は細胞核をもたず、遺伝情報をもった核酸がむき出しになっていて、生物学では「原核生物」に分類されます。
2.(〇)→真菌は細胞膜の外側に細胞壁が存在します。生物学的には細胞核をもつ「真核生物」に分類されます。
3.(×)→プリオンはタンパク質からなる感染性因子で、DNAなどの核酸をもっていません。
4.(×)→ウイルスには細胞膜はなく、カプシドというタンパク質の入れものに核酸(DNAまたはRNA)だけを入れています。
微生物の分類
微生物の区分 | 生物学的分類 | 特徴 | 代表的な病原性微生物の例 |
---|---|---|---|
ウイルス | 生物ではない | カプシド(タンパク質の入れ物)の中に遺伝物質(ゲノム)を入れている。細胞を持たず、自分の力だけでは増えることができない | ● コロナウイルス ● インフルエンザウイルス ● エボラウイルス |
細菌 | 原核生物 | 糖タンパク質が主成分の細胞壁という強固な鎧を身にまとっている。外部から栄養を取り込んで自生することができる | ● 大腸菌 ● 緑膿菌 ● ブドウ球菌 |
真菌 | 真核生物 | いわゆる菌類で酵母・カビ・キノコが含まれる。酵母や糸状菌といったものの一部は感染症を引き起こす | ● カンジダ ● アスペルギルス |
原虫 | 寄生虫のうち、単細胞生物のものを原虫として区分する | ● マラリア ● トリコモナス |
真核生物
真核生物の細胞の特徴は次のとおりです。
- 細胞壁が存在しています。
- 細胞の遺伝情報を担う核は、核膜に覆われていて、細胞質との間の境界がはっきりしています。
- 細胞小器官(核を含むゴルジ体、リソソーム、リボソームなど)が存在します。
真核生物は構造が複雑で、サイズも直径10~20μmほどと大きめです。真核生物はこうした複雑性から、単細胞生物だけでなく、人間のような複雑な構造をもった多細胞生物までさまざまな生物で構成されます。
原核生物
原核生物は、真核生物に比べて構造が単純です。
細胞壁はありますが、原核生物に核はありません。核だけでなく、生体膜に包まれた細胞小器官も存在しません。また、サイズは直径2μm程度で真核生物の細胞より小規模です。こうした特徴から、原核細胞からは、複雑な構造を持った多細胞生物が構成されることはなく、細菌のような単細胞生物しかありません。
ウイルス
ウイルスは「生物ではない」といわれています。
「生物」であるためには、「栄養を取り入れ、成長、繁殖する」ための細胞をもたなければなりません。しかし、ウイルスの構造は至ってシンプルで、「カプシド」というタンパク質の入れものの中に自身の設計図である核酸(DNAまたはRNA)を搭載しているだけです(ウイルスによっては、カプシドのまわりに、エンベロープやテグメント、スパイクなどと呼ばれるタンパク質の構造をもっているものもあります)。そのためサイズは極小で、20~200nm(ナノメータ)ほどです。
ウイルスは増殖に必要なリボソーム(タンパク質を合成する細胞小器官)を持っていないため、増殖のときだけ生きた細胞に感染します。
ウイルスは感染した細胞のリボソームに自身の設計図(DNAまたはRNA)を忍び込ませ、設計図に沿ったタンパク質を合成させ、仲間を増やします。またウイルスが細胞内で増殖すると、多くの場合、その細胞は破壊され死滅してしまいます。
プリオン
プリオンとは、タンパク質から成る感染性因子をさします。
プリオンには細胞のような構造はなく、生物ではありません。プリオンの正体は未知な部分が多いのですが、感染すると異常プリオン蛋白が中枢神経系に蓄積し、神経細胞が変性します。その結果、脳にスポンジ状の穴があき、認知症、ミオクローヌス(突然、四肢・顔面・体幹などに不随意運動が起こること)などを引き起こします。
動物由来のプリオンは、通常はヒトには感染しないといわれていますが、ヒトのプリオン病である変異型クロイツフェルト・ヤコブ病は、牛のプリオン病(ウシ海綿状脳症[BSE])が感染して発病すると考えられています。
かつてBSEに感染した牛の中枢神経を原料としたエサ[肉骨粉]が、他の牛に与えられたことが原因で、英国などを中心にBSEが広がりました。その牛の肉を食べることによって、人間の間にも変異型クロイツフェルト・ヤコブ病が発症したのです。しかし現在では完全管理が徹底されていて、感染の不安をもたずに安全な牛肉を食べることができるので安心してください。
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豆知識|抗生物質はウイルスには効果がない
風邪(上気道炎)の原因のほとんどはウイルスです。風邪をひいてしまったら、頭痛や発熱、のどの痛み、鼻汁などの症状を抑える薬を飲んで、温かくして早く休むのが回復の早道です。
風邪のウイルスを殺す薬はありません。「抗生物質」は基本的にウイルスには無効です。「抗生物質」は名前を分解すると、「抗・生物・質」となり、「生物」の最小単位である「細胞」の構造物の合成を邪魔します。例えば細胞壁や細胞膜の合成を邪魔することによって、細菌や真菌の増殖を抑制したり死滅させたりするのです。ウイルスには細胞壁も細胞膜もないので抗生物質は効果を発揮しません。
親切心から「風邪なら、この抗生物質を飲みなよ」と言う人がいますが、こういったわけでウイルス性の風邪には抗生物質は効きません。温かくしてゆっくり眠るほうが大切です。