看護師国試対策|呼吸困難とは、動脈血酸素分圧〈PaO2〉と経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉、パルスオキシメータのしくみ

最終更新日:2024/05/14
呼吸困難があるからといって、呼吸状態が悪いとは言い切れません。では呼吸状態はどのようにして調べればいいのでしょうか。ここでは、動脈血酸素分圧〈PaO2〉と経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉、パルスオキシメータのしくみを解説します。
問題 呼吸困難とはどれか。
- 脈拍数の増加
- 息苦しさの自覚
- 動脈血酸素分圧〈PaO2〉の低下
- 経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉の低下
[第104回看護師国家試験より]
解答・解説
1.(×)→頻拍数の増加が呼吸困難であるとはいえません。
2.(〇)→息苦しさの自覚を「呼吸困難」といいます。
3.(×)→動脈血酸素分圧〈PaO2〉の低下が呼吸困難であるとはいえません。
4.(×)→経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉の低下は「低酸素血症」が疑われます。
覚えておきたい|呼吸困難の定義とは
情報には主観的な情報と客観的な情報がありますが、「呼吸困難」は「息苦しい」「息をするのがつらい」という自覚症状で、主観的な情報に該当します。
「呼吸困難」がある場合、それだけで慌ててしまいますが、必ずしも呼吸状態に問題があるとは限りません。主観的な情報だけで判断せず、努力呼吸の有無や呼吸音の状態、動脈血酸素分圧、経皮的動脈血酸素飽和度の結果などを総合的にみて判断する必要があります。
呼吸状態に異常はない呼吸困難とは
激しい運動をしている最中や、その直後は、誰もが呼吸困難を経験したことがあるでしょう。激しい運動のときには酸素の需要が増します。このとき、呼吸中枢である延髄は呼吸筋に命令を出して呼吸数や深さを増して頑張らせますが、その頑張りが酸素需要を満たせないとき、わたしたちは呼吸困難を感じます。急激な運動をやめた後も呼吸困難が続き、荒い呼吸がしばらく持続するのは、不足分の酸素を補おうとするためなのです。
また、「過換気症候群」でも呼吸困難は感じますが、呼吸状態は決して悪くありません。過換気症候群は呼吸器疾患ではなく、強い不安や過度の緊張がきっかけで、過呼吸(酸性ガスであるCO2を出しすぎてしまうこと)になってしまう病態です。このとき、血液がアルカリ性に傾き(アルカローシス)、動悸や四肢のしびれ、めまいなどを生じますが、ゆっくりとした呼吸を促すことで徐々に改善します。
呼吸状態の客観的指標〈PaO2・SpO2〉
呼吸状態を評価する客観的指標としてよく用いられるものに、動脈血酸素分圧〈PaO2〉と経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉とがあります。2つともよく使われるのですが、「何を測定しているのか」と質問すると、知識が曖昧になっている人が多いので、ここで確認しておきましょう。
図1 結合型酸素と溶解型酸素
肺胞から血中に拡散した酸素の運ばれ方には2種類あります。ひとつは、血漿に溶解して運ばれる「溶解型酸素」です。これを測定するのが、動脈血酸素分圧〈PaO2〉です。動脈血を採血して、そこに含まれる酸素の量を調べるのですが、基準値は80~100mmHg(Torr)です。ここで、酸素の量が圧力(mmHg)で示されていることに注意しましょう。
もうひとつの酸素の運ばれ方は、ヘモグロビンに結び付いて運ばれる「結合型酸素」です。これを簡易的に測定するのが経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉です。これは、動脈血中のヘモグロビンの何%に酸素が結び付いているのか、つまり酸化ヘモグロビンの割合を測定するものであり、基準値は96~99%です。こちらは単位が「%」であることに注意しましょう。
臨床では、酸素が血中に十分あるかどうかを客観的に評価するために上記の2つの指標をよく用います。特に経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉は、使い方が簡単なため頻繁に用いますが、何をどのように測定しているのかをしっかり知っておく必要がありますね。
ちなみに図2は、酸素分圧と酸素飽和度との関係を示した「酸素解離曲線」という図です。血漿に溶解する酸素分圧が高いと、ヘモグロビンと酸素の結合率(酸素飽和度)も高くなります。この表に従えば、動脈血酸素分圧が80mmHgのとき、動脈血酸素飽和度は96%となります。そして灰色で着色した部分が基準値の範囲を示しています。
図2 酸素解離曲線
一方で、オレンジ色の部分は、呼吸不全の領域を示しています。その境界は動脈血酸素分圧が60mmHg、動脈血酸素飽和度が90%です。動脈血酸素飽和度が90%というのは高いようにみえますが、末梢の極小の毛細血管は、赤血球すら通れない部分で、溶解型酸素頼みになります。溶解型酸素が60mmHg以下というのは相当に低値で、酸素療法が必要な値なのです。
\ こちらもチェック! /
豆知識|手のひらを太陽に透かして見れば~酸素飽和度の測定方法~
経皮的動脈血酸素飽和度は、パルスオキシメータという医療機器を用いますが、これは、酸化ヘモグロビン(酸素と結びついたヘモグロビン)がLEDの赤色光をよく通し、還元ヘモグロビン(酸素と結びついていないヘモグロビン)は通しにくい特徴を利用したものです。
一方で赤外光(赤色光より強く、目に見えない光)は、酸化ヘモグロビンも還元ヘモグロビンも両方ともよく通るため、「赤色光の通過量/赤色外光の通過量」を調べれば、酸素飽和度(酸化ヘモグロビンの割合)が測定できるというものです。
「手のひらを太陽に」という歌がありますが、「手のひらを太陽に透かして見れば、(酸素いっぱいの赤血球が太陽光のなかの赤色の光をよく通して)真っ赤に流れるぼくの血潮」ということなのでしょうか。
図3 パルスオキシメータのしくみ
今回は「呼吸困難」を手始めに、呼吸状態の客観的指標について、一部を紹介しました。「呼吸」の学習はとても奥が深い領域です。ひとつひとつ言葉の意味を確認しながら学習を進めてください。