看護師国試対策|腎臓の機能と構造、尿の濾過と再吸収

看護師国試対策|腎臓の機能と構造、尿の濾過と再吸収

最終更新日:2024/05/14

成人ではヒトの身体の60%は水分でできているといわれます。水分は口から摂取され、呼気や汗のほかには主に尿として腎臓から排泄されます。人間は毎日、数リットルの水分を摂取し、同じだけの水分を排泄することで体内に水を循環させ生命活動を行っています。尿の生成から排泄までの動態について、腎臓の構造や仕組みとともに解説します。

問題 健康な成人における1日の平均尿量はどれか。

  1. 100ml
  2. 500ml
  3. 1,500ml
  4. 2,500ml
  5. [第110回看護師国家試験より]

解答・解説

1.(×)→100ml/日以下の尿量は、「無尿」と言われています。

2.(×)→尿量500ml/日は、体内の老廃物を体外に除去するのに最低限の尿量です。これを下回る400ml/日以下の尿量を乏尿といいます。

3.(〇)→健康な成人の平均尿量は、1000~1500ml/日程度です。

4.(×)→3000ml/日以上の尿量を多尿といいます。

Point:健康な成人の尿量とともに排尿障害の名前を覚えよう

図1 成人の体液組成の割合図1 成人の体液組成の割合

成人の身体は60%の水と40%の固形分でできています。

60%の水は細胞外液と細胞内液から成り、血漿と間質液からなる細胞外液は体重の約20%を占め、全身を循環しています。

また、細胞外液は細胞の生命活動を維持するために、必要な濃度の電解質や有機物を含んでいますが、一方で細胞の出す老廃物によって常に汚染されています。

腎臓は汚れた細胞外液を浄化して不要なものを尿として排泄し、その量や成分を一定にするのに重要な役割を果たしています。

覚えておきたい、尿を作る最小単位「ネフロン」

尿を作るための最小単位をネフロンといい、片腎だけで100万個もあります。

ネフロンは、血漿を濾過するための腎小体(糸球体+ボーマン嚢)と、濾過された原尿の中から人体に必要なものを再吸収する尿細管から成ります。

図2 腎臓とネフロンの構造図2 腎臓とネフロンの構造

腎臓での尿の作り方「濾過」と「再吸収]

ここで尿の作り方を確認しましょう。「濾過」と「再吸収」についてもう少し詳しく説明していきます。

濾過

濾過は腎小体内の糸球体で行われます。糸球体は毛細血管でできたフィルターで、血圧の力で血液が濾過されます。

糸球体で濾過されるものは、分子量の小さい水分、電解質、グルコースやアミノ酸、ビタミン、尿素窒素、クレアチニンなどです。この濾過された体液を「原尿」といいます。反対に糸球体で濾過されないのは、分子量の大きい血球やタンパク質、タンパク質に結合している脂質や鉄分などです。

再吸収

尿細管は、部位によって名前がついていて、腎小体に近い方から近位尿細管、ヘンレループ、遠位尿細管といいます。いくつかの遠位尿細管は集まって集合管を形成しています。尿細管の各部位で、再吸収の仕方が異なります。

再吸収とは、「再び血管に戻す」という意味です。原尿には人体にとって有用なものがまだまだたくさん含まれているため、尿細管の前半部分(近位尿細管やヘンレループ)で、有用なもののほとんどが再吸収されます(図2)。

後半部分にあたる遠位尿細管や集合管は、そのときの細胞外液の状態に応じて再吸収が調整される部分です。細胞外液の状態は常にモニタリングされており、細胞外液中に不足しているものがあれば再吸収を強化し、過剰なものがあれば再吸収を抑制するなどの調整が行われます。

調整にはホルモンが関与しています。例えば副甲状腺ホルモンであるパラソルモンは、血中カルシウム濃度の低下に反応して分泌され、カルシウムイオンの再吸収を促進します。

下垂体後葉から分泌されるバソプレッシンは、脱水で体液が濃くなっている(浸透圧が上昇している)ときに分泌され、水の再吸収を促進します。

副腎皮質から分泌されるアルドステロンは、血圧低下がきっかけで分泌され、ナトリウムイオンを再吸収し、細胞外液量を増やします。

心房壁から分泌される心房性ナトリウム利尿ペプチドは、体液過剰がきっかけで分泌され、ナトリウムイオンの再吸収を抑制し、利尿を促します。

これらの調節により尿細管の各部位で再吸収が行われた結果、原尿のうち約1%が尿となって排出されることになります。

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豆知識|糸球体濾過量「GFR」とは?

腎機能の指標はいくつかありますが、ここでは糸球体の機能である糸球体濾過量「GFR」に着目します。

糸球体の働きは、濾過によって原尿を作ることです。GFRの基準値は、男性110ml/分以上、女性100ml/分以上です。つまり1分間に100~110mlもの原尿を作っているのです。この場合、実際の尿は(原尿の1%なので)1ml/分となります。1日は60分×24時間=1,440分のため、1日1,440mlもの尿が作られることになります。冒頭の国家試験問題ですが、健康成人の平均尿量が1,000~1,500ml/日程度である根拠がここにあります。

さて、ここで質問です。細胞外液の老廃物を体外に排泄させるのに必要最低限の尿量は、どれくらいだと思いますか?

答えは500ml/日です。500ml/分の尿量を確保するためのGFRは35~40ml/分くらい。GFRがもっと悪くなって30~15ml/分くらい(乏尿レベル;400ml/日以下)になると、細胞外液に老廃物が溜まり始め、透析への心構えが必要になります。そして8ml/分未満(無尿レベル;100ml/日以下)になると、実際に透析が必要になってしまいます。

GFRが低下する原因は、血圧が極端に低下して糸球体での濾過ができなくなったことや、糸球体が破壊されることなどです。糸球体の破壊に関係するのは、糸球体腎炎などの腎臓病や、高血圧や糖尿病、高尿酸血症などの血管障害を引き起こす生活習慣病です。

糸球体は一度壊れると再生することはありません。人生100年時代を生き抜くために、大切に使っていきたいですね。

執筆者情報

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廣町 佐智子

hiromachi-sachiko

<日本看護研究支援センター 所長> 看護系短大・大学での教員経験ののち、2002年より日本看護研究支援センターにて、臨床看護師の看護研究指導に従事。同時に、解剖学や看護師国家試験対策の非常勤講師として、全国の看護学生の指導も経験。国家試験のすべての領域についてのわかりやすい指導には定評がある。