看護学生のためのカンファレンスガイド│テーマ例から進め方まで

看護学生のためのカンファレンスガイド│テーマ例から進め方まで

最終更新日:2024/04/03

看護学生にとって実習中のカンファレンスは学びを深める大切な機会です。カンファレンスの流れは学校や実習機関ごとに異なりますが、今回は看護学生の多くが悩むカンファレンスの進め方やテーマの決め方について解説します。テーマ例も紹介するので参考にしてください。

医療におけるカンファレンスとは

医療現場で行われるカンファレンスとは、患者さんに関する具体的な問題や課題を参加者で共有し、それぞれの視点で解決策を考え、意見交換をする会議のことです。

看護実習では、看護学生が患者さんとの関わり方や実習での学びを共有する場として、実習グループのメンバーや講師、現場の看護師らとカンファレンスを実施します。

カンファレンスの目的

医療現場におけるカンファレンスには、以下のような目的があります。

  • 情報共有によって一貫したケアが提供できるようにする
  • 患者さんや看護の課題を解決する
  • 参加者同士が互いの知識や経験を吸収し、チーム全体で成長する

カンファレンスによる課題の解決やチーム全体の成長は、看護の質向上にもつながります。

ただし、看護実習で行われるカンファレンスの場合は、看護学生が実際の看護現場で起こり得る事象に対して理解を深め、問題解決能力を養うことも大きな目的となります。

また、他のメンバーと協力して問題を解決するという経験を積むことで、チームにおけるコミュニケーションや協働のスキルを鍛えるねらいを持つこともあります。

カンファレンスガイド‐進め方

ここからは、看護実習で実施されるカンファレンスの進め方を解説します。指導者によって進められることもありますが、カギとなる事前準備と進行を中心に一連のステップについては理解を深めておき、スムーズにカンファレンスに臨めるようにしましょう。

事前準備

カンファレンスは、実習開始前から事前準備をしっかりと行うことで、発表の進行がスムーズになります。事前準備の進め方について流れに沿って説明します。

1:担当決め

はじめに割り当てられた実習グループ内で担当を決めます。担当は以下のように分かれているのが一般的です。ここでそれぞれの役割についても確認しておきましょう。

  • 司会者:カンファレンス全体の進行を担当する重要なポジション
  • 事例提供者(カンファレンス係):カンファレンスで議論の核となる事例を提供する
  • 書記:カンファレンスでの議論や意見の記録を担当する
  • メンバー:上記3者以外にカンファレンスに参加する人を指す

ただし、細かな担当の分け方やその名称は指導者によっても異なります。とくに書記や事例提供者を決めない場合もあるので、指導者の方針に従いましょう。

2:テーマ決め

続いてはカンファレンスのテーマを決めます。最初から事例提供者がいる場合は、基本的にその事例提供者の受け持ち事例や目標から議論できそうな内容をいくつかピックアップして決定します。

事例提供者が決まっていない場合は、グループ内で事例を持ち寄ってテーマを決定します。そのタイミングで事例提供者も決まります。

テーマ決めのコツとテーマ例については最後の項で紹介するので参考にしてください。

3:指導者へ報告

役割とテーマが決まったらテーマの選択理由とともに指導者へ報告します。臨地実習の場合は指導看護師と指導教員へ、学内実習の場合は指導教員への報告が基本です。

この報告は、カンファレンスの進行についてのサポートや、必要なアドバイスを提供してもらうための重要なステップなので、事例の具体的な内容や現状の問題・課題を明確に伝えるようにしましょう。

4:資料準備

最後は発表するときに用いる資料の準備です。カンファレンスの場面によって用意すべき資料は異なります。

臨地実習の場合は事例として用いるための看護記録、学内実習の場合は看護記録のほか、関連文献やプレゼンテーション用資料など用意しておくとよいでしょう。

ただし、実習先や学校によっても資料の内容は異なるので、あらかじめ必要なものを確認するようにします。

発表についての資料はカンファレンスの参加者が議論のテーマを深く理解し、具体的な意見や提案をするためのベースとなります。相手に伝わりやすい資料作りを心がけましょう。

カンファレンスの進行

カンファレンスを円滑に進めるためには、進行役である司会者が要です。ここからは司会者の目線に立ちカンファレンスの進行手順を説明します。

1:カンファレンスの目的・テーマの発表

まずはそれぞれの役割紹介と、時間配分や流れを確認した後、今回の目的とテーマを発表します。

最初に参加者全員が議論の方向性を理解し、テーマから逸れないようにするため、カンファレンスの目的や達成したい具体的な目標を明確にしておきます。加えて、テーマを選択した理由について、主要なトピックとともに伝えるようにしましょう。

2:事例発表・意見交換

次は発表の時間となります。臨地実習であれば事例提供者による事例発表、学内実習であればメンバーごとに事例や学びの発表を行います。

各発表の後は、参加者全員で意見交換を行います。司会者は全員が意見を発表できるよう進行しながら、議論がテーマや目的に沿っているかを確認します。

3:指導者からのアドバイス

発表と意見交換の後には、指導看護師や指導教員からの質問やアドバイスの時間を設けます。

各指導者からの質問によって、学生同士が議論をさらに深掘りできるようにします。参加者が見落とした視点についてフィードバックを受けることでも、理解や考えが深まります。

4:まとめ

最後は議論のまとめです。参加者全員がカンファレンスで得た知識を再確認し、その結果を具体的な行動に移せるように、司会者は以下を行います。

  • 議論の主要なポイントや結論の再確認
  • 具体的な課題や新たな看護計画などのまとめ
  • 議論に不足がないか参加者全員への確認
  • 次回のカンファレンステーマや準備についての指示

まとめが終わったら参加してもらった指導者へのお礼のあいさつで締めくくります。

参加者全員が該当するカンファレンスの留意点

カンファレンスを有意義なものにするために、参加するすべての人はとくに以下の3点を意識しましょう。

  1. 時間管理
    • 発表や議論は予定した時間内で収まるように意識する
    • 遅れが生じた場合は、余分な議論を控えるようにする
  2. 相互尊重
    • 他の参加者の意見を尊重する
    • 自分と意見が異なる場合にも敬意を持って聞き、建設的な意見交換の場とする
  3. 積極性
    • 自分の意見の発表や他の人の意見への反応を積極的に行う

カンファレンスガイド‐担当ごとの動き方

カンファレンスでは、実習グループ内でそれぞれ担当が割り当てられます。カンファレンスを上手に進めるためには、全員が自分の担当の動き方を理解しておくことが大切です。

ここからは各担当の具体的な動き方について解説します。

各担当の具体的な動き

担当は日替わりで交代となり、基本的に実習期間内ですべての担当を経験することになります。各担当の具体的な動き方を必ず理解しておきましょう。

司会者

司会者は具体的には以下のように動きます。

    進行管理
  • 事前準備を含めカンファレンス全体の流れをコントロールする
  • 計画通りに進行するよう時間管理を行う
  • 全員の意見が述べられるような時間を確保する
    議論の展開・まとめ
  • 議論が散漫にならないよう、要所要所で内容をまとめ、方向性を示す
  • 必要に応じて新たな視点や問題提起を行い、議論を活性化させる

事例提供者(カンファレンス係)

事前準備から発表までの具体的な動きは以下の通りです。

    事例選定・事前準備
  • カンファレンスのテーマに沿った具体的な事例を選定する
  • 具体的な問題解決につなげるために、事前準備の段階で課題を明確にする
  • 取り上げる事例について発表用の資料を作成する
    事例発表
  • 事例の背景、関連する問題点、必要な解決策について資料を用いて発表する
    議論への参加
  • 自分が提供した事例をもとに、他の参加者とともに議論を行う

書記

書記がカンファレンス当日および後日にやるべきことは以下の通りです。

    記録
  • どの参加者が何を提案したか、どの意見が採用されたかなど、議論に上がった具体的な内容を記録する
    報告書の作成・共有
  • 記録した内容をもとに議論や決定事項を振り返るための報告書を作成する
  • 報告書をカンファレンスの参加者や関連者に配布する

メンバー

担当の決め方によっては、司会者以外のすべての人がメンバーに該当します。メンバーがカンファレンスでやるべきことは次の通りです。

    議論への参加
  • テーマに対する自分の見解や感想を積極的に発表する
  • 他の参加者の意見に対しても反応を示し、質問や提案を行う
    共有と学習
  • 自分の経験の共有と、他の参加者や指導者の経験や知識、意見を聞き、学ぶ

カンファレンスガイド‐テーマ決め

カンファレンスではテーマ決めも重要です。実習中の課題解決や学びの共有、自己の看護の振り返りにつながる内容であるかを意識して決めるとよいでしょう。

テーマを見つける方法

ここからは、カンファレンスのテーマを見つけるための具体的な方法について解説します。

カンファレンスの目的を明確にする

テーマを見つける方法として、まずはカンファレンスの目的を明確にしましょう。
例えば、進行中の実習の困りごとの解決を目的とするのか、参加者が学びを共有する場とするのかによって、挙げられるテーマは異なります。

実習グループ内で看護計画や実習記録を確認する

カンファレンスのテーマを見つけるには、以下のような視点を意識してグループ内でそれぞれの看護計画や実習記録を確認しあうことも有効です。

  • 看護計画の立案にあたり困っていることはないか
  • 看護計画が予定通りに進行していない事例はないか
  • 患者さんとのコミュニケーションでつまずいていることはないか
  • ヒヤリハット事象やインシデントはなかったか
  • 特殊な事例はなかったか
  • 現役看護師と患者との関わりで得た学びはなかったか

迷ったときはアドバイスをもらう

カンファレンスのテーマに迷ったときは、実習指導教員からアドバイスをもらうことも検討しましょう。臨床経験やさまざまな看護学生のカンファレンス事例から、グループにとって適切なテーマの選び方を提案してもらえるかもしれません。

実習領域別のカンファレンステーマ例

ここからは、実習領域別のカンファレンステーマ例を紹介します。どの領域であっても看護実習生だからこそ見える課題や学びに注目しましょう。それを具体的な提案につなげることができれば、有意義なカンファレンスになるはずです。

ただし、ここで紹介するテーマはあくまで一例です。参考程度に留め、自分たちらしいテーマを見つけてください。

成人看護学実習

成人看護学では、急性期・慢性期と2種類の実習があります。実習の内容が異なるので、それぞれの病期についてテーマ例を見ていきましょう。

急性期

急性期実習の大きな特徴は、術前術後の患者さんについての看護を学ぶことです。急性期実習の際に挙げられるテーマ例としては、以下のようなものが考えられます。

  • 術前オリエンテーションで見学した内容や得た学びについて
  • 患者さんの手術に対する不安を解消する関わり方について
  • 術後の早期離床を促す関わり方について
  • 術後の痛みのコントロールについて

慢性期

慢性期実習の特徴としては、長期に渡って療養を続ける患者さんについての看護を学ぶことです。慢性期実習の際に挙げられるテーマ例としては、以下のようなものがあります。

  • 褥瘡の予防のためにできる患者さんへの指導・体位変換・清潔ケアについて
  • 転倒予防のためにできる患者さんへの関わり方について
  • 拘縮や筋力低下予防のための床上リハビリテーションについて
  • 長期入院でのストレスを患者さんから打ち明けてもらう方法について

高齢者看護学実習

高齢者看護学実習は、老人保健施設や特別養護老人ホームでの実習がメインです。利用者さんのケアは主に介護士が行い、看護師は服薬管理やバイタルチェックが主な仕事となりますが、看護実習では幅広い関わりが可能なので、以下のようなテーマも考えられます。

  • 転倒や誤嚥予防のためにできる利用者さんへの関わり方について
  • 認知力低下予防のために利用者さんと一緒に行える脳トレ案について
  • 利用者さん同士のコミュニケーションのきっかけ作りについて
  • レクリエーションの題材や進め方について

小児看護学実習

小児看護学実習では幼稚園での実習も行われますが、ここでは小児科病棟での実習に焦点を当ててテーマ例を挙げます。

  • 患児のストレスやジレンマを聞き出すための関わり方について
  • プレパレーションの方法について
  • 術後の過ごし方を患児に理解してもらえるよう伝える方法について
  • 患児の家族との関わり方について

母性看護学実習

母性看護学実習では、褥婦さんの受け持ちがメインです。産後間もなく、これから始まる育児生活に不安を抱える母親や父親への関わり方を考えるために、以下のようなテーマ例を挙げてみました。

  • 母乳の出や乳腺炎の悩みの解消について
  • 沐浴で注意すべきことと母親・父親への指導方法について
  • 産後の父親の父性を育むための関わりや指導について
  • 外来での妊婦・褥婦さんとのコミュニケーションによる情報収集について

精神看護学実習

精神看護学実習で受け持つのは、多くが統合失調症の患者さんです。他の領域実習よりも、コミュニケーションについてより考えさせられることが多いので、カンファレンステーマも患者さんとの関わり方に関する課題から考えるとよいでしょう。

  • 看護学生でも実施可能な病室での作業療法の提案について
  • 受け持ち患者さんに他の患者さんと関わってもらう方法について
  • 精神領域におけるコミュニケーションの難しさについて
  • 就労継続支援施設の見学で感じたことについて

在宅看護学実習

在宅看護学実習では、訪問看護ステーションの利用者さんの居宅を訪問して看護ケアを行います。1人の利用者さんと関われる時間は30分〜1時間程度と決まっています。短い時間のなかで何を学ぶべきかを考えてテーマを決めるとよいでしょう。

  • 利用者さんが訪問看護サービスを利用することになった経緯や生活背景の共有
  • 利用者さんの生活空間のなかでの実習生としてのコミュニケーションの取り方
  • 訪問看護の現場で行われているケアの工夫について
  • 家族が感じている心配ごとや介護に対する負担感・ストレスへのケアについて

なお、ナース専科就職ナビでは実習・国試対策のオンライン講座を実施しています。実習目標や実習レポートの書き方など詳しく解説する講座もあるので、ぜひ参加してみてください。
看護学生のためのオンライン講座一覧

※ナース専科就職ナビより

カンファレンス成功の秘訣は事前準備と積極的な姿勢

カンファレンスが苦手な看護学生は少なくありません。しかし、事前準備と積極的な姿勢を持つことで、カンファレンスは有意義な学びの場となるはずです。
それぞれが担当する役割を理解してしっかり準備し、自分の意見を積極的に伝えられるようにしましょう。テーマ決めや進め方で迷ったときには、このカンファレンスガイドを参考にしてみてください。

参考

看護学実習ガイドライン

慈恵第三看護専門学校 基礎看護学実習

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執筆者情報

プロフィール画像

村上 舞

murakami-mai

帝京大学医療技術学部看護学科卒業後、医療法人徳洲会 湘南藤沢徳洲会 整形外科病棟に4年半勤務。その後循環期病棟、呼吸器内科病棟、回復期病棟、特養、デイサービス、クリニック、健診センター等、様々な職場を経験。現在はライターとして活動中。