未来型病棟で展開する
業務効率化と看護実践
A 所属する10A病棟は、食道・胃・大腸の内視鏡検査や治療などの短期間入院の患者さんが主です。一方でがん終末期の患者さんの在宅支援調整や緩和ケアへの移行支援なども行っています。ごく一般的な消化器内科病棟とは違い、他院では見られない特色がありますよね。
主任 そうですね。くわえてこの病棟は、院内でDX推進病棟と呼ばれています。DXはデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略で、最先端の情報通信技術を導入した病棟なのです。
A 例えばバイタルサインは、通常測定値を電子カルテに手入力しますが、ここでは通信機能つきバイタルサイン測定機器を導入しているので、機器をモバイル端末にかざすだけで測定値を自動入力できます。また、内視鏡検査や治療を行う患者さんの準備や送り出しの確認は、通常検査室の看護師と何度も電話連絡をしなければなりませんでしたが、現在では、患者さんの順番や進行状況がデジタル表示される画面を見るだけでわかるので、非常に便利です。
主任 業務の効率化はデータでも示されています。デジタル表示化以降、内線電話の回数が激減しました。つまり、連絡業務に割いていた時間を削減したということです。さまざまな看護業務が効率化されましたが、どんなときにそれを実感しますか?
A 確実に、患者さんに寄り添う時間が増えたと思います。以前、看護師に対してきつい言葉を投げかける患者さんがいました。業務を終えて少し時間ができたので、ベッドサイドで日常会話から入り、さりげなく傾聴に努めてみました。すると、治療への不安や入院中のストレスが強いことがわかりました。傾聴後に「話を聞いてくれてありがとう、とても楽になりました」と言われたことが忘れられません。
時代に応じて進化する病院で
看護師も常に成長を続ける
主任 良い経験をしましたね。私は開設準備からかかわっているのですが、病棟のデジタル化の大きな目的は、業務に追われる状況を打破し、患者さんに寄り添う時間を確保することにあります。なぜなら、業務は最先端技術を用いた機器にタスクシフトできますが、患者さんに届ける安心・安全な看護は、看護師の手と温かい真心がつくり出すからです。
A 先ほど話した体験のように、自分の思い描いた看護を患者さんに提供できると、仕事のやりがいを感じます。
主任 やりがいを感じると、次も頑張ろうという原動力になりますね。
A はい。こんなふうに未来型の病棟で働くとは思ってもいませんでしたが、この素晴らしい環境が、看護師としてのモチベーションアップにもつながっています。
主任 当院は時代の変化を先取りし、常に進化している未来志向の病院です。DX 推進病棟はその一例といえるでしょう。そして、看護師は常に成長していくことが責務として求められる専門職です。病院の進化に応じて、看護師も成長していきたいですね。