看護師国家試験の対策│合格率と日程の概要からおすすめの勉強方法まで

看護師国家試験の対策│合格率と日程の概要からおすすめの勉強方法まで

最終更新日:2024/05/14

看護師になるために避けて通れないのが看護師国家試験です。今回は看護学生の1年生時から学年別の対策方法をレクチャー。また、試験から合格発表の日程などの概要から合格率やボーダーなども紹介します。

看護師国家試験とは?受験目的と今年の合格率

看護師国家試験(国試)とは、看護師になるためには必ず受けなければならない試験です。試験の難易度は高い印象があり、漠然とした不安を抱く人もいるでしょう。ここでは看護師国家試験の目的と今年のボーダー点、合格率について紹介します。なお、日程や出題範囲などの詳細は毎年8月ごろに厚生労働省から発表されます。受験する人は必ずそちらも確認しましょう。

【参考】厚生労働省資格・試験情報

看護師国家試験の目的

看護師の国試は、看護師として臨床現場に出るために必要最低限の知識や技術を身につけているかを確認するため試験です。看護師国家資格を取得することを目的に受験します。

【最新】合格のボーダーは?第113回看護師国家試験の合格率と合格点

2024年2月11日に実施された第113回看護師国家試験の合格率は87.8%。過去5年間で一番低い結果となりました。

全体の合格率 新卒者の合格率
2020年(109回) 89.2% 94.7%
2021年(110回) 90.4% 95.4%
2022年(111回) 91.3% 96.5%
2023年(112回) 90.8% 95.5%
2024年(113回) 87.8% 93.2%

新卒者だけの合格率に関しては93.2%で、全体の合格率に比べると高くなっています。既卒者は仕事などと並行して勉強をしなくてはいけないため、受験勉強の環境を整えづらく合格率が下がるといわれています。

合格のボーダーラインは、必修問題40点/49点、一般問題・状況設定問題で158点/250点でした。ただし、今回は採点除外などの対象となった受験者は、()内が合格点となっています。

  • 48点(39点以上)
  • 47点(38点以上)
  • 46点(37点以上)
  • 45点又は44点(36点以上)

なお、今回の必修問題では採点除外などの対象になった問題が6問です。そのうちの5問は、問題としては適切だが、必修問題として妥当ではないという理由でした。

【参考】厚生労働省資格 第113回看護師国家試験の合格発表

試験・合格発表の日程から会場などの概要

受験資格はある?

試験を受けるためには受験資格が必要ですが、独学では取得できません。主な受験資格の取得方法は次の4つです。

  • 高校卒業後に、看護系大学で必要な学科を修めて卒業する
  • 高校卒業後に、短期大学や専門学校や看護師養成所で3年以上必要な学科を履修する
  • 准看護師の資格取得後に大学や専門学校などで2年以上の教育を受ける(中学校卒業の場合は3年間の実務経験が必要)
  • 高等学校の看護科で5年間学び、卒業する

試験日程と合格発表日はいつ?

看護師国家試験は毎年2月中旬に行われます(参考までに、2024年は2月11日に実施されました)。看護師資格のみ取得予定の場合、試験は1日で終了します。保健師や助産師も受験する場合は、それぞれ1日ずつ追加されます。看護師、助産師、保健師の試験が同日に実施されることはありません。それぞれを受験したい人は、日程をチェックしておきましょう。

国試は体調不良などで受験できなくても追試験はありません。翌年に受験することになるので、体調管理はしっかりと行って試験当日に備えてください。

合格発表は3月下旬です(参考までに、2024年は3月22日に発表されました)。発表は厚労省や国家試験運営臨時事務所に張り出され、厚労省のホームページでも確認できます。

試験が行われる会場は?

試験会場は次の12都道府県に設置されます。

  • 北海道
  • 青森県
  • 宮城県
  • 東京都
  • 新潟県
  • 愛知県
  • 石川県
  • 大阪府
  • 広島県
  • 香川県
  • 福岡県
  • 沖縄県

大学や民間施設の会議室などが利用され、同じ都道府県内に複数の会場が設けられることもあります。自身がどの会場で受験するかは、2月に入ってから手元に届く受験票で確認できます。学校で一斉に出願した場合は、同じ会場となることが多いです。

試験時間はどのくらい?

試験は午前と午後の2部構成で、それぞれ2時間40分。合計5時間20分と長丁場になります。体調を万全にして臨みましょう。

  • 午前の部:9:50〜12:30
  • 午後の部:14:30〜17:00

1年から国試までの全体スケジュール

看護師国家試験までのスケジュール

3年制・4年制のどちらも2年生から実習がスタートし、最終学年まで続きます。また最終学年は、看護研究・卒業論文や就職活動も同時に行わなければなりません。早めに対策を始めた方が、余裕を持って試験に臨めるでしょう。

解答形式から出題範囲などの試験概要

実施される試験内容を知っておくことで対策が立てやすくなります。形式や出題範囲などをあらかじめ確認しておきましょう。

解答形式

マークシートを用いて解答します。選択肢から答えを選んだり、計算で導き出した数字を答えたりします。選択問題は4つの選択肢から1つを選ぶものと、5つから1つを選ぶものと、5つから2つを選ぶものがあります。

出題形式・問題数・配点・合格基準(ボ―ダー)

出題形式は「必修問題」「一般問題」「状況設定問題」の3つに分けられます。

試験問題は全部で240問、合計300点です。単純に計算すると、1問あたりにかけられる時間は約1分です。
看護師国家試験の合格基準

科目・出題範囲

試験の科目や出題範囲は厚労省の「保健師助産師看護師国家試験出題基準」によって定められており、必修問題と一般・状況設定問題で扱う11科目で構成されています。

参考:「保健師助産師看護師国家試験出題基準 令和5年版」

必修問題

国試の出題範囲全般の基本的知識を問います。出題範囲は一般・状況設定問題と被る部分が多くなっています。

第112回(令和5年実施)試験からは、感染防止対策に関する問題がより充実されることになりました。

<出題内容>

  • 健康や看護に関する社会的・倫理的側面
  • 看護の対象である人間について、看護の活動と機能
  • 看護に必要な人体の構造と機能や、健康障害と回復
  • 看護技術

一般問題

ここからは一般問題で扱われる科目を説明します。

人体の構造と機能

出題範囲が広く、このほかの科目を学ぶうえでの基本の知識です。覚えることが多いため早めの対策を心がけましょう。授業で習ったところを過去問で確認すれば、授業の復習と国家試験対策を同時に進められます。

<出題内容>

  • 正常な人体の構造と機能
  • フィジカルアセスメントや看護に必要な人体の構造と機能
  • 疾病の成り立ちと関連した人体の構造と機能
疾病の成り立ちと回復の促進

疾病に関して全般的な知識や理解が問われます。個別の疾患も取り扱うため内容が膨大です。「人体の構造と機能」や領域別科目と結びつけて学習しましょう。

第112回(令和5年実施)試験からは、全身の感染性疾患や皮膚機能に関する問題が新設されます。

<出題内容>

  • 健康から疾病を経て回復に至る過程
  • 疾病の要因と生体反応
  • 疾病の診断・治療
  • 各疾患の病態と診断・治療
健康支援と社会保障制度

医療や健康について日本の現状や、看護を実践するための根拠となる法律などが問われます。

<出題内容>

  • 社会生活を視点とした個人・家族・集団の機能や変化
  • 社会保障の理念、社会保険制度、社会福祉に関する法や施策
  • 公衆衛生の基本、保健活動の基盤となる法や施策、生活者の健康増進
  • 人々の健康を支える職種に関する法律・施策・サービス提供体制
基礎看護学

看護の本質・機能・役割や、看護を実践するために必要な技術・判断プロセスについて出題されます。演習や実習で新しい技術を習った際には、その根拠や判断プロセスについても確認すると試験対策になります。知識問題も多いので、早めに対策を始めましょう。

<出題内容>

  • 看護の概念と展開
  • 基礎的な看護技術と適用のための判断プロセス
  • 保健・医療・福祉の中なかで看護の果たす役割

一般問題・状況設定問題

ここからは一般問題と状況設定問題で出題される科目を見ていきます。

成人看護学

成人期の特徴や環境などが問われます。各病期・障害・がん・各種疾患の患者や家族の特徴と、必要な検査・処置・治療・ケアについても出題されます。成人看護学をはじめ領域別看護学は「疾患の成り立ちと回復の促進」や「基礎看護学」と重なるところもあるので合わせて学習したり、実習中に実習領域に合わせて過去問にチャレンジしたりするのも良いでしょう。

<出題内容>

  • 成人各期の健康保持・増進や疾病の予防
  • 急性期・慢性疾患がある・終末期・緩和ケアが必要・がんなどの患者と、その家族の特徴。看護を展開するための基本的な理解
  • リハビリテーションの特徴と看護を展開するための基本的な理解
  • 各機能障害のある患者の特徴と、病期や障害に応じた看護
老年看護学

加齢に伴う変化や高齢者特有の疾患などが出題されます。生活の場としての医療・介護施設についても問われます。

<出題内容>

  • 加齢に伴う高齢者の生活と健康状態の変化
  • さまざまな健康状態にある高齢者と家族の生活と健康を支える看護
  • 多様な生活の場で高齢者の健康を支える看護
小児看護学

子ども特有の疾患だけでなく、虐待・災害に見舞われた子どもや医療的ケア児の看護も扱います。成長・発達や権利やエンドオブライフも出題されます。

<出題内容>

  • 子どもの成長・発達と健康増進のための子どもと家族への看護
  • 病気・診療・入院が子どもと家族へ与える影響と看護
  • 特別な状況にある子どもと家族への看護
  • 健康課題をもつ子どもと家族への看護
母性看護学

妊娠・分娩・産褥期の女性だけでなく、各ライフステージの女性や早期新生児期を対象にした看護が問われます。働く妊産婦への支援など、母子を取り巻く環境も試験範囲です。

<出題内容>

  • 母性看護の基盤となる概念、母性看護の対象を取り巻く環境
  • 女性のライフサイクル各期に応じた看護
  • 妊娠・分娩・産褥期および早期新生児期における看護
精神看護学

第112回(令和5年実施分)から、身体合併症のある患者への看護や、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築と社会資源の活用など、近年の精神看護における動向を踏まえた内容が充実する予定です。

<出題内容>

  • 精神保健の基本と保持・増進に向けた看護
  • 主な精神疾患・障害の特徴と看護
  • 精神看護の対象の理解と支援のための概念
  • 精神疾患・障害がある人の生物・心理・社会的側面に注目した、多角的なアセスメントに基づく看護
  • 精神疾患・障害がある人の人権と安全を守り、回復を支援する看護
在宅看護論/地域・在宅看護論

昨年、令和4年度のカリキュラム改定によって「在宅看護論」から「地域・在宅看護論」に変更となりましたが、しばらくは旧カリキュラム履修者に考慮して、在宅看護論の範囲から出題されます。在宅療養者と家族の特徴やよく見られる疾患とケアだけでなく、災害時の対応や訪問看護など介護保険サービスからも出題されます。第112回(令和5年実施分)からは地域の多様な場での看護の役割や多職種連携について、内容が追加される予定です。

<出題内容>

  • 地域・在宅看護における対象と基盤となる概念、安全と健康危機管理
  • 在宅療養者の病期や症状や暮らし方に応じて展開する在宅看護の実践
  • 地域包括ケアシステムにおける在宅看護の位置づけと看護の役割
看護の統合と実践

専門分野で学んだことを生かし、臨床現場へのスムーズな適応を目的に作られた科目です。国試では「切れ目のない支援を提供するための継続した看護」「複合的な状況にある対象や看護を判断し危険を回避する取り組み」「安全確保のための総合的な判断・対応」などに関する5つのテーマが提示されます。専門分野の各科目で学んだ内容を統合した臨床実践場面を問われます。

<出題内容>

  • 看護におけるマネジメントの基本
  • 災害看護の基本的な知識
  • 諸外国における保健・医療・福祉の動向と課題
  • 複合的な事象において看護の知識を統合し活用できる判断能力

科目・出題範囲のまとめ

看護師国家試験の出題範囲

  • 国試は必修問題と11科目で構成されています
  • 必修科目は基本的知識を問う内容で、合格するには8割以上の正答率が必要です
  • 「人体の構造と機能」「疾病の成り立ちと回復の促進」「基礎看護学」は出題範囲が幅広いため早めに対策を始めましょう
  • 領域別科目は「疾患の成り立ちと回復の促進」や「基礎看護学」と合わせて学習したり、実習期間中に合わせて過去問にチャレンジしたりして効率的に学習を進めましょう

国試の勉強方法

国試の勉強方法にはさまざまなものがあります。自身にあった方法を探して、効率よく勉強を進めましょう。

参考書

国試に出やすいポイントをまとめたものや、科目・領域別で整理され、実習の勉強にも使えるものなどがあります。一冊の参考書を使い倒して自分だけのテキストにしたり、小さいサイズを携帯して通学中に勉強したり、自身にあった参考書を探すと良いでしょう。

過去問

書店で購入したり、インターネットで公開されているものを活用したりできます。過去に出題された問題と似た問題が出ることもあり、出題形式に慣れるためにも繰り返し取り組みましょう。

問題集

過去問だけでなく、必修問題対策に特化したものや予想問題集などが販売されています。最終学年で活用して、知識の最終確認をするのもおすすめです。

アプリ

過去問が解けるものや解説を読めるものなど、多様なアプリが配信されています。使っている参考書と同じ出版社のものを使うと、効率的に学習を進められるでしょう。

SNS

看護学生向けメディアの編集部などがTwitterやInstagramで、国試の過去問や解説を投稿しています。毎日チェックすることで、コツコツ勉強ができます。

模擬試験

国家試験と同様の形式の試験を受けられます。知識の確認だけでなく、試験に慣れるためにも活用できます。学校単位で申し込むこともあるので、担当教員や国試対策委員などに確認しましょう。

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国試対策動画

学年別でどんな国試対策をするべきか

国試対策は早めに始めるに越したことはありません。3・4年制共通で使える学年別のおすすめ対策法をご紹介します。

入学初年度

しっかり授業を受ける

国試までにはまだ時間がありますが、出題範囲の広い「人体と構造の機能」などの学習がスタートします。しっかりと授業を受けて知識を身につけておくと、国試が近づいてからも余裕を持って勉強を進められるでしょう。

授業で取り扱った分野の過去問をチェック

授業で扱った内容の過去問をチェックすればその範囲で大切なポイントを知ることもでき、国試対策だけでなく、授業の復習や学校の試験勉強対策にもなります。

入学2年目

国試対策の参考書を読み始める

ほとんどの学校で、領域別の学習が始まっているはずです。参考書を読んで、ポイントを整理してみましょう。

必修問題の問題集を解き始める

必修問題では国試の出題範囲全般の基本を問われます。早めに身につけておくことで、その後の学習や実習にも生かせるはずです。

入学3・4年目

領域別実習中は領域に合わせて勉強する

実習期間中は時間が確保できず、国試対策ができない人も多いでしょう。しかし、実習で取り組んでいる領域を中心に参考書や過去問のチェックを行えば、実習の振り返りにも役立つのでおすすめです。

隙間時間にアプリやSNSを活用

参考書や過去問に費やす時間が確保できなければ、通学時間などを有効活用する方法もあります。アプリやSNSで効率よく時間を使いましょう。

実習が終わったら

実習が終わったら、本格的に国試対策に取り組みます。過去問や問題集を繰り返し解いて、知識の確認をしながら出題形式に慣れていきましょう。

最終学年

最終学年では模擬試験を活用しながら自分の苦手分野を把握し、効率的に学習を進めていくのがおすすめです。国試の本番前に長時間の試験時間を経験しておくことも、心の余裕につながるはずです。

「国試に落ちた」とならないために

看護師国家試験は看護師になるためには避けては通れない、看護学生としての一大イベントです。不安になる人もいるかもしれませんが、早めの準備を心がけてコツコツ勉強をしていれば合格できない試験ではありません。1年時からしっかりとスケジューリングをして余裕を持って試験に臨んでください。

【参考】

厚生労働省:看護師国家試験の施行
厚生労働省:保健師助産師看護師国家試験出題基準 令和5年版
厚生労働省:第104回保健師国家試験、第101回助産師国家試験及び第107回看護師国家試験の合格発表について
厚生労働省:第105回保健師国家試験、第102回助産師国家試験及び第108回看護師国家試験の合格発表について
厚生労働省:第106回保健師国家試験、第103回助産師国家試験及び第109回看護師国家試験の合格発表
厚生労働省:第107回保健師国家試験、第104回助産師国家試験及び第110回看護師国家試験の合格発表
厚生労働省:第108回保健師国家試験、第105回助産師国家試験及び第111回看護師国家試験の合格発表

執筆者情報

プロフィール画像

矢込 香織

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看護師。慶應義塾大学看護医療学部卒業。看護師として大学病院の小児科病棟やNICUで勤務。その後、メディカル系情報配信会社にて執筆・編集に携わる。現在は産婦人科クリニックで看護師として勤務をするかたわら、プレコンセプションケアの普及啓発やライターとしても活動している。 専門分野はプレコンセプションケア、小児看護、婦人科・産婦人科看護。 https://kaoriyagome.site/