【地域・在宅看護論 編】第114回看護師国家試験はどうなる!?出題予想と攻略法

【地域・在宅看護論 編】第114回看護師国家試験はどうなる!?出題予想と攻略法

最終更新日:2024/08/07

この記事では、2025年に実施される「第114回看護師国家試験」の対策方法を、科目別で解説します。今回は地域・在宅看護論編です。第113回で出題された地域・在宅看護論に関する問題を分析し、第114回の国試出題予想と攻略法を紹介します。

第113回の「地域・在宅看護論」はどうだった?

第113回の全体的な難易度は?

第113回看護師国家試験の難易度は、これまでと変わらず例年並みでした。「地域・在宅看護論」では、その人の地域での暮らしぶり、思い、時間軸の中で起こるさまざまな変化が問題に含まれることがあります。

長文の問題も増えており、読解力やアセスメント能力が問われる傾向が第113回でもみられました。この流れは今後も続くと考えられます。また、地域で暮らす人と家族の生活およびそれを取り巻く人々への理解を問う問題にも、引き続き注目していくとよいでしょう。

今回読解力が問われた問題として『Aさん(90歳、男性)は要介護3となり、長男(60歳)と同居することになった。長男は「親を介護することがこんなに大変だとは思わなかった。親が衰えてつらいと感じるのは自分だけだろうか」と訪問看護師に話した。訪問看護師の対応で最も適切なのはどれか。』(午後No.70)が挙げられます。これは、長男の思いは「自分だけだろうか」と悩んでいることを理解できれば、正解の選択肢を導ける問題でした。

また「Aさん(82歳、女性、要介護1)は1人で暮らしている。認知症dementiaと診断され、週1回の訪問看護を利用することになった。訪問看護師は、Aさんが調理できなくなったので、配食サービスを導入したと介護支援専門員から情報を得た。初回訪問時に、Aさんは季節外れの服を着ており、今日の日付を答えられな かった。トイレで排泄できている。訪問看護師が収集した情報のうち、手段的日常生活動作(IADL)はどれか」(午前No.69)のような問題も出題されました。

この問題の意図は、対象者の日常生活も含めた幅広い視点での情報収集だけでなく、その情報に対する知識が身につけられているかの確認だといえます。

そのほか、訪問介護員への助言を問うような他職種との連携に関する問題(午前No.116)が出題されたこと、看取り後の訪問看護師によるグリーフケアについての問題(午前No.117)が出題されたことも印象的であり、注目すべきポイントでしょう。

第112回と比較すると?

第112回と比べると、第113回では介護予防を支援する視点に関する問題が散見されました。これは、在宅看護論から地域・在宅看護論へと科目が変化していることも影響しているかもしれません。

例えば、午前No.68の選択肢には「要支援1、2の利用者は全体の利用者の4割を占める。」が含まれました。また、午前No69の事例には「要介護1」、午後No.66の事例には「要介護1」、午後No.67の事例には「要支援1」と、要介護度が低く設定されている問題も複数みられました。これらから、今後は比較的要介護度が軽い人に対する看護を考える力も求められることが予想されます。

一方、第112回と類似する問題として、災害に関する看護の問題が挙げられます。第112回の午後No.62で大規模災害のために避難所へ避難した人への看護師の関わりについて、第113回の午後No.116では、人工呼吸器を付けている人の災害時に備えた看護について出題されました。

第113回から分析する「地域・在宅看護論」の傾向

近年、出題頻度が高い問題の特徴は?

人口の少子高齢化ならびに、多死・人口減少社会を踏まえた問題は、近年出題頻度が高く今後も続く傾向が予想されます。また、介護保険法や要介護高齢者に関する問題は近年よく出題されており、今後も続くと考えられます。なかでも現実社会のニーズに即し、一人暮らしの高齢者を対象とした支援や、高齢者のみの世帯における家族を対象とした支援についての出題が予想されます。

療養対象の疾患としては、神経難病やがんなど、高齢化によって罹患数の増加が避けられない疾患が出題されやすく、今後も続くでしょう。そして、これらの疾患をもつ患者さんの療養の場や医療提供体制、療養の方法、療養者を介護する家族への支援に関しての出題も予想されます。

第113回でとくに目立っていた問題

災害時に関する問題は近年頻出していますが、これまでは人工呼吸器や在宅酸素療法を使用する療養者の災害時の備えや対応に関する問題が出題されていました。しかし第113回では、避難所へ行く人を対象とした看護や、避難所生活する人への声かけに関する問題が出題されたことが印象的でした。

近年の大規模災害の頻発から、避難所での生活を余儀なくされる人々に対する支援は今後より求められます。そのため、第113回で出題されたような問題が今後も出題されることが予想できるでしょう。

ちなみに第113回では出題されていませんが、近年の国の動向を踏まえて、感染症流行下における長期在宅療養者への在宅看護に関連した問題が今後出題されるかもしれません

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【第114回出題予想】「地域・在宅看護論」問題3問

予想問題1

    介護保険法に位置付けられる地域支援事業のうち、包括的支援事業に関する説明として適切なものを1つ選べ。

  1. 一般介護予防事業を行う
  2. 主に要支援1~2に該当する者が対象である
  3. 認知症初期集中支援や認知症地域支援・ケア向上事業を行う
  4. 介護予防支援事業(ケアマネジメント)を行う
解答・解説をチェック

 
 3

1.(×)総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)の説明である
2.(×)総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)の説明である
3.(〇)包括的支援事業では認知症総合支援事業を行う
4.(×)総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)の説明である

まずは地域支援事業に関する予想問題を紹介します。複数の事業を選択肢として挙げ、総合事業や包括的支援事業の内容はどれかを問う問題です。この問題の背景には、人口の高齢化、人口減少社会、世帯の縮小化などに伴う家族機能の変容により、受け皿としての地域の機能強化の必要性が高まっていることが考えられます。

障害や老化により、自身及び世帯での生活が難しくなる人々が増えることが予想されます。地域のリソースを総動員して地域全体で支え合う環境づくりを進めることが重要視されるため、地域医療を支える一員として十分に理解しておく必要があります。

予想問題2

    慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉で在宅酸素療法〈HOT〉を行いながら集合住宅で在宅療養している独居のAさん(68歳 男性)は、地震が起きたときに必要になる対応について不安に思っている。訪問看護師の対応として正しいのはどれか。

  1. 避難時は酸素供給業者から酸素の提供があるため、緊急用酸素ボンベの備えは不要である
  2. 避難所の場所は酸素供給業者が把握しているので、あらかじめ知らせる必要はない
  3. 避難所生活で感染症に罹患すると病状の悪化に繋がるため、避難時の手荷物にマスクや手指消毒剤も含めて準備しておく
  4. 避難時に逃げ遅れることのないよう災害時要援護者として自治体名簿に登録されているため、近所の人に避難時の支援をお願いする必要はない
解答・解説をチェック

 
 3

1.(×)緊急用酸素ボンベは日頃から備え、外出用に使用する酸素ボンベは使い切ってから交換という状況が生じないようにする。
2.(×)避難所の場所は、あらかじめ酸素供給業者に知らせておく。
3.(〇)避難所生活は集団生活になるため、感染予防のためのマスクや手指消毒剤を必ず準備しておく。また必要な内服薬、可能であればパルスオキシメータも準備しておく。
4.(×)避難の際は酸素ボンベを持って移動することになるため、避難に時間がかかる可能性がある。近所の人にも在宅酸素療法〈HOT〉を行っていることを伝え、避難に協力してもらう。

次に紹介する予想問題は、被災時や感染症流行下の社会における長期在宅療養者への看護に関する問題です。第113回では介護予防を支援する視点で複数出題されていたため、今回はとくに予防対策に焦点をあてた内容を予想します。

予想問題3

次の文を読み、1~3の問いに答えよ。Aさん(75歳、女性)は、夫(83歳)と2人暮らしである。娘は電車で1時間の場所に、夫と小学生の子供とともに暮らしている。Aさんは乳がん術後で、現在がん薬物療法のため定期的に外来通院している。夫婦ともにADLは自立しており、生活に関する身の回りのことはAさんが行っている。薬物療法の副作用でAさんに易疲労があり、疲労感があるときは臥床していることも多いため、夫が買い物を行っている。夫は2年前に軽度認知障害と診断された。現在、Aさんは介護保険制度により週1回の訪問看護を利用している。

問題3₋①

Aさんに対する訪問看護師の支援として正しいのはどれか。

1.がん薬物療法による苦痛な身体症状への対応は病院に任せる
2.Aさんのがん薬物療法の治療スケジュールを把握する必要はない
3.Aさんが外来で医師や看護師とどのような話をしているか確認する
4.Aさんが食欲不振で食事がとれないときは、病院に電話して対応を相談する

解答・解説をチェック

 
 3

1.(×)訪問看護師はAさんの苦痛な身体症状について具体的な内容を本人や家族から確認するとともに、身体症状がAさんの生活にどのような影響を与えているかも含めてアセスメントする。その上で、Aさんや家族と解決策を考えるとともに、適宜、病院と情報共有を行う。
2.(×)がん薬物療法の種類やスケジュールにより出現する副作用や発症時期の予測がつくため、訪問看護師も治療スケジュールを把握し、予測的な支援を行う。
3.(〇)さんが自身の身体症状、自宅での生活、治療に対する思いを外来の医師や看護師に話せているか確認し、Aさんの望む生活が叶えられるよう支援する。
4.(×)まずはどのような食事なら食べられそうかAさんや家族に確認する。好きな食べ物や口当たりのよい食べ物は食べられることも多い。

問題3₋②

夫は最近、気分の落ち込み(抑うつ)が目立つようになってきた。Aさんに対する訪問看護師の声掛けで正しいのはどれか。

1.軽度認知障害のため気にしなくてよいです
2.買い物で外出している時間は長くなってきていませんか
3.娘さんに来てもらい夫の話し相手になってもらいましょう
4.Aさんの訪問看護のときに、夫も一緒に看ることができますよ

解答・解説をチェック

 
 2

1.(×)気分の落ち込み(抑うつ)は軽度認知障害ではあるが、Aさんの思いに傾聴する姿勢が大切である。
2.(〇)認知機能の低下が進んでいることが考えられ、実行機能障害(遂行機能障害)や視空間機能障害などが発症してくると、買い物に時間がかかるようになる可能性がある。
3.(×)まずは娘の生活状況について情報収集する必要がある。
4.(×)まずは夫に介護保険の申請をしてもらうことが必要である。

問題3₋③

訪問時、Aさんから「今後、夫の認知症が進んだら、私たち夫婦は施設で暮らすしかないのだろうか」という相談があった。そのときの訪問看護師の対応として正しいのはどれか。

1.Aさんの思いをケアマネジャーと共有する
2.認知症の人の家族会を紹介する
3.娘と同居することを提案する
4.Aさんの思いや自宅での生活状況を報告するため、病院の外来に電話する

解答・解説をチェック

 
 1

1.(〇)Aさんは介護保険で訪問看護を利用しているため、ケアマネジャーがいる。Aさんは今後の生活を気にしているため、ケアマネジャーと情報共有し、連携していくことは重要である。
2.(×)家族会の紹介も必要なら行うが、まずは家族会に限定せず、地域にどのような社会資源があるか伝える。
3.(×)Aさんは夫の認知症が進行したときのことを不安に思っているが、急を要する事態ではないため、まずは訪問するタイミングでAさんの思いを繰り返し傾聴し、Aさんの本当の思いを引き出していく。
4.(×)Aさんの病状への対応など急を要する場合は、訪問看護師が病院に電話することもあるが、このような場合は、訪問看護報告書などの文書で報告する。

最後は、高齢者のみの世帯を対象とした支援に関する予想問題です。一人暮らしの高齢者、高齢者のみの世帯、老老介護の世帯は今後も増加することから、そのような人々の生活や健康を支える看護に関する問題が、今後も出題されると予想します。また、今後他職種との連携もより一層求められることになり、問われる可能性があるため知識を深めておきましょう。

【第114回攻略法】「地域・在宅看護論」のチェックポイントはズバリここ!

第114回看護師国家試験の「地域・在宅看護論」の対策では、地域で暮らす人とその家族における生活の理解と、予防の視点をもった看護に注目して勉強するとよいでしょう。とくに、今後増加する一人暮らしの高齢者、高齢者のみの世帯、老老介護の世帯への看護や、被災時や感染症が拡大している社会における在宅療養者とその家族への看護に関する問題は今後出題が予想されます。

そのほか、地域で暮らす人々を支えるための地域支援事業などについてもよく問われるため、在宅・地域医療に関する社会保障も学習しておくとよいでしょう。また長文の問題も増えており、その問題の問いを理解するための読解力が問われることは今後も継続されると予想されます。問題を注意深く読むことも大切にしていきましょう。

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執筆者情報

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岩田 尚子/ 白谷 佳恵

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■岩田 尚子 東京慈恵会医科大学 医学部看護学科 准教授/担当領域:在宅看護学 ■白谷 佳恵 東京慈恵会医科大学 医学部看護学科 講師/担当領域:地域看護学