【小児看護学 編】第114回看護師国家試験はどうなる!?出題予想と攻略法
最終更新日:2024/08/07
この記事では、2025年に実施される「第114回看護師国家試験」の対策方法を、科目別で解説します。今回は「小児看護学」編です。第113回で出題された小児看護学に関する問題を分析し、第114回の国試出題予想と攻略法を紹介します。
目次
第113回の「小児看護学」はどうだった?
第113回の全体的な難易度は?
第113回の難易度は問題によって異なりました。例年と変わらない難易度の出題がみられた一方、なかには例年より難しくなった問題もありました。とくに、認知発達に関する理論や発達段階ついての問題は、例年と問題の傾向が異なり、一般問題と状況設定問題どちらとも難易度が上がったといえます。
また、第113回では虐待や子どもの疼痛緩和に関する問題のほか、「子どもに医療処置を行う際、看護師が行うディストラクションはどれか。」(午前No.56)のようなプレパレーションに関する問題が出題されていました。小児特有の看護実践の方法についても学習しておくとよいでしょう。
第112回と比較すると?
小児期の形態的成長、発達の原則に関する問題は、第112回と共通して基礎知識を問う問題が複数出題されていました。
一方、認知発達に関する問題については異なる特徴がみられました。以下2つが該当する問題です。
- 学童期中学年から高学年にみられる、親から離れて仲のよい仲間同士で集団行動をとる特徴はどれか。(午前No.7)
- ピアジェ,J.(Piaget,J.)の認知発達理論における段階と病気の説明に使用するツールの組合せで適切なのはどれか。(午後No.55)
例年では、Bowlby(ボウルビィ)が提唱したアタッチメント理論の問題(午前No.54)ような、発達理論の基本理解を問う問題の出題が一般的でした。
しかし第113回では、学童期の社会性の発達に関する問題(午前No.7)や、ピアジェ,J.(Piaget,J.)の認知発達理論の具体的操作期に関する問題(午後No.55)のように、獲得する能力に適した説明方法を考える応用問題が出題されました。
状況設定問題では、疾患の病態生理、基本治療や検査に関する知識が問われました。具体的には、先天性食道閉鎖症など小児慢性疾病や発達障害に関する問題であり、これは昨年同様の傾向でした。
第113回から分析する「小児看護学」の傾向
近年、出題頻度が高い問題の特徴は?
第113回を含めた近年では、小児医療・看護の課題とされているテーマから出題される傾向があります。具体的に、虐待防止対策、医療的ケア児の支援、慢性疾病をもつこどもの就園・就学・復学支援、きょうだい支援がよくトピックに上がる内容です。
とくに、毎年報告件数が増加し、こども家庭庁の発足後に推進が強化されている虐待防止について、定義や防止策を問う問題が2年連続で出題されています。
状況設定問題で出題されやすい問題は、小児期に診断を受けたときの治療や検査、発達段階に応じたセルフケアに関する看護とともに、きょうだいへの看護、在宅での医療的ケアに関する問題などです。また、治療を終えて経過観察へ移行後、就園や就学時の保育士や学校教員との連携内容に関する問題も高い頻度で出題されています。
第113回でとくに目立っていた問題
第113回では、災害時のこどもの心理と看護に関する問題が出題されました。近年日本では災害が増えている状況から、今後小児においても災害看護が重視されると予想されます。
このように、現在の小児医療の動向や重点課題とされる内容、国の政策の動向に沿った問題が今後も出題されると考えられるため、ニュースに目を向け、教科書に示されている事例を読むなどの対策をすることを推奨します。
\ こちらもチェック! /
【第114回出題予想】「小児看護学」に関する問題3問
予想問題1
- 4~5 歳までには脳の重量は成人の80%に達する
- 陰茎、睾丸、卵巣、乳房、子宮などの生殖器は、18歳ごろから急速に発育する
- 扁桃、リンパ節などのリンパ系組織は、0歳に急速に発育し、成人レベルを超える
- 一般型は、12歳〜13歳ごろに急速に発育し、直線型の上昇を示す
スキャモンが提唱した4つの発育曲線の説明の記述で正しいのはどれか。
解答・解説をチェック
1
1.(〇)スキャモンは、脳の重量や頭囲で計る神経系は出生後急激に発育して4~5 歳までに成人の80%に達し、10歳ごろにはほぼ停滞を示す発育曲線を提唱しました。
2.(×)生殖器は、14歳ごろから急速に発育し、女子は男子よりも2年程度発育が早く始まります。
3.(×)扁桃、リンパ節などのリンパ系組織は、生後から12歳ごろまで急速に発育し、成人レベルを超えます。
4.(×)一般型は、乳幼児期と12歳〜13歳ごろに急速に発育するS 字状のシグモイド曲線を示します。
小児期の身体発育の基礎知識を問う問題は毎年出題されていることから、今後も出題が予想されます。
予想問題2
- 乳児期には、積極的に人に関わる体験を通して積極性が育つ
- 幼児期初期には、できないことを親にやってもらう経験の繰り返しにより自律的に活動する力が育つ
- 幼児期後期(遊戯期)には、積極的に行動し、上手くいったなどの成功体験により自信が生じる
- 学童期には、親に依存して目的を達成しようとする一方で、失敗により嫉妬が生じるが、親が代行して行うことで羞恥心を克服する
エリクソンが提唱した発達課題の記述で正しいのはどれか。
解答・解説をチェック
3
1.(×)乳児期の課題は、「基本的信頼」対「基本的不信」であり、欲求を示せれば必ず応えてくれる体験や母親との一体感を通して人への信頼感が生まれます。
2.(×)幼児期初期の課題は、「自律性」対「恥・疑惑」であり、自らの衝動をコントロールし、自分で物事に取り組むことで自律的に活動する力が育ちます。
3.(〇)幼児期後期(遊戯期)の課題は、「積極性」対「罪悪感」であり、積極的に行動し、上手くいったなどの成功体験により自信が生まれます。
4.(×)学童期の課題は、「勤勉性」対「劣等感」であり、学習や友達と関わりながら目的を達成しようとする勤勉性が育つ一方で、失敗により劣等感が生じるが、勤勉性が勝ることで劣等感を克服すします。
小児慢性疾患の治療を受けた子どもの成長発達に向けた支援、成人移行期まで継続した支援体制が構築されている動向と、近年の成長発達や小児看護の専門的なスキルを問う出題傾向から、第114回の予想問題として取り上げました。
予想問題3
Aくん(6歳, 男児)は、出生2か月時にファロー四徴症と診断され、1歳時に開心術を受けた。経過は良好で身長、体重も順調に増加し、現在発達に問題はない。4歳から保育園に通い、日常生活の制限はない。
問題3-①
ファロ-四徴症の病態で適切なのはどれか。
1.心房中隔欠損
2.肺動脈狭窄
3.大静脈狭窄
4.左室肥大
解答・解説をチェック
2
1.(×)ファロ-四徴症では、左心室と右心室の間の中隔の欠損が生じています。
2.(〇)肺動脈弁下の肥厚により肺動脈が狭窄するため、肺血流の減少が生じる疾患です。
3.(×)肺動脈に近い部分の中隔が前方に偏位していることによる大動脈騎乗が生じます。
4.(×)心室中隔欠損、肺動脈狭窄に伴う右心室に容量負荷が生じ、右心室が肥大します。
先天性心疾患の病態生理を問う設問です。状況設定問題の1問目には、疾患の基本病態に関する問題が出題される傾向があります。疾患の病態の理解が看護の方法に関連します。この理解は重要なため、予想問題として紹介しました。
問題3-②
Aくんが外来受診について、「どうして、〇〇先生の病院へ行くの?ぼくは病気なの?」と聞いてきたと、母親から相談があった。看護師の対応で適切なのはどれか。
1.根治手術が終了し、成長発達に問題はないため、Aくんへの説明は行わない
2.母親がAくんに伝えたくないと強く希望しているため、母親の希望を優先する
3.Aくんが自分の病気を理解することの意味を母親へ説明し、説明内容を一緒に考える
4.Aくんへ「病気はしていないけれど、心配だから〇〇先生に診てもらおうね」と説明する
解答・解説をチェック
3
1.(×)子どもが自分の病気や治療経過を理解することは、セルフケアとヘルスリテラシーの獲得、成人移行に向けて重要であり、段階的な説明を行うことが求められます。
2.(×)子ども自身が病気を知る権利と、病気を知り自己管理する必要性から、Aくんへの説明について母親へ説明し理解を得ることが大切です。
3.(〇)子どもへの説明に悩む母親の思いを傾聴し、一緒に説明について考えることは看護師の重要な役割です。
4.(×)子どもへの説明では正しい理解を促すことが大切で、嘘をつかない原則があります。
認知発達に伴い、学童期には身体内部の理解、病気の理解が進みます。成長発達に添い、段階的に疾患理解を促す看護師の関わりの重要性が増している現在の動向から出題を予想しました。
問題3-③
経過観察のための外来受診時に、母親から「4月から小学校へ入学するので心配です。何を準備したらよいですか。」と相談があった。
母親に対する看護師の発言で適切なのはどれか。
1.学校の体育はすべて見学になると小学校の教員へ伝えましょう
2.就学前健診で事前に病名と手術後であることを伝え、学校生活上の配慮事項を相談しましょう
3.特別支援学校へ就学相談を行いましょう
4.保護者全員へ、Aくんへの配慮について説明を行いましょう
解答・解説をチェック
2
1.(×)主治医が可能な運動の範囲を記載した学校生活管理指導表を小学校の教員へ渡し、主治医の指示に基づき可能な運動には参加できます。
2.(〇)就学前健診で、病名と治療経過を伝え、小学校の教員が学校生活上で必要な配慮事項を保護者に確認し、入学後に向けて準備を整えることが望ましいといえます。
3.(×)発達に問題はなく、特別支援教育は適応ではありません。
4.(×)保護者への説明はプライバシーに関わるため、説明の内容や伝える対象について学童期のAくんと両親の考えを尊重する必要があります。
慢性疾患をもつ子どもの復学支援や、長期フォローアップにおける学校と医療との連携が重視されている状況から、出題を予想しました。
【第114回攻略法】「小児看護学」のチェックポイントはズバリここ!
「小児看護学」の対策では、よく出題されている小児期の身長・体重など形態的成長の進み方と、発達の原則に関する基礎知識を身につけることは必須です。
また、第113回で難易度が上がった認知発達については、発達理論における各段階で獲得する能力とその思考の特徴が意味するところを理解しておきましょう。
さらに、小児期に多い急性および慢性疾病の標準治療と診断のために行われる検査、その看護を学習することも大切です。とくに、プレパレーション、発達段階に応じたセルフケア支援、疼痛緩和の方法など、小児看護に用いられる技術は近年出題されています。
おもちゃに何を使うか、こどもの発達段階や認知機能に応じてどのように説明するかを問う問題があるので、前述した認知発達に応じた看護の方法を考えることができるように学習することが大切です。
そのほか、きょうだいを含む家族の看護、就園・就学・復学の支援など、疾患の治療を受けたこどもの成長発達と、疾患の長期的な経過を支援するという考え方で小児看護学の知識を身につけることも大切です。
「小児看護学」の過去問にチャレンジ!
\ こちらをクリック! /