看護師国試対策|新生児の「原始反射」、存在する理由は? どんな反射がある? いつ頃消える? 生涯残る反射も

看護師国試対策|新生児の「原始反射」、存在する理由は? どんな反射がある? いつ頃消える? 生涯残る反射も

最終更新日:2024/05/14

大脳が発達しきらないうちの生まれてくる人間の新生児。新生児の命を守るために、人体にはさまざまな「原始反射」が仕組まれています。ここでは、さまざまな原始反射の種類、どのような反射か、存在する理由は何か、いつ頃まで存在するかなどをまとめます。

問題 原始反射はどれか。

  1. 手掌把握反射
  2. 視性立ち直り反射
  3. パラシュート反射
  4. Landau〈ランドー〉反射
  5. [第107回看護師国家試験より]

解答・解説

1.(〇)手掌把握反射は生まれつき備わった原始反射で、生後3か月頃に消失します。

2.(×)視性立ち直り反射は生後6か月頃から出現する反射で、原始反射ではありません。

3.(×)パラシュート反射は生後6か月頃から出現する反射で、原始反射ではありません。

4.(×)Landau〈ランドー〉反射はハイハイに必要な反射と考えられ、生後6か月頃に出現し、2歳~2歳半で消失する反射です。原始反射ではありません。

Point:原始反射は生後4~5か月頃まで

覚えておきたい|大脳の判断を待たずに起こる「反射」

大脳皮質の運動野・感覚野、中枢神経の役割と働き」の回で、大脳は受容器(センサー)によって伝えられた感覚情報を判断し、骨格筋(随意筋)に指示を出す中枢ということを学びました。「商店街を歩いていておいしそうな匂いがしてきたときに、(なんだろう?と思って)その匂いの方向に歩いていく」「自分の爪を見て、(爪が伸びてきたなあと思って)爪を切る」などがその例です。

しかし日常生活において、大脳での判断を待たずに反応することも多くあります。例えば、「熱いものを触った時に、(考える間もなく)とっさに手を引っ込める」などです。「熱い」という情報は、感覚性ニューロン(下図緑線)を伝わって大脳にも伝えられますが、これとは別に、感覚性ニューロンは脊髄で運動性ニューロンにすぐさま接続し、骨格筋を収縮させるのです。そのため、「熱い」と思った時にはもう手が引っ込んでいるのです。

反射の目的の多くは自分自身を守ることです。また反射は大脳を介さないので、大脳が障害されている患者さんでもみられるという特徴があります。

図1 反射は大脳を介さずに起こる図1 反射は大脳を介さずに起こる

覚えておきたい代表的な原始反射

人間の赤ちゃんは、大脳が成長しきらないうちに生まれてきます。大脳が成長しきるまで胎内にいると、大きすぎて母親の身体から出られなくなってしまうからです。そのため人間の新生児は、まわりの状況を大脳で判断して行動することはできません。

しかし生きるためにはお母さんにくっついて、母乳をもらわなければなりません。そのための工夫として赤ちゃんには、生まれつき備わったさまざまな反射[原始反射]があります。

表1 代表的な原始反射

口唇探索反射 唇の周りに触れると、その方向に顔を向け、乳房を探すように動く反射
吸啜反射 唇に触れると、唇が自然に吸引運動をする反射
把握反射 手のひらを強く押すと握りしめる運動をする反射
モロー反射 仰向けで急に頭の支えを外すと、両手・両足を伸ばしてから、ゆっくり抱きかかえるように腕を動かす反射

生まれたばかりの赤ちゃんは、唇の近くにツンツン触れるものがあれば、反射的にそちらに顔を向け[口唇探索反射]、唇に触れるものがあれば、反射的に吸い付きます[吸啜反射]。まだ大脳で判断できなくても、とりあえず母乳にありつけるようにプログラミングされているのです。

同じく原始反射の[把握反射]は、手のひらにあたるものをしっかりつかむ反射で、[モロー反射]は、急に頭が反って不安定な姿勢になったり、近くで大きな音がしたりすると、何かを抱き込むように赤ちゃんの両腕が動く反射です。

生まれたての赤ちゃんは、お母さんから離れたら生きていけません。何が何でもお母さんから離れないよう、しっかりしがみついていられるよう、プログラミングされているのですね。

生後3~4か月くらい経って赤ちゃんの大脳が少しずつ発達し、目的をもった運動ができるようになると、原始反射は自然に消失していきます。

生後に出現して生涯活躍する反射

赤ちゃんは、生後7~8か月くらいになると、「お座り」ができるようになります。お座りによって頭が一番高い位置になると心配なのが、姿勢を崩して転倒してしまうことです。そのため、この頃から転倒を防ぐための反射が出現するようになります。そのひとつが[視覚性立ち直り反射]です。

この反射は、お座りしている赤ちゃんの姿勢を前後左右に傾けると、姿勢が傾いていることを視覚情報がとらえ、反射的に頭を垂直に戻そうとするものです。[パラシュート反射]も同じころ出現します。パラシュート反射は、赤ちゃんの両わきを支えて持ち上げ、(転倒するときのように)突然前方向に頭を傾けると、姿勢が傾いた情報を受けて、赤ちゃんの両腕が前に出る反射のことです。

視性立ち直り反射もパラシュート反射も、転倒を防いだり、転倒しても大けがをしたりしないようにするための反射で、生涯にわたって残存し、わたしたちを危険から守ってくれます。

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豆知識|大脳の体性運動野は6歳で完成

最初は原始反射に頼って生きていた赤ちゃんも、大脳の体性運動野(運動命令を出す領域)の発達によって、次第に大脳から骨格筋へ指示が出せるようになっていきます。動かせるようになる骨格筋には、下に示したような方向性があります。6歳くらいになると、体性運動野が完成し、基本的な運動はできるようになります。この間、動かせる部分が増えると同時に、けがをしないように運動を調整する反射も発達します。

乳幼児健診では、身長や体重、言語や生活習慣の発達だけでなく、運動能力の発達や、反射の消失や出現についてもチェックし、乳幼児が健全に成長しているか評価しています。皆さんも自身の母子健康手帳を確認してみてください。乳幼児健診の記録があるはずですよ。

図2 乳児の発達と動かせる骨格筋の方向
図2 乳児の発達と動かせる骨格筋の方向

執筆者情報

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廣町 佐智子

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<日本看護研究支援センター 所長> 看護系短大・大学での教員経験ののち、2002年より日本看護研究支援センターにて、臨床看護師の看護研究指導に従事。同時に、解剖学や看護師国家試験対策の非常勤講師として、全国の看護学生の指導も経験。国家試験のすべての領域についてのわかりやすい指導には定評がある。