GCUとは?NICUとの違いと経験者が語る新生児看護のやりがいまで

GCUとは?NICUとの違いと経験者が語る新生児看護のやりがいまで

最終更新日:2024/09/02

新生児のケアを担うGCU(Growing Care Unit)。今回は、GCUで働く看護師の役割からやりがいや働くうえで大切なことまでを勤務経験者の声をもとに解説します。GCUならではの看護について理解を深めたい人はぜひ参考にしてください。

GCUとは

GCUとは新生児回復室のことで、主にNICU(新生児集中治療室)で治療を受け、状態が安定した新生児を受け入れる部署です。「回復治療室」や「移行期治療室」とも呼ばれています。

急性期を脱した新生児は、継続治療に移行したり、退院に向けての準備に入りますが、GCUではそのような新生児に対し治療や看護ケアを行います。

GCUで提供される医療

GCUでは、主に以下のような新生児が対象です。

  • 低出生体重児で経過観察が必要
  • NICUでの治療や観察を終えて退院調整に入る段階
  • 急性期は脱し安定はしているが、引き続き治療が必要
  • 出生時に先天性疾患の疑いがあり、精密検査が必要
  • 新生児仮死や重度の障害により、継続治療が必要

GCUで受け入れる新生児は、比較的状態が安定しています。そのため、医療機器を用いた集中治療というよりも、持続的な状態管理と退院に向けた家族への指導が中心です。しかし、状態が悪化する可能性もあるため、引き続き小さな変化を見逃さないようにケアを行っていく必要があります。

NICU・PICU・ICUとの違い

NICU・PICU・ICUなど、GCUと名称や役割が似ている部署はいくつかありますが、それぞれ対象となる患者さんや提供する医療の内容が異なります。以下はそれぞれの特徴を表にまとめたものです。

GCU・NICU・PICU・ICUの比較表

NICUは、GCUと同じように「新生児の治療の場」です。GCUと連携した関係がありますが、提供する医療は大きく異なります。NICUでは、主に状態が不安定な新生児のケアを行うため、あらゆる医療機器を備え、看護配置もGCUより強化されています。

またICUやPICUも、重篤かつ急な治療を要する人または新生児が対象となるので、GCUに比べると看護配置が2:1とより強化されています。

GCUに携わる看護師の役割と仕事内容

GCU看護師は、患児さんが退院後も問題なく生活するためのケアや指導を担います。ここからは、GCUにおける看護師の具体的な役割や仕事内容、1日のスケジュール例を紹介します。

GCUにおける看護師の役割

以下はGCU看護師が担う役割をまとめたものです。

  • 自宅での生活に合わせたケアと環境作り
  • 成長発達や疾患に合わせた育児指導
  • 母子(父子)の愛着形成を促す関わり
  • 退院後の育児生活に不安を抱える家族への精神的フォロー
  • 退院後の支援に向けた医療・介護・福祉のサービスや専門職との連携・調整

GCU看護師は、退院に向けての準備をサポートし、患児さんと家族が退院後無事に生活を送れるようにすることが目標になります。在宅生活での障害を極力減らすために、入院中の患児さんの状態や家族の特徴に合わせた関わり方が求められます。日々カンファレンスを行いながら、チーム全体で退院に向けたケアや指導を検討・実施します。

GCU看護師の主な仕事内容

以下はGCU看護師の主な仕事内容をまとめたものです。具体的にどのような業務を行うのかみていきましょう。

GCU看護師の業務一覧
バイタルサイン測定 ・3時間ごとのラウンドにより全身状態を観察
処置・検査の介助 ・医師による処置や検査のサポート
栄養管理 ・3時間ごとに栄養投与
・経管栄養から哺乳瓶での授乳へ移行するための援助
・授乳量の調整
・輸液による場合はシリンジポンプにて管理
排泄管理 ・適宜もしくはラウンド時におむつ交換
・排泄物の性状や量のチェック
・便秘傾向の患児さんには浣腸実施
清潔ケア ・沐浴を主とするが、全身状態によっては清拭や陰部洗浄を実施
退院調整 ・ソーシャルワーカーや臨床心理士など含めた多職種カンファレンスの実施
・医療、介護、福祉のサービスや地域の専門職との連携・調整
家族指導 ・在宅での育児に移行するための指導を行う
・授乳や沐浴などを一緒に実践する
※在宅での酸素吸入や経管栄養が必要な場合は、管理方法やトラブル対処法も指導する
カンガルーケアの援助 ・母親や父親へ注意点を説明し、参加を促す
・患児さんの容体の変化や落下のリスクに注意する
感染対策 ・環境整備による清潔の保持
・手指消毒の徹底
緊急入院対応 ・NICUからの受け入れ対応
・出産後低血糖児、低出生体重児、早産児の受け入れ

GCUでは、退院後に患児さんとご家族が問題なく日常生活を送るために、できる限り一般的な新生児に対するケアを提供するよう意識します。

家族指導は、それぞれの患児さんの成長発達や疾患、さらに住宅環境や家族構成も考慮した内容で実施します。また、どの家族に何の指導を行ったのか、カンファンレンスや看護記録による情報共有が重要です。指導漏れによる退院後の混乱を避けるよう注意します。

そのほか、患児さんと家族の愛着形成を支えることもGCU看護師の仕事です。例えば、「成長の記録として手形や足形を取りたい」という希望に添って、清潔ケアのタイミングを調整することもあります。

1日の勤務スケジュール

GCU看護師の勤務は、一般病棟と同じように日勤と夜勤に分けられます。

日勤帯は主に8:00〜17:00ですが、夜勤帯の勤務時間は二交代制や三交代制など、病院が取り入れている勤務形態によってタイムスケジュールは異なります。病院によっては長日勤や早番・遅番といった変則交代制勤務、夜勤専従として勤務するケースもあるでしょう。

ここからは、GCU病棟看護師の具体的な1日のスケジュールを日勤帯と夜勤帯に分けて紹介します。

日勤帯のスケジュール例

GCUの日勤帯の看護師1人当たりの受け持ちは3〜4人程度です。看護師2人で5〜6人の新生児を受け持つケースもあります。患児さんの状態や緊急搬送などの状況によって日々変動しますが、一般的な日勤帯のGCU看護師の1日のスケジュール例を以下にご紹介します。

GCUで働く看護師の1日スケジュール例(日勤)

GCUでは基本的に3時間ごとのラウンドで授乳を行いますが、状態が安定している患児さんであれば、それぞれのタイミングに合わせます。1日に必要なカロリーに基づいて適したタイミングで授乳を行う場合には、授乳時間に合わせてバイタルサイン測定やおむつ交換などほかのケアも一緒に実施します。

夜勤帯のスケジュール例

GCUの夜勤帯の受け持ちは看護師1人につき6〜7人程度です。GCUでは夜勤においても、バイタルサイン測定、体位交換、おむつ交換、授乳を3時間ごとに行います。以下では、二交代制でのGCUの夜勤帯スケジュール例を紹介します。

GCUで働く看護師の1日スケジュール例(夜勤)

GCUでは、夜勤帯も清潔ケア以外はほぼ日勤帯と同じペースで患児さんの観察やケアを行います。また夜間であっても、NICUからの受け入れや異常分娩による緊急搬送への対応は発生するので気が抜けません。夜勤帯は日勤帯より看護師の人数が少ないため、十分な休息時間を確保できないこともあるでしょう。

勤務経験者が語る~GCUのやりがいから大変なことまで~

ここからはGCUで働いた経験がある看護師に、GCUで培えるスキル、やりがいや大変なことなどについてインタビューした内容を紹介します。実際の経験の様子を知ることで、GCU看護師への理解を深めていきましょう。

看護師プロフィール

東海 篤美 さん

看護大学卒業後、新卒で大学病院のNICUに配属される。その後GCUも兼任しながら各セクションでのリーダー業務を経験。およそ10年間新生児医療に携わる。

GCU看護師を志望した理由

もともと生まれたばかりの赤ちゃんのケアには興味があり、新しい生命が誕生する現場全般の看護に魅力を感じていたため、産科やNICU・GCUを志望しました。

ただ、当時はNICU・GCUでの看護実習がなかったため、GCUがどのような部署であるかを理解しきれていない部分もありました。ですから、興味がある人は病院見学や就業体験に参加し、現場に対する理解を深めたうえで志望を決めるとよいと思います。

GCU看護師の研修内容は?

GCUでの研修には、主にNICUと合同で行われる勉強会などがあります。ここでは必要な日常業務や看護スキルを学びます。院内の専門医師からは、母体の合併症になり得る糖尿病、妊娠高血圧症候群、薬物離脱症候群などの勉強会も行われました。

また、病院が実施する研修ではありませんが、新生児の呼吸・循環に関する外部の勉強会にも参加しました。同じ疾患でも、新生児の日数や週数によって経過が頻繁に変わるため、それに合わせた学習をすることが必要です。

GCUで培えるスキルとは?

GCUでは些細な変化に気づく観察力が磨かれます。生まれたばかりの赤ちゃんは言葉を話すことができないため、看護師は表情や全身状態から異変を察知する必要があるからです。

またGCU看護では、新生児だけでなく家族との関わりが重要です。保護者との頻繁なコミュニケーションや精神的なサポートを行うなかで、家族看護のスキルを身に付けることもできるでしょう。

GCU看護師のやりがいや魅力は?

GCU看護師としてのやりがいは、新生児が健やかに育つためのサポートに携われることです。退院後に新生児とその家族が問題なく日常生活を送れるよう、最良のケアプランを考え実践できるところに取り組みがいがあると感じていました。

また、一人ひとりのケアや指導を行う時間が一般病棟よりも確保しやすく「自分がやりたい看護を提供できている」と実感できていた点も魅力でした。

GCU看護師として働くなかで大変なところは?

GCU看護師で大変だったことは家族への指導です。伝えるべき内容が多く、ケアひとつとっても実践に時間がかかります。さらに、面会時間内にしっかりと理解してもらえるよう説明する必要があるため、難しさを感じる場面は多かったです。そのほか、退院調整もプロセスが複雑で判断が難しいケースが多く苦労しました。

その後のキャリアプランとおすすめの資格

ここからは、新生児医療が学べるGCUでの経験を活かした具体的なキャリアプランと、おすすめの資格について紹介します。

GCU経験者のキャリアプラン例

GCUでは、繊細な新生児看護を経験します。そのため、GCU経験のある看護師は、以下のような部署や職場でもスキルを発揮しやすいでしょう。

  • 産科病棟
  • NICU
  • PICU
  • 小児科病棟
  • 保育園
  • 保健師(母子保健分野)

産科病棟やNICUでは、新生児看護の経験、PICUでは集中的な治療が必要な新生児への看護ケアの経験が役立つでしょう。また、小児科病棟など子どもに関わる病棟全般でも、GCUで携わった家族の精神的フォローや退院指導の経験は生きてくるでしょう。

そのほかに、病院という枠は外れますが、保育園の看護師、母子保健分野の保健師でも、新生児看護や家族支援の経験が活かせるはずです。

おすすめの資格

GCU看護師におすすめの資格としては「新生児集中ケア認定看護師」「NCPRインストラクター」「助産師」が挙げられます。

新生児集中ケア認定看護師

新生児集中ケア認定看護師は、日本看護協会による新生児期に特化した看護師に対する認定資格です。急性期や重篤な状態の新生児へのケア、家族支援などの看護ケアについてより専門的な知識をもち、さらに教育者・管理者としての視点も求められ、NICU・GCUチームを統括する立場を担うこともあります。

新生児のケアや家族の心のケアに関する知識を深めて現場で活かしたいという看護師におすすめの資格です。

NCPRインストラクター

NCPRインストラクターは、新生児蘇生法の技術や理論を現場の医療関係者に指導するための資格です。日本周産期・新生児医学会による養成コースを受講することで取得できます。緊急時に新生児の命を救う技術を正確に指導する能力を強化するため、GCUだけでなくNICUや産科で働く看護師がもっておくとよい資格といえるでしょう。

助産師

GCUの経験を生かし妊産婦と新生児のケアに携わりたい看護師には、助産師免許の取得もおすすめです。GCUでは正常分娩からハイリスク分娩まで多様な出産により誕生した新生児の看護を経験ができます。その際、出産の介助に必要な知識や技術に触れる機会も少なくないでしょう。

GCUで学んだことに加え、今後は、出産の介助、出産・育児を控える妊産婦への指導や精神的フォローにも携わりたいという看護師はぜひチャレンジしてみてください。

GCUで働くためには

GCUは新卒で配属されることもあります。ここからは、GCUに向いている人の特徴、そして就職活動・入職までにやっておいたほうがよいことを紹介します。GCU配属を希望している人はぜひ参考にしてください。

GCU看護師に向いている人の特徴

GCUでのケアは繊細で、小さな変化やサインに気付けるかどうかは大切なことです。そのため、几帳面な人がより向いているといえるでしょう。また、GCUは新生児だけでなくその家族へのサポートも重要になるため、家族看護に関心がある人にもおすすめです。

学生時代にやっておくとよいこと

看護実習のなかでGCUの実習が行われるケースはあまりありません。GCUでの勤務を希望する場合には、GCUが配置されている病院の説明会や就業体験に積極的に参加しましょう。実際の現場を肌で感じることで、GCUへの理解が深められるはずです。

気になる病院が決まっていないという人も、ぜひ複数の就業体験や説明会に参加して、GCU看護師として働くイメージを膨らませてみてください。現在実施している就業体験や病院説明会は以下から検索できます。ぜひご活用ください。

就業体験 病院見学会

※ナース専科 就職

病院選びのポイント

まず、新生児医療のなかでもどの分野に興味があるかを明確することが大切です。そのうえで、以下のように得意分野を有する病院を確認してみましょう。

  • 早産の受け入れを強みとする病院
  • 新生児外科専門の病院
  • 超低出生体重児を多く受け入れる病院

「早産児の赤ちゃんをケアしたい」「心臓に問題がある赤ちゃんをケアしたい」など、自分の希望がその病院で実現できそうかを確認し、病院選びを行ってください。

GCUの理解を深めてキャリア選択に活かそう

GCUは、急性期は脱しているものの、総合的・継続的なケアを必要とする新生児を対象とした部署です。退院に向けた準備を担う役割もあるため、新生児だけでなく家族へのサポートも欠かせません。退院調整や育児指導などで大変な思いをすることはありますが、新生児看護だからこそ得られるやりがいや魅力もあります。

新生児へのケアや家族看護に興味がある人は、ぜひGCUの説明会や就業体験に参加して理解を深めてくださいね。

参照

厚生労働省:周産期医療体制計画指針.(2023年9月27日閲覧)

厚生労働省:集中治療室(ICU)における安全管理について.(2023年9月27日閲覧)

一般社団法人 日本集中治療医学会:小児集中治療部 設置のための指針.(2023年9月27日閲覧)

日本看護協会:2022 年 病院看護・助産実態調査 報告書.(2023年9月27日閲覧)

日本看護協会:看護職の皆さまへ.認定看護師.(2023年9月27日閲覧)

日本周産期・新生児医学会:新生児蘇生法普及事業.事業の目的.(2023年9月27日閲覧)

執筆者情報

プロフィール画像

村上 舞

murakami-mai

帝京大学医療技術学部看護学科卒業後、医療法人徳洲会 湘南藤沢徳洲会 整形外科病棟に4年半勤務。その後循環期病棟、呼吸器内科病棟、回復期病棟、特養、デイサービス、クリニック、健診センター等、様々な職場を経験。現在はライターとして活動中。