看護アセスメントを行うとき、フレームを利用してアセスメントを行っていきます。代表的な例でいうと、ゴードンの11の機能的健康パターン、ヘンダーソンの14の基本的欲求、ロイの4つの適応様式などです。
ここでは、ゴードンの11の機能的健康パターンについて解説します。
マージョリ・ゴードンは、あらゆる看護の場面で活用できるアセスメントの枠組みとして、11の「機能的健康パターン」を開発しました。これは看護診断を導けるように意図されています。この機能的健康パターンは世界各国で翻訳され、日本でも現在多くの学校や病院で看護過程のアセスメントの枠組みとして用いられています。
機能的健康パターンで用いられるパターンとは、一時的ではなく連続的に起こることを意味しています。時間の経過をみながらアセスメントすることが重要です。また、機能面(身体的・心理的・社会的・スピリチュアルすべてを含む全人的な人間の機能)からみた11の健康パターンに注目し、いかなる看護の場面や看護理論でも、看護過程のアセスメントと看護診断ができることに特化した枠組みとして開発された点が大きな特徴です。機能的健康パターンは、1つのまとまりであり、11のそれぞれのパターンにおいても、身体的・心理的・社会的・スピリチュアルな側面が表現されていると考え、アセスメントすることが大切です。
「健康知覚・健康管理パターン」は、患者さんが自分の健康をどのようにとらえ、どのようにセルフマネジメントし、生活しているかをアセスメントするので、その他の10のパターン全てに関連します。最初に情報収集を行うことで患者さんの全体像をつかむことができます。
「栄養・代謝パターン」「排泄パターン」「活動・運動パターン」「睡眠・休息パターン」「認知・知覚パターン」は、身体的な側面を中心に情報を得ます。フィジカルアセスメントの結果や検査データなどがアセスメントには必要ですが、入院生活や治療に関係が深い項目が多いため、実習中の看護学生でも比較的収集しやすいデータです。
「自己知覚・自己概念パターン」「役割・関係パターン」「性・生殖パターン」「コーピング・ストレス耐性パターン」「価値・信念パターン」のアセスメントに必要な情報は、心理的・社会的・スピリチュアルな側面を中心に情報を得ます。患者さんの心の内にあることを聞かなければわからないことも多く、患者さんとの信頼関係が特に必要となります。この中では「コーピング・ストレス耐性パターン」は比較的、患者さんが話しやすい内容です。
「健康知覚・健康管理パターン」が中心となって、他のパターンにつながり、スムーズな情報収集ができる順番になっていることも、ゴードンの11の機能的健康パターンにおける特徴といえるでしょう。
ゴードンの11の「機能的健康パターン」は、具体的にどういった情報を収集すれば良いでしょうか。各パターンごとに以下のような情報収集の一例を見てみましょう。
パターン | 収集する項目(一例) |
---|---|
健康知覚・健康管理 | 受療行動 / 疾患や治療への理解 / 運動習慣 / 服薬状況 / 喫煙 |
栄養・代謝 | 食事の時間・回数・内容・摂取量 / 嗜好品 / 水分摂取量 / 体重・身長比 / 高カロリー輸液 / 胃瘻・腸瘻 / 食欲不振・悪心・嘔吐・倦怠感・脱力感 / AST・ALT / TP / ALB / T-cho(総コレステロール) / HDL-C / LDL-C / 赤血球数(RBC) / ヘモグロビン(Hb) / ヘマトクリット(Ht) / pH / アルコール摂取の有無 / 血糖値 / 褥瘡の有無 |
排泄 | 排泄回数・24時間量・色・1回量・臭い / 排泄困難 / 排泄方法 / 尿pH / BUN / Cr / eGFR / 尿比重 / 残尿量 / 腸蠕動音 / 腹部の膨満感 / 下剤の使用 / 汗・不感蒸泄 / 排液 |
活動・運動 | 1日の必要エネルギー量(㎉)・身体活動量(メッツ・時) / 入院前後の活動パターン / 筋力(MMT) / 筋骨格系の外観(対称・外形・姿勢) / 歩行状態 / 自助具の使用の有無 / 自発的な動き / 活動時の酸素化との関連 / ADL(日常生活の能力) / 体温 / 発熱の有無 / 安静度 / 住居環境 / 呼吸数 / 呼吸のリズム・深さ / SpO₂ / PaO₂・PaCO₂ / 呼吸困難 / 胸部レントゲン写真 / 脈拍数 / 脈拍のリズム・緊張度・強さ / 脈拍の欠損 / 心拍数・心音 / 心電図 / 血圧 / 血圧の左右差 |
睡眠・休息 | 1日の休息時間・睡眠時間 / サーカディアンリズム / 熟眠感 / 睡眠不足の兆候 / 睡眠剤の使用有無 / 睡眠・休息を阻害する因子 |
認知・知覚 | 意識 / 見当識 / 瞳孔の状態 / 動眼神経反応 / 認知機能 / 感覚 / 疼痛 |
自己知覚・自己概念 | 性格 / ボディイメージ / 疾患に対する認識 / 自尊感情 / 育った文化や周囲の期待 |
役割・関係 | 年齢(発達課題) / 家庭内役割 / 社会的役割 / ボランティア活動 / 病人役割(病者役割) / 趣味 / 経済状況 / キーパーソンとの関係 |
性・生殖 | セクシュアリティ・子供の有無 / 更年期症状の有無 |
コーピング・ストレス耐性 | 通常のストレス対処方法(コーピング方法) / ストレッサーの状況 / ストレス反応 / 家族など周囲のサポート状況 |
価値・信念 | 信仰(宗教)・意思決定を決める価値観 / 信念 / 目標 |
看護過程において、記録方法のひとつに「SOAP」という方法があります。
SOAPに当てはめてアセスメントを行うポイントや書き方について、例を用いて紹介します。
早期胃がんで腹腔鏡のオペをした患者さんの場合
実習期間中、看護学生の睡眠時間は心身に悪影響を及ぼすほど少なくなることがあります。看護学生は患者さんの健康をサポートするべき立場ですが、自分が健康でなくなると辛い実習期間になってしまいます。看護学生が少しでも睡眠時間を確保し、笑顔を忘れず心身ともに健康で充実した実習になる一助となればうれしいです。
看護の世界では、質問をすることや質問に対する直接的な回答を教えることに関して
【絶対NG】な空気になることもあります。しかし、回答を効率的に手に入れることで、学びがより深まることもあるはずです。
アセスメントガイドを確認し、反復学習をして身につくこともあるのではないでしょうか。短時間で効率よく学習し、意欲的に学ぶ環境を整えたいと思っています。
アセスメントガイドは、看護学生だけでなく看護師になったあとも役立つツールを目指しています。看護師になってからも勉強の日々が続きます。目の前の患者さんを看護するとき、今どのような状況か迷ったときなど、ポケットのアセスメントガイドで患者さんの状況を把握することもできるはずです。
アセスメントガイドを通して学習し続けることで、アセスメント能力の高い看護師が増えることを願っています。高い水準の医療提供機会・看護人材の育成につながり、その結果(患者・看護学生・看護師含め)元気な人が増えることを願っています。
ゴードンの各パターンごとに、サイトとダウンロード資料があります。それらを使って、看護過程を組み立てましょう。
会員登録して各パターンごとのページを見る
会員になると、各看護理論ごとのページを閲覧できます。ページ内には、各パターンで収集する項目・項目の概要・基準値などを掲載しています。
何をアセスメントするために項目があるのかを理解しながら学習をすすめましょう。
※各パターンで収集する情報はあくまで一例です。必ず実習で受けもつ患者さんや通っている学校での授業・教科書・指導などに合わせた情報収集を心がけましょう。
実習中情報収集メモで患者さんのS・O情報を収集する 実習中情報収集メモには、各パターンの基準値・正常値が1枚にまとまっています。実習に持っていき、このメモに患者さんのS・O情報を記入したら、患者さんの状態が正常か異常かということを把握することができます。
練習ノートを使って看護過程を作成する 看護過程練習ノートには、基準値・異常値や正常時の看護過程例文が載っています。実習中情報収集メモをもとに、患者さんの情報が正常なときは例文を使い、異常なときは正常時の例文を参考に自分で文章を考え、看護過程を組み立てることができます。
1 | 情報収集する項目を確認する |
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2 | 項目が正常な場合、どういったことが言えるかを考える |
3 | 受け持つ患者さんの疾患と照らし合わせ、異常になる可能性のある項目をチェックする |
4 | 異常がある場合、どのようなことが考えられるか調べる |
任 和子(にん かずこ)
京都大学大学院医学研究科/人間健康科学系専攻先端中核看護科学講座/教授
大阪教育大学大学院 教育学研究科 修士課程修了、京都大学大学院 人間・環境学研究科 博士後期課程修了。
京都大学医学部附属病院にて看護師として勤務後、京都大学医療技術短期大学部 助手、名古屋大学医学部保健学科 助教授、滋賀医科大学医学部看護学科 助教授を経て、再び2005年より京都大学医学部付属病院 副看護部長、2007年同院病 院長補佐兼看護部長を兼務、2011年4月より現在に至る。
専門は、慢性看護学・看護管理学。
著書に『看護過程展開ガイド 実習記録の書き方がわかる ヘンダーソン、ゴードン、NANDA-I、オレム、 ロイ』(照林社)、『領域別 看護過程展開ガイド(プチナースBOOKS)』(照林社)、『病期・発達段階の視点でみる 疾患別看護過程(プチナースBOOKS)』(照林社)、『根拠と事故防止からみた 基礎・臨床看護技術 第3版』(医学書院)等、多数。
※このページは、有資格者の現役看護師が学生時代の実習と臨床経験にもとづいて作成したアセスメントシートで、あくまで一例です。必ず実習で受けもつ患者さんや通っている学校での授業・教科書・指導などに合わせた情報収集を心がけましょう。
※紹介する検査値の基準値は、LSIメディエンスに準拠しています。