THE LEADING NURSE [ リーディングナースTOPに戻る ]

Special Topic 1
[トップが語る学生へのメッセージ]
看護部長インタビュー

看護職というキャリアの主人公は
自分自身です。
どのような状況でも途切れることなく、
学びながら、働きながら、
キャリアを紡ぎましょう!

東京大学医学部附属病院

看護部長

武村 雪絵 さん

東京大学医学部附属病院

[住所] 〒113-8655 東京都文京区本郷7-3-1

当院には男性看護師の自主運営組織「ナースマンの会」があり、意見・情報交換やネットワーク形成などの交流を行っています。まだ男性看護師は看護職全体の1割程度なので、まずは2割に増やすことを目指しています。

主体的に学び、キャリアを紡ぐ
自律した看護師を育てたい

—貴院の看護部は、時代や社会の変化に対応し、未来の看護を視野に入れながら、進化と変化を続けています。新しいトピックスがあれば、ぜひお聞かせください。

 病院の機能分化が進むにつれて、当院の高度急性期医療を支える看護師の力がますます必要になります。そこで病院の方針として、看護師の採用人数を増加しました。
 ただし、私たちが求めているのは単なるマンパワーではありません。看護師である限り、学びながら、看護の力を育んでいかなければなりません。自ら学び、成長する意思のある仲間を歓迎します。同時に、看護職としての学びを支援していく体制を整えました。

—手厚い教育体制が高い評価を受けていますが、さらに内容を充実させたということでしょうか。

 看護部の中にある「教育研究支援室」を「生涯学習支援室」に変更しました。専門職である看護師が、自分のキャリアを主体的に切り開く力を高めたいという思いがあります。
 若い看護師たちには、この先、社会や自身の環境の変化が待ち受けているでしょう。看護実践の場が当院ではなく、国内外のどこかに移るかもしれません。しかし、どのような変化があっても、看護職としてのキャリアの主人公は自分自身です。キャリアとそれに伴う専門職としての学びは生涯にわたり、途切れることなく続きます。
 看護部では、主体的にキャリアを紡いでいける看護師を育成し、その学びを支援していきたいと考えています。

—主体的に学ぶというのは、意外に難しいのではないでしょうか?

 そのとおりです。特に学生時代の学び方と、臨床で働きながらの学び方には、大きな違いがあります。まずは自ら学習サイクルを回せるようになるための支援が必要だと考えています。そこで、新しいツールなども取り入れながら、学生の学びから社会人としての学びに切り替えるための支援を整えました。

—どのような支援でしょうか? 具体的にお聞かせください。

 各部署で、2年間の成長の標準的な道筋を示した標準学習モデルを整備しました。各時期の標準的な到達目標や習得項目をキャリアラダーの各評価項目と照らしながら可視化したものです。新人看護師はこのモデルを活用して自らの進捗を把握し、プリセプターやエルダーと対話しながら、次の目標や計画を定め、実践して振り返り、学びを深めます。

—なぜ2年間なのでしょうか?

 当院のキャリアラダーでは、2年間で、標準的な看護を自立して実践できるレベルⅡへの到達を目指します。1年目は、必要に応じて助言を得て看護を実践できるレベルⅠを目指します。2年目のスタート時点では、先輩からの助言が必要なので、2年目の指導者もついているのですが、看護師から「2年目からどのように成長していけばいいのかわからなくなる」という声もありました。そこで、2年間の学習モデルを提示することで、1年目から2年目へのステップアップがスムーズにいくようにしました。最初の2年間で、自分がキャリアの主人公であることを自覚し、主体的に学び、キャリアを伸ばし続ける基盤をつくりたいと考えています。

標準化と個別化で
より良い看護を積み重ねる

—良い看護には「標準化」と「個別化」が求められると伺いました。

 新人看護師からベテランまで、すべての患者さんに根拠に基づく質の高い看護を提供すること。これが「標準化」です。そのうえで、患者さん一人ひとりの状況に合わせて、どういうアウトカムが期待できるのか、そのためには何が必要なのかを考え、最適な看護を提供していくこと。これが「個別化」です。標準化の上に個別化を積み重ねることで、一人ひとりの患者さんに応じた、さらに質の高い看護を提供できます。

—標準化と個別化の関係性がよくわかりました。個別化には患者さん一人ひとりの状況に合わせて考える、判断する、創造するといった力が求められるのですね。

 はい。看護実践には常に自分自身で考えることが求められます。それが、標準化の推進や個別的な看護を創出する力でもあるからです。
 私たちは「みて、触れて、考える看護」により、「生命力を引き出す看護」を患者さんに提供しています。「みて、触れて」患者さんから得た情報を統合して考えることで「生命力を引き出す看護」が生まれます。

—考える力を育むためにも、主体性が大事なのですね。

 そのとおりです。主体性というのは自らの意思で考え、判断し、責任を持って行動することです。例えば、新人看護師はたくさんの業務を覚える必要があります。しかし、単なるタスクではなく、なぜこの業務をするのか、実践・遂行にはどのような知識・技術が必要なのか、考えてみてほしいのです。
 看護師として自分が行っていることの意味や意義を深く理解することは、実践能力の向上だけでなく、大きなやりがいにもつながります。きっと、単なる業務だと思っていたことの中にも、「これも看護なのだ」という大切な気づきや発見があるはずです。

—新人看護師の育成に力を注ぐだけでなく、キャリアが途切れることなく働き続けられるような支援にも尽力されていると伺いました。

 働き方改革を推進し、残業などのオーバーワークを減らす努力をしています。看護師の採用数を増やすことに加えて、看護補助者や保育士、クラークの確保にも取り組んでいます。育児支援制度も充実しており、約180名の看護師が育児のための時短勤務をしています。このように、学ぶ環境と働き続けられる環境の両面から、看護師の成長とキャリアの継続・向上をサポートしています。

社会が変わっても、人々の健康な生活の実現に貢献する看護師の使命は変わりません。継続的な学習に主体的に取り組み、能力の開発・維持・向上に努めましょう。それが看護師の成長と進化の源泉です。

Profile プロフィール

たけむら ゆきえ

1992年東京大学医学部保健学科卒業後、看護師として東大病院に入職、虎の門病院分院を経て大学院に進学。2006年東大病院副看護部長、2011年医科学研究所附属病院看護部長。2015年より東京大学にて教育と看護研究に従事。2022年4月より現職。

ページTOPへ 特集記事TOPへ戻る リーディングナースTOPへ戻る