THE LEADING NURSE [ リーディングナースTOPに戻る ]

Special Topic 1
[トップが語る学生へのメッセージ]
看護部長インタビュー

ナイチンゲールの教えに基づき、
「機を誤らず」「声なきに聞き」
「形なきに見る」力を備えた
看護実践者を育成しています

東京慈恵会医科大学附属病院

看護部長

玉上 淳子 さん

東京慈恵会医科大学附属病院

[住所] 〒105-8471 東京都港区西新橋3-19-18

特定機能病院として最先端の医療・看護を提供しています。専門性と機能性を重視した「中央棟」や、母子医療体制の充実を目的とした「母子医療センター」を持ち、全国より来院される患者さんのニーズに応えています。

すべての人に医療を。
理念は今も受け継がれる

—東京の中心に位置する貴院の役割を教えてください。

 当院は、創設者の高木兼寛が英国セント・トーマス病院医学校の留学中、現地の人道主義や博愛主義の影響を強く受けたことに始まります。帰国後、「すべての人が医療を受けられるように」と願いを込め、東京慈恵会医科大学の前身となる医学校を開設しました。
 この理念は、約5年間続いたコロナ禍でも受け継がれました。当院は、新型コロナウイルス感染者を積極的に受け入れ、その患者数は全国で2番目となりました。さらに、東京都から「重症患者に対応できる病院が少ない」との要請を受け、港区周辺で特定機能病院の機能と三次救急を担う医療施設が少ない現状を踏まえ、当院がその役割を引き受けました。2023年3月には救命救急センターを開設。2025年4月には重症患者の受け入れを開始し、地域医療への貢献に尽力しています。

—看護師の育成と受け入れ体制の整備が重要になりますね。

 高木兼寛は、留学中に看護師の献身的なケアを目の当たりにし、医療と看護は車の両輪のように不可欠な存在だと確信しました。この経験から、帰国後に看護師の教育所を開設しました。これが、当院が「看護教育発祥の地」と呼ばれる所以です。当時から、当院はナイチンゲールの「看護とは、生命力の消耗を最小にするよう、生活過程を整えること」という考えに基づき、患者さんを1人の人間として尊重し、それを基盤とした教育を行っています。
 コロナ禍の当初は、病気の性質や治療法が未解明で、患者さんとの会話も制限される状況でした。従来の看護とはまったく異なる介入をしなければならない葛藤がありましたが、当院の看護師たちは、患者さんの生命力を消耗させている要因を見極め、工夫しながら苦痛を取り除く実践をくり返しました。その結果、多くの患者さんを受け入れることができたと考えています。

—実際にどのような研修を行っているのでしょうか。

 当院の看護教育は、「機を誤らず」「声なきに聞き」「形なきに見る」力の育成を基盤としています。例えば、新人教育では毎月、ナイチンゲールの著書『看護覚え書』からテーマを取りあげ、ケーススタディやグループワークを通してディスカッションを行います。患者さんの状況を看てどのように判断するかは、看護師の人間観や感性が問われます。そのため、同期や経験豊富な先輩たちと意見を交わすことで、「自分にはなかった視点」に気づき、視野を広げ、知識を深めることができます。また、2年目以降の継続教育でも、看護師が1人の実践者として成長できるよう、集合教育を実施しています。事例をもとに患者さんの反応から実践した看護について、その意味をディスカッションします。終了後は各自が課題を持って現場に戻り、実践を重ねます。年度末にはその経験をレポートにまとめ、共有することで、自分の学びをさらに深めるようにしています。

どの道を選んでも
万全のサポート体制がある

—三次救急医療施設の認定を受け、エキスパート看護師の育成はどのように進めていますか。

 三次救急では、クリティカル領域の臨床判断力と臨床推論力が不可欠です。当院では、訓練された看護師たちがプロジェクトチームを組み、現場での指導者となれる人材を育成しています。
 具体的には、RRS(迅速対応システム)ラウンドを実施しています。各ユニットの特性を考慮しつつ、急性期医療を必要とする患者さんにどのような治療フローを適用すべきか、専門領域間の連携をどう進めるかなど、同じ目標に向かって活動することで、スムーズな連携を図れます。この積み重ねが、当院看護の強みになっています。
 救急分野に限らず、キャリアアップを目指す方には、師長や認定看護師の推薦を受けて、国内留学制度を利用した院外研修に参加できます。また、専門看護師を目指す場合は、本学の大学院に進学する道も開かれています。勤務上の配慮など、就業しながら学べる万全のサポート体制を整えています。

—ジェネラリスト看護師の育成についてはいかがでしょうか。

 当院では、経験豊富でありながら組織的役割を担っていない看護師が増えている現状を踏まえ、そうした看護師たちが現場で生き生きと働き、自身の経験に自信を持てるようにサポートしています。それが、後輩看護師の育成にもつながると考えているからです。2024年度からキャリアサポートセンターが中心となり、これまで4つの附属病院が個別に実施していたジェネラリスト研修を統合しました。元センター長の教員が講師を務め、「ワールドカフェ方式」で、自身の看護実践について自由に表現する場を設けています。
 この研修を通じて、参加者には、患者さんとのかかわりの中で経験した失敗や成功こそが、看護師として成長してきた基盤であることを再認識してほしいと願っています。そして、これまでの看護実践に誇りを持つことで、より自信を持って働くことができるようになると考えています。

—看護学生の皆さんへメッセージをお願いします。

 「哲学」は物事の本質や論理的な思考を探求する学問であり、目に見えないものです。「FISH!哲学」を実践するために、意識して自身の行動を変え、その実践を他者に表現するために、目に見える形にしたのが当院オリジナルの魚柄のユニフォームです。私自身も気合いを入れたい日には、このユニフォームを着るようにしています。看護は、人の一生にかかわる仕事です。自分ではない他者の痛みや苦しみ、喜びを感じとる能力を求められることによる困難さはありますが、多くの方々の人生を共有することで、自身を豊かにすることができる素晴らしい職業です。自ら「仕事を楽しみ」この職業を誇りに思い、夢に向かって頑張ってくれることを心から願っています。

育児休職制度や短時間勤務制度が充実しており、看護師が人生のライフステージに合わせた働き方を続けられる環境が整っている。復帰時には看護部長が面談を行い、最適な復職場所を一緒に検討するという。

Profile プロフィール

たまがみ じゅんこ

1982年慈恵看護専門学校卒業後、看護師として東京慈恵会医科大学附属病院に入職。2013年東京慈恵会医科大学大学院に進学し、2015年同大学院博士前期課程修了。2016年附属葛飾医療センター看護部長就任。2021年より現職。

ページTOPへ 特集記事TOPへ戻る リーディングナースTOPへ戻る