看護学生のための「生成AI」活用ガイド:実習・課題・国試対策で安全に学びを深める

日々の課題や実習記録、国家試験対策と、看護学生の毎日は時間との戦いです。生成AIは、こうした学びのなかで「時間が足りない」「何から始めればいいかわからない」という悩みを助けてくれる、便利な道具となります。

一方で、活用にあたっては「守秘義務違反(情報流出)」「不正行為(丸写し提出)」「誤情報(もっともらしい誤り)の使用」といったリスクも理解しなければなりません。だからこそ、最初に生成AIツールを安全に使う型を押さえると、安心して学習効率を上げられます。

※本記事は一般的な学習支援の情報です。各学校・実習施設の規程が最優先であり、個別の法的助言を目的とするものではありません。

この記事のPOINT
  1. 生成AIを安全に使うための「OK/NGルール」
    • 学校/実習施設の規程を最優先する(生成AI使用申告・引用ルールがあれば必ず従う)
    • 患者・家族・職員・施設が特定される情報は入力しない(匿名化でもリスクが残る)
  2. 課題・実習・学習・国試での使いどころと、迷わないための手順
    • 生成AIは「答え」ではなく、理解を深める学習チューターとして使う
    • 使う前に「目的(何を学ぶ?)」を1文にする
  3. 誤情報を鵜呑みにしないためのチェック観点(実践例・プロンプト例あり)
    • 生成AIはもっともらしい誤り(幻覚)を混ぜることがあるため、必ず一次情報で照合する
    • 最後は自分の言葉で書き直し、根拠を説明できる形に整える

まず押さえたい!基本用語と3つの鉄則

生成AIを安全に使うためには、「AIの仕組み」や「法的なリスク」を知っておく必要があります。まずは前提となるキーワードを押さえ、それを踏まえた3つの鉄則をみていきましょう。

【前提知識】知っておきたい4つのキーワード

1. プロンプト
生成AIへ「何を、どんな形で出してほしいか」を伝えるための指示文
2. 幻覚(hallucination)
生成AIが、事実ではないことを事実のように回答を作ってしまうことがある現象のこと
3. 要配慮個人情報
医療情報など、不当な差別や不利益につながる恐れがあるため、特に慎重な取扱いが必要な個人情報
4. 越境移転
入力したデータが、国外の事業者・サーバーで処理される/提供される可能性があること

鉄則 1
個人情報は「入力しない」(守秘義務)

看護師等には、業務上知り得た人の秘密を漏らさない義務が法令で定められています1)。学生も資格者ではありませんが、実習要項や誓約書等で同等の守秘を求められるのが一般的です。

生成AIは「入力した文章」をもとに処理するため、入力段階で守秘が崩れると取り返しがつきません。以下の情報は絶対に入力しないでください。

覚えておきたい入力NG項目(※コピペ厳禁)

個人を特定できる情報
【例】氏名、住所、連絡先、学生番号、ID・パスワード、顔写真 など
患者・家族・職員・施設が特定できる情報
【例】施設名、病室番号、具体的な日付+症状の組合せ など
未公開の内部資料
【例】実習記録の原文、電子カルテの画面、検査画像、申し送り内容、施設内部資料(手順書・マニュアル等) など

医療情報は「要配慮個人情報」として、特に慎重な取扱いが求められます。また、多くの生成AIサービスは、国外のサーバー等で処理されることがあり、「越境移転(外国にある第三者への提供)」される可能性があります。

※これらに関する考え方は、個人情報保護委員会のガイドラインで示されています2)3)。

だからこそ「そもそも個人・施設が特定される情報は入力しない」ことが情報漏洩を防ぐための最も確実な対策です。

鉄則 2
学校/実習施設の規程を「最優先」する

生成AIの扱いは、学校や実習施設によって大きく異なります。
※文部科学省より、教学面での生成AIの取扱いは、各大学・高専等が主体的に指針を整え、適切に対応すべきとしています4)。

自己判断せず、迷ったら必ず教員や指導者に「どこまで使ってもOKか」「申告が必要か」を確認してください。

鉄則 3
「丸写し提出」はNG(不正・トラブルのもと)

生成AIの文章をそのまま提出すると、自分の考えが含まれないため、学校によっては「不正行為」とみなされる可能性があります。そして、考えるプロセス自体がなくなるため、学習効果も下がってしまいます。

また、他人の文章、問題集の問題文をそのまま生成AIに入力するような行為は、著作権侵害や利用規約違反になる恐れがあります。安易な利用は避けましょう。
※生成AIと著作権の関係については、文化庁が考え方を整理して公表しています5)。

気をつけたいポイント

提出物の作成等で生成AIを活用する際は、以下の点に注意しましょう。

正しい方法で生成AI使用の申告をする

生成AI使用の申告が必要な場合は、学校/実習施設で指定された方法で必ず明記しましょう。

プロンプトや使用範囲のメモを残しておくと役立ちます。

適切な「引用」のルールを守る

提出物で資料や文献を引用するときは、守るべきルールがあります。

  • 引用部分は「」などで囲み、自分の文章と区別する(公正な慣行)
  • 本文は自分の文章が中心。引用は補足として必要な範囲にとどめる(主従関係)
  • 著者名や文献情報など、出典(引用元)を明記する(出所の明示)

詳しくは解説資料も参考にし、必ず一次情報(元の文献)を確認して、ルールに則って記述しましょう6)。

生成AIが得意なこと/苦手なこと

生成AIは万能アイテムではなく、得意な作業と苦手な作業があります。特性を正しく理解して、賢く使い分けましょう。

得意な作業
情報の整理

長い文章の要約、言い換え、構成案づくり、書いた文章の抜け漏れの指摘

学習補助

用語の定義の整理、比較(AとBの違い)、クイズの作成

対話のシミュレーション

ロールプレイ(面接練習/患者対応の言い回し練習)

苦手な作業
正確な事実や出典の提示

最新情報の提供、正確な文献提示(架空の引用を作ることもある!)

正誤判断

誤情報でも自信ありげに断定する(誤りでもそれっぽく書ける=幻覚のリスク)

個別性の高い判断

個別の患者への判断、施設の手順書(ローカルルール)を正確に反映した対応・手順の提案(生成AIは各施設の内部手順を把握しておらず、手順書等を生成AIに入力することも守秘・規程上難しいため、実際の対応は指導者の指示と施設手順が最優先)

※医療・ヘルスケア領域では、生成AIの利用に伴うリスクと対策を整理したガイドライン7)も公表されています。これらは現場での利用を前提とした内容ですが、目を通すことで「どのようなリスクがあるのか」や「どのような対策が必要か」を理解する助けになります。

これで迷わない!生成AI活用時のおすすめ手順(4ステップ)

課題や実習で生成AIを使うときは、以下の手順に沿って進めると、迷わず安全に活用できます。

step1
ルールを確認する

まずは学校や実習先の「生成AI活用ルール」を確認します
(利用可否、申告、入力禁止事項など)

step2
目的を1文にする

何のために使うかを一言にまとめます
(【例】「構成を作る」「観点の抜けを探す」「説明練習」など)

step3
安全に質問する

一般化(個人が特定されない表現)した状況+自分のメモをもとに質問します
(個人情報・実習記録の原文は入力しない)

step4
検証→修正→振り返りを行う

生成AIの回答を教科書・講義資料・施設手順で照合し、自分の言葉で書き直します
最後になぜその答えになるのか、説明できるよう確認しましょう

※情報の扱いは、医療情報の安全管理の観点でも「外部サービス利用時のリスクと対策」が強調されています8)。

実際の活用例(プロンプトあり)を紹介!【シーン例:レポートの構成を作る】

ここでは、実際に生成AIツールを使ってレポートの構成を作るときのプロンプト例や回答を活用するときの注意点などを紹介します。

今回のAI活用の目的は「課題(レポート/感想)で「構成」を作る」です。
※以下は「患者・施設が特定される情報を入れない」前提の例です

AIへの質問方法(プロンプト例)

プロンプト例
あなたは看護学生向けのレポート添削者です。
私は「完成原稿」ではなく、自分で書くための設計図が欲しいです。

次の「課題条件」と「要点メモ」から、以下を出してください。
1. 結論候補(1文)
2. 見出し構成(3〜5個)
3. 各段落で書く要点(箇条書き)
4. 不足している観点(私に聞くべき質問)

【課題条件】
・テーマ:____
・文字数:____
・必須項目:____

【要点メモ(自分の言葉で短く)】
・____
・____
・____

注意:本文そのものは書かず、構成と考える観点だけをください。完成原稿は作らず、私が自分で書くための設計図にしてください。

AIの回答をどう活用する?

AIで得られた回答例
結論のたたき台(1文)
・実習での学びは「観察→報告→再評価」を回し続けることが患者安全につながる、という点に集約できる。

見出し案(5つ)
1. 導入:何を経験し、何に困ったか
2. 観察:どんな情報をどう整理したか(主観/客観)
3. 報告:誰に何をどう伝えたか(優先順位の理由)
4. 再評価:介入後に何を確認し、どう学び直したか
5. まとめ:今後の課題(次はこうする)

各段落の要点(超短縮)
・導入:状況を一般化して1〜2行で
・観察:根拠(講義/教科書)に結びつく言葉で
・報告:SBARのどこを意識したか ・再評価:結果+「なぜそう考えたか」
・まとめ:次回の行動目標を1つ

確認したい質問(書く前チェック)
・「安全」に関する視点(転倒/誤薬/急変兆候など)をどこで触れる?
・指導者の助言を、学びとしてどう言語化する?
・用語(例:アセスメント、観察、評価)の定義は自分の言葉で説明できる?

活用時の注意点

生成AIの回答を活用するときは、以下の点に注意しましょう。

  • AIの文章をそのまま提出しない(自分の経験・学びの言葉に直す)
  • 事実・定義・手順は、教科書や講義資料で根拠を確認する(誤情報対策)
  • 実習先や患者が特定される表現(病棟名、日付、珍しい症例など)は書かない(=一般化する)
point

AIが出した構成案は「地図」です。地図をみながら、あなた自身の経験・講義内容・根拠を組み立てて文章にします。特に看護は安全と根拠が重要なので、定義や手順は一次情報で照合し、誤りがないか確かめましょう。

▼ OK活用例(望ましい使い方の具体例)
  • AIの「不足観点の質問」をみて講義資料を読み直し、根拠のある表現に言い換えてから本文を書く
▼ NGの活用例(避けたい使い方の具体例)
  • AIの文章をコピペして提出し、根拠を聞かれても説明できない
  • 引用ルールを守れていない

【全17テーマ】プロンプト付き!目的別AI活用ガイド集

レポート作以外にも、実習の準備や国試対策など、AIが役立つ場面はたくさんあります。以下のリンクから、今のあなたの悩みや状況にあったAI活用法をチェックしてみてください。すべてプロンプト例や回答の活用ポイントを紹介しています。

まとめ:生成AIと“上手に付き合う”ために

生成AIは、学習を加速できる一方で、使い方を間違えると守秘義務違反・不正行為・誤情報の鵜呑みなどのリスクがあります。

しかし、今回紹介した「入力しない情報」「学校/実習施設ルールの最優先」「一次情報での検証」を守れば、安心して使える場面が増えていきます。医療・教育分野で重要視される倫理・ガバナンスを養うことにもつながります。

AIはあくまで学びの相棒です。便利な答えに頼りっきりになるのではなく、最後はあなた自身の理解と根拠で、説明できる形に仕上げましょう。

引用・参考文献

監修・執筆者
永井 翔

永井 翔
椙山女学園大学看護学部講師(精神看護学領域)

愛知医科大学看護学部卒業後、同大学大学院看護学研究科修士課程(精神看護学専攻)を修了。国立病院機構東尾張病院で看護師として勤務し、副看護師長を経験。名古屋医療センター付属名古屋看護助産学校、人間環境大学看護学部助教を経て、2026年4月より椙山女学園大学看護学部講師。2026年3月に博士(看護学)を取得し、同月にRANモデル原案構築で学長賞を受賞。『精神看護学Ⅱ[第6・7版]』執筆、『看護のためのChatGPT』編著。

専門分野は、精神看護学、看護情報学、看護教育、チャイルド・マルトリートメントと精神疾患・愛着課題、VR・生成AIを活用した看護教育研究