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Special Topic 1 看護部長インタビュー [トップが語る学生へのメッセージ]

都立病院共通のキャリアラダーと
臨床現場での実践で患者さんの
個別性に応じた「つなぐ看護」を
提供できる看護師を育成しています

東京都立多摩南部地域病院

看護部長

辻󠄀 由美さん

集合研修で看護技術を習得し、
現場で実践力を養う

都立病院共通の「東京都立病院機構キャリアラダー」に基づいた教育体制についてお聞かせください。

 都立病院共通の看護キャリアパスに対応し、看護の専門職として知識・技術・態度の学びを深めるレベルⅠからⅤまでのキャリアラダーを設けています。ⅠからⅢまでの基礎コースは、自律した看護師としてリーダーまでを実践できることを目標としています。ⅣからⅤのジェネラリストコースは、高度な看護実践能力を獲得し、リーダーシップを発揮でき、自分自身のキャリアアップに取り組めるジェネラリストを目指します。
 そのほか14病院のスケールメリットを生かし、認知症看護、クリティカルケア、小児看護など特定の分野に特化したエキスパート研修や、各病院へのジェネラルナース派遣研修では短期研修、長期研修も実施しています。
 各病院では特徴ある医療を提供しているため、基礎コースを終えた後は次の目標に応じた異動も可能です。看護師としての成長とともに、キャリアを継続できることもメリットです。認定看護師や専門看護師の資格取得支援制度も充実しているため、さまざまな段階でステップアップが可能です。

貴院の教育の特徴があれば教えてください。

 新人看護師は、先ほど述べた都立病院機構のガイドラインに沿って、集合研修で基本的な看護技術を習得していきます。その後、臨床現場で病棟に合わせた基礎技術を学びますが、PNS(パートナーシップ・ナーシング・システム)を導入しているため、先輩看護師とペアで実践力を身につけられる体制が整っています。段階的に受け持ち患者さんを増やし、休日勤務・夜間勤務などにも対応していきます。
 2年目以降は感染管理や安全管理などの研修、4年目以降は個々のキャリアに合わせた看護研究、在宅療養支援などの研修を用意しているので、自分の興味のある研修に参加し、キャリアアップできる環境があります。

地域の急性期医療の提供と
入院から退院後までの支援

貴院は都内第1号の地域医療支援病院の役割を担っているそうですね。

 多摩南部を対象とする急性期医療の中核を担い、地域の方々に信頼される医療と看護の提供に取り組んでいます。患者・地域サポートセンターを中心に医師や訪問看護ステーションと連携を図り、入院前から退院後までを見据えて患者さんを支援しています。
 近年、コロナ禍のため直接訪問できない状況が続いていましたが、今年度は退院前後訪問、認定看護師による同行訪問にも取り組んでいく予定です。地域での生活者としての患者さんが退院後も安心して治療を継続し、生活が送れるかを、ともに考えていくことを看護の軸としています。
 同行したスタッフからは「病院の中では退院後のイメージがつきにくく、想像していたものと違った」「入院中に準備するものや自宅での工夫が具体的になった」との声も上がっています。新たな視点や気づきはスタッフ間で共有し、退院後につなげています。

患者さんの高齢化に伴い、高齢者・認知症看護の充実に力を入れているそうですが、どのような取り組みを行っているのでしょうか。

 南多摩地域は高齢化が進んでおり、入院する患者さんも高齢者が多いです。高齢者看護は全病棟で必要な看護で、これからも認知症看護は欠かせない状況です。各病棟から1名の認知症ケアリンクナースを配し、委員会を開催しています。事例検討や必要な知識・技術の習得をはじめ、認知症看護認定看護師からのアドバイスを受け、現場での看護に生かしています。
 また、高齢患者さんを対象とした院内デイケアを導入し、認知症状態の緩和や身体機能の回復・維持・向上に取り組んでいます。デイケアでは病棟とは違う患者さんの一面を見ることができ、人間らしさを尊重するユマニチュード®研修を受講した看護師は、自分の対応1つで相手が変わることを実感しているようです。

貴院では看護補助者が数多く在籍していることも特徴ですね。

 全病棟、全勤務帯に配置し、看護師の業務の軽減につなげています。直接ケアなど補助者業務の拡大にも取り組み、チェックリストを作成して段階的に進めています。看護チームとして協働し、やりがいを持って働ける環境を提供し、尊敬し合って業務が行える体制を整えています。

貴院の求める看護師像についてお聞かせください。

 看護部では患者さんの個別性に応じた「つなぐ看護」をテーマにしています。患者さんやご家族との信頼関係を構築していく「患者さんにつなぐ」。患者さんにかかわるチームの仲間として多職種と連携する「仲間につなぐ」。福祉・介護・医療関係者と協力して地域の方々にケアを行う「地域につなぐ」を掲げています。そして看護師として成長し、専門性の高い看護を提供していく「わたしの看護」も重要です。知識・技術は臨床現場で学べますが、大切なことは患者さんの立場に立ってその思いを尊重し、看護を実践することです。私たちはこうした看護師を育成したいと考えています。

学生にメッセージをお願いします。

 看護は知識・技術の習得だけでなく、一人ひとり違う患者さんと向き合うことができる職業です。難しいこともありますが、やりがいのある仕事です。
 看護師には人間性が必要で、どんなにAIが発達してもカバーしきれない、個々の患者さんについて考えることが大切です。いつの時代になっても看護はなくならない職業だと思いますので、そこを担う看護師としての誇りとプライドを持って目指してください。
 学生時代は学びも遊びも大切にしてください。そして看護への熱い思いを忘れずにいてほしいと思います。看護師として活躍できる場は用意していますので、ぜひ一緒に看護師としての人生を歩みましょう。

東京都立多摩南部地域病院

[住所]〒206‒0036 東京都多摩市中沢2‒1‒2

当院は都立病院の中では287床と小規模のため、職員間の垣根も低く、医師や看護師だけでなく、多職種同士が声をかけやすい風土があります。チーム全員で地域の生活者としての患者さんを大切に、医療・看護を提供しています。

Profile プロフィール

つじ まゆみ

東京都立医療技術短期大学看護学科、専攻科地域看護学専攻を卒業し1994年東京都に入職。2021年「認定看護管理者」取得。都立墨東病院、都立駒込病院、都立松沢病院、都立駒込病院を経て2023年より現職。

都立病院は新人からベテランまで、幅広い年代が働き続けられることが特徴です。一人ひとりのライフイベントに合わせた多様な働き方が可能です。

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