患者さんの思いをくみ取ることで
声かけの大切さを学ぶ
主任 当院は2024年4月に大学の付属病院としてオープンした地域密着型の急性期病院です。クリニカルラダーに合わせたプログラムがあり、フィジカルアセスメントなど急性期の学習だけでなく、退院後を見据えたアセスメントを重視した教育体制が整っていることも特徴です。Aさんは入職からこれまでを振り返ってどうでしたか。
A 初めは業務をこなすだけで精一杯でした。当院はPNS(パートナーシップ・ナーシング・システム)を導入しているため、先輩と一緒にベッドサイドでケアを行えたことは心強かったです。その場で不明点を確認できたり、先輩の看護を間近で見られたりすることで学びにつながりました。
主任 ベッドサイドで直接指導することによって技術を深め、協力してケアを提供することで、より良いケアが実現できます。入職時は目の前の業務に集中していた新人たちが患者さんの言葉に耳を傾けられるようになり、成長を感じています。患者さんとの関係で印象に残っていることはありますか。
A 1年目の夜勤時、トイレで排便を失敗した高齢の患者さんがいました。「ごめんなさい」と謝罪をくり返しており、自尊心が傷ついているのではないかと思ったため「大丈夫ですよ。スッキリしましたね」と声かけを行うと、「ありがとう」と安心した様子で言ってくれました。声かけ1つで患者さんの気持ちも変わることを改めて認識しました。患者さんの気持ちを理解し、寄り添うことの大切さを今でも心に刻んでいます。
退院前訪問で見えてきた
患者さんの生活を考えた看護の実践
主任 当院では退院支援看護師や医療ソーシャルワーカーなど、多職種が連携して入院前から退院後まで継続的な支援を行っています。退院前後に、病棟看護師と一緒に患者さんのご自宅を訪問し、患者さんとご家族の希望や不安を把握して、生活の環境を整えていきます。以前Aさんとも同行しましたが、どんな印象でしたか。
A 受け持っている患者さんの自宅訪問は初めてでしたが、主任がどのような視点を持って情報収集を行い支援しているかを学びました。病院と自宅では個々の患者さんの環境も異なりますし、患者さんやご家族が希望する生活の実現に向けて支援することも看護師の役割であることを知りました。
主任 各病棟では退院支援のリンクナースを中心に退院前・退院後の患者さんの生活を、どんな視点で見れば良いかなどの勉強会を開催しています。Aさんも同行時、「病棟に戻り、患者さんの生活を踏まえてどんな看護を行えば良いか考えたい」と言っていましたね。多くの学びがあったのではないでしょうか。今後の目標はありますか。
A 5年目までにリーダー業務や病棟全体の看護技術の底上げを目的とした役割を担うクリニカルコーチを経験し、全体を見据えた看護を行うことが目標です。
主任 Aさんはケアの提供だけでなく、患者さんの思いをくみ取る力があると思います。今後も自分の価値観だけでなく、患者さんを取り巻く環境や家族に目を向け、広い視野で物事を捉え、大きな気持ちを持って看護を提供してほしいと思います。