看護師国試対策|温罨法の効用と効果、適切な実施方法、温罨法の禁忌や実施時の注意点とは?

看護師国試対策|温罨法の効用と効果、適切な実施方法、温罨法の禁忌や実施時の注意点とは?

最終更新日:2024/01/31

血流を促進し、痛みを和らげたり腸蠕動を促す効果があるといわれる温罨法。患者さんにも喜ばれ、スキンシップもとれることからやりがいのある看護技術の一つです。ここでは、温罨法の効用と効果、適切な方法、禁忌や注意点をまとめました。

問題 湯たんぽによる温罨法で適切なのはどれか。

  1. 湯の温度は90℃以上とする。
  2. 湯を湯たんぽの口まで入れる。
  3. ビニール製のカバーを用いる。
  4. 皮膚面から10cm程度離して使用する。
  5. [第109回看護師国家試験より]

解答・解説

1.(×)ゴム製湯たんぽの場合は60℃までの湯、金属製の場合は80℃までの湯とします。

2.(×)湯量は2/3程度とし、空気を抜いて使用します。

3.(×)ビニール製のカバーでは溶けてしまう可能性があります。

4.(〇)湯たんぽは、低温熱傷の危険性を考え、患者の身体から10cm以上離して使用します。

Point:湯たんぽには低温熱傷のリスクあり

覚えておきたい|温罨法の効用と効果

温罨法は、身体の一部に温熱刺激を与え、血流を増加させることで疾病の回復や症状の軽減をもたらす看護技術です。

慢性関節リウマチや変形性関節症など、慢性的な関節炎をもつ患者さんは、関節を動かし始めたときの痛みが強いので、温湿布(温める作用を持つ、テープタイプの貼付剤)やホットパックなどで関節を温め、痛みを緩和させてから動かすようにしています。

また、腸の動きが悪くて排便や排ガスが出にくい患者さんに対しても、腹部に温パップ(温める作用を持つ、ジェルタイプの貼付剤)やホットパックをあてることもよくあります。温罨法によって、腹部の血流が良くなるのは安楽であり、副交感神経が刺激され、腸蠕動が促進されるのです。

足浴や手浴は清潔も兼ねた温罨法ですが、看護師が直接触れてケアするため、患者さんが心を開きやすく、普段より話が弾み、信頼関係が深まるといったことはよく経験されることです。

表1 温罨法の種類と目的表1 温罨法の種類と目的

温罨法をしてはいけないケースとは

温罨法は手軽に行える看護技術ですが、その禁忌についても知っておく必要があります。

温罨法は、血流を促進させる効果があるため、血流を促進させたくないケースでは禁忌となります。例えば急性炎症です。

急性炎症では、障害された部位から痛み物質が放出されたり、局所の血管が拡張して血液が集まり、白血球が多数遊走したりしています。その結果として、発赤、腫脹、熱感、疼痛、機能障害などの炎症反応が出現します。このとき温罨法によって血流をさらに増やしてしまうと、炎症反応はさらに悪化してしまいます。

炎症反応による苦痛を緩和するには、むしろ冷罨法を行って血管を収縮させ、血流減少させることが重要です。術後の創部痛にも温罨法は禁忌です。血流を増加させる効果のある温罨法は、術後の再出血を誘発する危険性があるからです。

適切な湯たんぽの温度と湯の量

湯たんぽの適切な湯の温度や量は、湯たんぽの材質によって異なります。家庭では熱湯を湯たんぽに注いでいる場合もあるかもしれませんが、どの湯たんぽでも熱湯を入れてはいけません。また低温熱傷を避けるために、湯たんぽには、必ず専用の布製のカバーをかけ、身体から10cm以上離し、痛みを感じにくい麻痺側には使用しないことが重要です。

表2 湯たんぽの材質・湯の温度・量表2 湯たんぽの材質・湯の温度・量

エピソード|湯たんぽを入れて眠って低温熱傷

わたしが幼稚園の頃の話です。夜になると冷え込むので、母が湯たんぽを準備してくれました。わたしは湯たんぽを両足のあいだに挟むのが習慣で、その日もそうして眠りました。

翌朝、わたしはパジャマがビチャビチャに濡れているのに気づいて飛び起きました。「オネショでもしちゃったのかな」と思いましたが、どうもそうではありません。右足のふくらはぎの内側に巨大な水疱があり、それが破れていたのです。やけどです。痛くもかゆくもないやけどなのです。やけどは深くえぐれていて、えぐれた底の部分が白っぽくなっていたのを記憶しています。

温罨法で気をつけなければならないのは「低温熱傷」です。一般的なやけどは、熱源が70℃以上で起きますが、痛みでとっさに熱源から離れるため、大抵、浅いやけどで済みます。しかし低温やけどは44℃でも起き、この場合は「温かくて気持ちいい」くらいにしか感じない場合も多いため、3~4時間そのままにした結果、深いやけどになってしまうことがあるのです。

図1 熱傷の深さ(Ⅰ~Ⅲ度)と症状図1 熱傷の深さ(Ⅰ~Ⅲ度)と症状

熱傷(やけど)は深さによって分類されています。

損傷の深さが表皮のレベルはⅠ度(発赤)真皮のレベルがⅡ度(水疱)です。真皮は厚い層なので、さらにⅡ度浅達性(水疱の底がピンク色)と、Ⅱ度深達性(水疱の底が白色)に分類されます。熱傷が皮下組織に及ぶとⅢ度となります。ちなみにⅠ度とⅡ度浅達性の熱傷は痛みを伴います。なぜなら痛みを感じる「自由神経終末」という受容器は、表皮と真皮の浅い部分に存在し、浅い熱傷では受容器が生きているからです。

これがⅡ度深達性やⅢ度となると、自由神経終末は熱で壊れてしまっているため、痛みを感じなくなります。また、深い熱傷ほど白っぽく見えます。これは皮膚の下の脂肪組織が透けて見えるためです。

わたしのやけどは、症状から深達性Ⅱ度と判断され、家でやけどの薬を塗って治しましたが、傷口がふさがるまでに1か月くらいかかりました。また、やけどの跡は消えることなくいまだに残っています。

子どもや高齢者は皮膚が薄く、低温やけどが重症化しやすいと考えられます。また意識障害や麻痺がある患者さんは、自分に迫った危険に自分で対処することができません。安楽目的の湯たんぽが事故の原因とならないように十分に注意しましょう。

執筆者情報

プロフィール画像

廣町 佐智子

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<日本看護研究支援センター 所長> 看護系短大・大学での教員経験ののち、2002年より日本看護研究支援センターにて、臨床看護師の看護研究指導に従事。同時に、解剖学や看護師国家試験対策の非常勤講師として、全国の看護学生の指導も経験。国家試験のすべての領域についてのわかりやすい指導には定評がある。