看護師国試対策|ショックとは、ショックの種類とメカニズム、種類によって異なるショックの症状

看護師国試対策|ショックとは、ショックの種類とメカニズム、種類によって異なるショックの症状

最終更新日:2024/05/14

患者さんの急変時には、ショック状態を呈していることが多くなります。ショック状態では、身体の重要な臓器が機能不全を起こし、放置すれば命が危ぶまれる危機な状態です。医療従事者としてきちんと知っておきたいショックについて解説します。

問題 ショックはどれか。

  1. 顔面が蒼白になる。
  2. 皮膚温が低下する。
  3. 心拍数が増加する。
  4. 血圧が維持されない。
  5. [第103回看護師国家試験より]

解答・解説

1.(×)顔面が蒼白にならないショックもあります。

2.(×)皮膚温が上昇するショックもあります。

3.(×)心拍数が低下するショックもあります。

4.(〇)血圧が維持されないのがショックの本質と言えます。

Point:ショックの本質は血液がまわらないこと

覚えておきたい|ショックとは

一般の人々が「ショック」と聞くと、心理的な衝撃のことをイメージすると思います。しかし、医学的なショックとは、血圧が維持されず(一般的に収縮期血圧が90mmHg以下のことをさす)、重要臓器にすら血液が十分にまわらない状態をいいます。

ちなみに重要臓器とは、心臓の近くに配置されている、生存に欠かせない臓器のことです。具体的には心臓、脳、肺、肝、腎の5つをさします。ショック状態では、血圧が低下するほど心臓から遠い順に血流がまわらなくなっていき、放置すれば死に至る危険な病態です。

ショックのメカニズム

ショックには、大きく分けて4つの種類があります。これを学ぶのに役立つのが、「血圧」についての知識です。

皆さんは、「血圧=心拍出量×末梢血管抵抗」という式を知っていますか。血圧の決定因子は、心拍出量と末梢血管抵抗だという式です。このうち心拍出量は、「心臓の収縮力・心拍数」と「血液量」に規定されます。また末梢血管抵抗は、主に「末梢血管の収縮・拡張」によって規定されます。

血圧の知識を踏まえると、血圧が上がるのは、(1)心収縮力が強かったり心拍数が多かったりするとき、(2)血液量が多いとき、(3)末梢血管が強く収縮するとき(これを「末梢血管抵抗の上昇」という)だとわかります。ショックとは、血圧が維持されず臓器に血液が十分にまわらない状態ですから、(1)~(3)の逆を考えればいいのです。

ショックの種類

(1)心臓の収縮力・心拍数の低下を原因とするのが「心原性ショック」、(2)循環血液量の減少を原因とするのが「循環血液量減少性ショック」、(3)末梢血管の拡張を原因とするのが「血液分布異常性ショック」といいます(図1)。また、心臓は元気なのに血管が詰まって心臓への血流が悪くなったり、元気な心臓が外側の空気や水分で圧迫され、身動きできなくなったりする「心外閉塞・拘束性ショック」もあります。

図1 血圧のしくみとショック図1 血圧のしくみとショック

このうち、(3)「血液分布異常性ショック」は、少し難しく感じるかもしれません。これは末梢(手足)の血管が拡張し、そこに血液が集まってしまうために、重要臓器に流れる血液が減ってしまうというショックです。このショックでは血液の分布が異常を示している状態なので、「血液分布異常性ショック」という名前です。ショックの種類と原因は図2のようにまとめられます。

図2 ショックの種類と原因図2 ショックの種類と原因

引用:木下佳子「ショックの定義、症状、診断基準と見極め」

ショックの定義と共通する症状

このようにショックの定義は、「血圧低下による重要臓器の循環不全」です。血圧低下は必ず起こり、循環不全のために頻脈になります。また意識が混濁するなど精神状態に変化が起こります。ショック時は重要臓器のなかでも、心臓から遠い腎臓の血流が減少することから尿量が減少します。これらがすべてがショックに共通する症状です。

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エピソード|ショックによって異なる症状

わたしは10年前、出血性胃潰瘍で大量に吐血し、救急搬送されたことがあります。救急車内での血圧は84/40mmHg。「ああ、やばい。ショック状態だ~」と自分で思いました。救急隊員は慌てて「ここ、どこだかわかりますか?」「お名前は?」と意識レベルを確認してきます。大丈夫、84/40mmHgくらいなら、まだ脳への血流は十分維持されているはず。そのときのわたしは、血圧が下がっていることを体内のセンサーが感じ取って、さまざまな対策がなされることを感じ取っていました。

いちばん早く対応したのが交感神経系です。交感神経が刺激されると、心拍数が上昇し、末梢血管が収縮して顔面や手足が冷たく、色も蒼白になります。すべて血圧を上げてこの難局を乗り切ろうとする身体の努力なのです。わたしが経験したのは循環血液量減少性ショックですが、心原性ショックでも交感神経系による反応はすぐに出現します。

いっぽう、顔面が発赤し、体温が上昇するショックもあるので注意です。血液分布異常性ショックの中の「敗血症性ショック」がそれです。敗血症とは、血液が感染する重症感染症です。感染症であるため高熱が上がり、原因菌の多くであるグラム陰性桿菌の毒素によって、末梢血管は拡張し、顔面や手足が紅潮します。そのため「ウォームショック」とも呼ばれています。

脈拍数が減少するショックもあります。血液分布異常性ショックの中の「神経原性ショック」です。この名前の「神経」は交感神経と副交感神経からなる「自律神経系」をさします。ライブ中に失神してしまう人などがこのショックに該当します。ライブに興奮して交感神経系が強く刺激されると、激しく血圧が上昇し、それを「危険」と判断した脳が、副交感神経系(リラックスモード)に反射的に切り替えてしまうために起こります。その結果、徐脈と末梢血管拡張が起こり、血圧が下がってショック状態で倒れてしまうのです(※この場合は、安静にすれば回復します)。

病院で「急変です!!」という場合の多くは、患者がショック状態に陥ったときをさします。ショックは種類によって症状が異なるので、どのショックなのか見極めて、適切な援助ができるようにしていきたいですね。

執筆者情報

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廣町 佐智子

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<日本看護研究支援センター 所長> 看護系短大・大学での教員経験ののち、2002年より日本看護研究支援センターにて、臨床看護師の看護研究指導に従事。同時に、解剖学や看護師国家試験対策の非常勤講師として、全国の看護学生の指導も経験。国家試験のすべての領域についてのわかりやすい指導には定評がある。