看護師国試対策|サーカディアンリズムとは、覚醒・睡眠のメカニズムと関係するホルモン

看護師国試対策|サーカディアンリズムとは、覚醒・睡眠のメカニズムと関係するホルモン

最終更新日:2024/05/14

生物はおよそ24時間周期で覚醒と睡眠を繰り返して生きています。この周期的なリズムをサーカディアンリズムといい、脳内で分泌されるいくつかのホルモンが影響を与えています。わたしたち人間はどのようにこのリズムを獲得しているのか、どのようなしくみで覚醒・睡眠が起こるのかを解説します。

問題 サーカディアンリズムの周期はどれか。

  1. 約8時間
  2. 約12時間
  3. 約24時間
  4. 約48時間
  5. [第102回看護師国家試験より]

解答

1.(×)

2.(×)

3.(〇)

4.(×)

Point:朝の光の重要性を理解しておく

解説  “M君のエピソードから”

サーカディアンリズムとは、生物がもっている約24時間周期のリズムのことをいいます。サーカディアンリズムを作るきっかけとなるのは朝の光です。朝の光がサーカディアンリズムに影響を与える例をM君のエピソードから紹介します。

わたしは以前、長らくボーイスカウトのカブスカウト隊(小学生中・高学年の隊)のリーダーをやっていました。わたしの所属する団では、毎年8月中旬に夏期キャンプが開催されていました。しかし毎年この時期になると、体調を崩している子どもが出てきます。

学校に行くことで作られていた生活リズムが、長期休みで夜更かし・朝寝坊に完全にシフトしてしまうのです。皆さんにも少し身に覚えがあるのではないでしょうか。M君(小学2年生)はそれが極端で、昼夜逆転に近い状態でキャンプに参加してきました。

キャンプ初日のM君は、睡眠不足のためにすべての野外プログラムに気持ちが乗らず、ウトウトしていました。そこで、初日は昼間からM君をテントで休ませることにし、ほかの子どもたちと同じように遊ばせるのは翌日からとしました。

キャンプ場の朝は早く、4時くらいから白々と明るくなり、6時にはすっかり明るくなってしまいます。テントの中で眼を閉じていても、その光の変化が分かります。6時の「起床!」の合図を待つまでもなく、自然に光の刺激で覚醒します。

M君も翌日はこの光で自然に起きたようです。前日しっかり眠ったことも手伝って、すっきりとした表情でキャンプに楽しむことができました!

覚えておきたい|コルチゾールとメラトニンの働き

図1 視交叉上核の位置図1 視交叉上核の位置

人間の身体は地球環境が受ける光による明暗サイクルに同調するようにできています。朝の青白い光が網膜に入り、この情報が間脳の視交叉上核に入ると、交感神経系が刺激され、副腎皮質からコルチゾールの分泌が増加して、身体が活動モードに切り替わります。具体的には体温や血圧が上昇し始めます。夏のキャンプ場では、朝の4時ころからこの反応が始まります。

朝の光情報が視交叉上核に入って約15時間後には、間脳の松果体からメラトニンの分泌が始まります。メラトニンはコルチゾールとは反対に、体温を徐々に下げる効果があり、身体をお休みモードに切り替えます。キャンプでは、毎夜、子どもたちを早く寝かせて、リーダーたちは焚火を囲んで反省会と称した飲み会を行います。ただわたしの場合は、その時間にはメラトニンの影響か、とっくにお休みモードに入ってしまうので、眠くてロクに飲み会に参加できていないのが実情です。

睡眠と成長ホルモンとの関係

睡眠には浅い眠りのレム睡眠と、深い睡眠のノンレム睡眠がありますが、ノンレム睡眠のうち、最も深いレベルの睡眠のときに、下垂体前葉から成長ホルモンが分泌されます。成長ホルモンは、日中に消耗したり傷ついた身体を修復したり、子どもであれば成長を促したりします。

深夜、テントを巡回すると、子どもたちがすやすやと眠っています。キャンプの経験が彼らの心身の成長に結びつくことを期待します。

図2 睡眠と覚醒に関するさまざまな体内リズム図2 睡眠と覚醒に関するさまざまな体内リズム

豆知識|うつ病の回復には睡眠・覚醒リズムの調整が重要

楽しいキャンプから戻ると、あわただしい日常が待ち構えています。考えてみると、普段のわたしたちは、睡眠・覚醒リズムに逆らうようなことばかりしていますね。例えば寝る間を惜しんで夜の繁華街で遊んだり、深夜までコーヒーがぶ飲みでパソコンに向かったり・・・。わたしも若い頃は体力があったので、無茶苦茶な生活をしていました。

しかし地球環境のもつ24時間のリズムに逆らい、睡眠不足が慢性化すると、さまざまな健康障害が引き起こされます。疲労からの回復や身体の修復に悪影響が生じるばかりでなく、「うつ病」を発症することもあるのです。

うつ病は、急性期には投薬治療を行ってしっかり休んでもらうことが重要ですが、回復期には「生活リズム(24時間周期のサーカディアンリズム)の調整」が重要な課題となります。そのためには、起きる時間を固定し、朝の青白い光をしっかり浴びるようにします。日中は、病状に応じて無理のない日課(買い物や料理や掃除、または運動。余裕があれば人と会う)を組み込んでいきます。人間の睡眠覚醒リズムを作るのは、光だけでなく、軽い運動や日課も含まれるためです。

夕方から夜にかけては、強い光を見ないように気をつけます。これらを何日も続けていくうちに、うつ病患者の場合は少しずつ気力や体力が回復してきて、「何かやってみたい」という意欲が出てくることが多いようです。

皆さんも、健康でいられるのは毎日定時に起きて学校に通っているからだと思います。週末や長期の休みに調子を崩しやすいという人は、せめて起きる時間を平日と同じようにするとよいでしょう。そして家に閉じこもらず、なるべく外に出て光を浴びてくださいね。

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執筆者情報

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廣町 佐智子

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<日本看護研究支援センター 所長> 看護系短大・大学での教員経験ののち、2002年より日本看護研究支援センターにて、臨床看護師の看護研究指導に従事。同時に、解剖学や看護師国家試験対策の非常勤講師として、全国の看護学生の指導も経験。国家試験のすべての領域についてのわかりやすい指導には定評がある。