看護師国試対策|眼球の構造と視覚のしくみ、視覚障害の種類とメカニズム

看護師国試対策|眼球の構造と視覚のしくみ、視覚障害の種類とメカニズム

最終更新日:2024/05/14

視覚情報を受け取り、脳に伝える受容器である「眼球」。眼球には、外部から入る視覚情報を捉える多くの組織が存在し、それぞれに役割を担っています。ここでは、視覚のしくみとともに、近視・遠視や白内障など、視覚に生じる一般的な視覚障害の種類と原因について簡単に紹介します。

問題 光を屈折する眼の構造はどれか。

  1. 結 膜
  2. 角 膜
  3. 強 膜
  4. 網 膜
  5. [第103回看護師国家試験より]

解答・解説

1.(×)→結膜には、眼瞼(まぶた)の内側を覆う眼瞼結膜と、眼球前面の強膜を覆う眼球結膜とがあります。不透明な膜で光の屈折には関与していません。

2.(〇)→角膜は眼球前方に突き出た透明な膜で、凸レンズの働きをし、光を屈折させる作用があります。

3.(×)→強膜は角膜の後方にある白い膜で、一般に白目といわれています。不透明な膜なので、光の屈折には関与していません。

4.(×)→網膜は3層になっている眼球壁の内側の一番奥に存在し、光の受容器である視細胞が並んでいます。網膜は光の焦点が結ばれる場所であり、光の屈折には関与していません。

Point:眼球の構造と視覚のメカニズムを理解しよう

図1 眼球の構造図1 眼球の構造

眼球は、光や色彩などの視覚情報を受け取る受容器です。そこには、光の通り道と、光を通さない部分が存在します。まずは、光の通り道からみていきましょう。

覚えておきたい|眼球内の光の通り道

光は、角膜、瞳孔、水晶体、硝子体を経て網膜に至ります。網膜には光や色彩の情報を受け取る視細胞が並んでおり、特に「中心窩(黄斑の中心にあるくぼみ)」に集中しています。この中心窩に焦点が合うように、光を屈折させるのが、角膜と水晶体です。

角膜も水晶体も凸レンズの働きをします。水晶体にはチン小帯というヒモのようなものが付いており、これを引っ張ったり緩めたりして水晶体の厚みを調整するのが毛様体という筋肉です。

図2 視覚のしくみ図2 視覚のしくみ

眼球内の光の通らない部分とは

眼球には、光を通す部分がある一方で、光を通さない部分もあります。網膜の外側にある脈絡膜と、その延長上にある毛様体と虹彩です。虹彩は、眼球に入る光の量を調節します。脈絡膜は、眼球に入った光が外に漏れないように遮断する役割があります。

脈絡膜と毛様体、虹彩は、色素と血管が豊富な一続きの膜です。この膜を「ぶどう膜」といいます。ぶどう膜の色は、人種によって異なり、アジア人の場合は褐色です。虹彩の色が褐色であれば、脈絡膜も褐色です。褐色のように濃い色であれば、強い光を遮ったり、眼球に入った光をしっかり閉じ込めたりすることができます。

一方、虹彩が緑色や青など薄い色の場合は、脈絡膜も同様の色であるため、強い光を遮ったり、逃がさないようにしたりする力が弱いといえます。薄い色の虹彩をもつ欧米の人々にとって、強い光はまぶしすぎるため、目を守るサングラスが必要になります。

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豆知識|視力障害のいろいろ

視覚障害にはさまざまなことが原因でおこります。ここからは光の通り道にある原因がある視覚障害と、屈折の異常によっておこる視覚障害について解説します。

光の通り道に原因がある障害

光の通り道が老化や病気で変性したり傷ついたりすることによって透明度が下がると、視力が低下します。角膜の炎症や外傷、老化によって角膜が混濁すると、はっきりものが見えなくなります。水晶体が混濁する白内障も霧がかかったような見え方になります。

炎症によって硝子体が混濁すると、視野の中に浮遊物が見えるようになります。光が到達するゴールである網膜に問題があると視力が低下します。

老化により網膜が劣化し、剥がれると網膜剥離となります。視細胞が集中する中心窩(黄斑の中心にあるくぼみ)の変性は、加齢黄斑変性といわれます。

エピソード│網膜の老化によって起こる症状

網膜の老化といえば、子どもが小学生に上がる頃、一緒にランドセルを買いに行ったときのことを思い出します。「ママ、これにする」と息子が指さしたのは、黒のランドセル。「まこちゃんは黒がいいのね」と言うと、「ママ、これ紺だよ」と言われてしまいました。

老化すると、青色を感じる視細胞がまず劣化し、微妙な青色の違いを見分けにくくなるそうです。これを応用して、高齢者施設では、お部屋の目印に赤やオレンジ、ピンクの花の目印がついていたりします。寒色に比べ暖色を感じる視細胞の方が劣化しにくいのです。

中心窩に焦点が合わなくなる屈折の異常

中心窩(黄斑の中心にあるくぼみ)に焦点が合うように角膜と水晶体で光を屈折できれば、像はクリアに見えます。しかし、中心窩の手前で焦点が合ってしまったり(近視)、後ろで合ってしまったり(遠視)すると、像がぼやけてしまいます。

原因は、角膜や水晶体の屈折異常のほか、水晶体の厚みを調整する毛様体が固くなったり、眼球の構造に異常があったりとさまざまです。

図3 近視と遠視図3 近視と遠視

屈折異常を矯正するには、別のレンズをプラスするのが一般的です。最も簡単なのは眼鏡です。近視では凹レンズを用いて、焦点の位置を後ろに調整します。遠視の場合は反対に凸レンズを用います。レンズを直接角膜の上に載せてしまうコンタクトレンズもありますね。このほかに、角膜をレーザーで削って形状を変え、屈折異常を矯正する「レーシック」という方法もあります。

わたしは若いころ、一時期、コンタクトレンズにしていたことがありましたが、看護師をしながらコンタクトレンズの管理をすることが自分には難しく、何回か角膜炎(痛い!)を起こしてしまった結果、角膜が混濁するのを恐れて、元の眼鏡に戻しました。現在は、眼鏡の似合う素敵なおば様になったと思います(?)これからも眼を大切にしていきたいと思います。

執筆者情報

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廣町 佐智子

hiromachi-sachiko

<日本看護研究支援センター 所長> 看護系短大・大学での教員経験ののち、2002年より日本看護研究支援センターにて、臨床看護師の看護研究指導に従事。同時に、解剖学や看護師国家試験対策の非常勤講師として、全国の看護学生の指導も経験。国家試験のすべての領域についてのわかりやすい指導には定評がある。