看護師国試対策|心臓から出る血管、心臓に入る血管、動脈と静脈の違い

看護師国試対策|心臓から出る血管、心臓に入る血管、動脈と静脈の違い

最終更新日:2024/05/14

血液には、心臓を中心として肺に出て肺から戻ってくる「肺循環」と全身に出て全身から戻ってくる「体循環」があります。また血液を流す血管には、部位により役割があり、役割により構造が異なります。今回は「体循環」を中心に、血液の流れと役割、そして血管の役割と構造を解説します。

問題 左心室から全身に血液を送り出す血管はどれか。

  1. 冠状動脈
  2. 下大静脈
  3. 肺動脈
  4. 肺静脈
  5. 大動脈
  6. [第103回看護師国家試験より]

解答・解説

1.(×)→冠状動脈は、大動脈から分岐する最初の動脈で、心臓を栄養する(心臓そのものに血液を送る)栄養血管です。

2.(×)→下大静脈は、下半身からの静脈血を集めて右心房に送る静脈です。

3.(×)→肺動脈は、右心室から肺に向けて静脈血を送り出す動脈です。

4.(×)→肺静脈は、肺から左心房に向けて動脈血を送り出す静脈です。

5.(〇)→左心室には大動脈がつながっています。大動脈は分岐して全身の各臓器に血液を配分しています。

Point:心臓につながる動脈・静脈の名前を覚えよう

図1 心臓につながる動脈・静脈図1 心臓につながる動脈・静脈

覚えておきたい「動脈」と「静脈」の名づけ方

動脈」は心臓から末梢に血液を送る血管です。

静脈」は末梢から心臓に血液を送る血管です。

動脈と静脈の区別は、血液の流れる方向で規定されています。流れる血液の性状(動脈血か静脈血か)とはまったく関係ありません。上の図でいえば、肺動脈は心臓から肺に血液を送り出す血管なので動脈の名がついています(ちなみに肺動脈の中を流れる血液は静脈血です)。

大動脈から毛細血管まで、構造と役割の違い

静かに目覚めた朝などに布団のなかで、心臓の拍動音と「シュンシュン」という大動脈を流れる血液の音を感じることはありませんか? ほんとうにかすかな音なのですが、この音を聞くと自分が生きていることを実感します。

左心室から出る血液の勢いは右心室の5倍はあります。ものすごい勢いなので大動脈は丈夫にできていなければなりません。

血管は、内膜・中膜・外膜の三層から成りますが、大動脈では真ん中の膜(中膜)にクッション性のある弾性繊維がたくさん含まれていて厚みがあり、衝撃に耐えられるようになっています。そのため、弾性動脈ともいいます。

大動脈は、各臓器に血液を分け与えるために、筋性動脈やさらに細い細動脈に分岐します。筋性動脈や細動脈は、中膜内に平滑筋が発達しています。平滑筋は収縮・弛緩によって血管の太さを調節し、臓器に流れ込む血流量を調節することができます。

大動脈から細動脈までの役割は、血液の運搬でしたが、これらの先には毛細血管があります。毛細血管は動脈でも静脈でもなく、組織(細胞のあつまり)のあいだに張り巡らされていて、その役割は組織の間の物質交換です。

毛細血管の壁は一層しかなく、小さな孔が開いており、酸素や栄養分が染み出たり、組織からの老廃物を再吸収(血管に再び入れること)したりできるのです。

図2 血管による役割と血管壁の違い図2 血管による役割と血管壁の違い

「栄養血管」と「機能血管」

心臓から末梢に向かうのか、末梢から心臓に向かうのかで、血管には「動脈」「静脈」という言い方があることについてはすでに説明しました。

このほかに、各臓器が酸素や栄養をもらう血管か、その臓器の機能(はたらき)を支える血管かで、「栄養血管」「機能血管」という分類の仕方があります。ちなみに「栄養血管」はすべて大動脈から分岐しています。

心臓を例に挙げると、「栄養血管」は、大動脈の最初の分岐である冠状動脈です。心臓は自分で送り出した酸素や栄養がたっぷりの動脈血を、真っ先に自身がもらっているのです。一方で心臓の「機能血管」は、ポンプ機能を支える上大静脈、下大静脈、肺動脈、肺静脈、大動脈です。

これが肺の場合では、「栄養血管」は気管支動脈となり、肺が行うガス交換を支える肺動脈、肺静脈が「機能血管」となります。

肝臓には、消化管で吸収された栄養素(単糖、アミノ酸、脂肪酸、モノグリセリド)が運び込まれる「門脈」という静脈があります。門脈には栄養素がたくさん含まれますが、「栄養血管」ではありません。この栄養は肝臓が利用するのではなく、肝臓の働きである代謝(人体に必要なものを合成・分解すること)のための「材料」なのです。そのため、門脈は「機能血管」なのです。ちなみに肝臓の「栄養血管」は固有肝動脈です。

腎臓は汚れた血液を浄化する場所です。汚れた血液は腎動脈を通って腎臓に入ってきます。つまり腎動脈は腎臓にとっての「機能血管」なのです。と同時に、腎動脈は腎臓が利用する酸素や栄養素も運搬しているのです。したがって、腎動脈は「機能血管」であるとともに「栄養血管」でもあるのです。

機能血管と栄養血管

機能血管:臓器の機能にかかわる血管
栄養血管:臓器に酸素と栄養素を送る血管
臓器 機能血管 栄養血管
心臓 右心房 上大静脈、下大静脈 冠状動脈
右心室 肺動脈
左心房 肺静脈
左心室 大動脈
肺動脈、肺静脈 気管支動脈
肝臓 門脈 固有肝動脈
腎臓 腎動脈 腎動脈

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豆知識|大動脈から分岐の順番は人体にとって重要な順番

大動脈は、分岐して各臓器に栄養や酸素がたっぷりの血液を配分します(大動脈からの分岐はすべて栄養血管です)。その分岐が心臓に近いほど、人体にとって欠かせない臓器であることを意味します。大動脈の最初の分岐は、心臓の栄養血管である冠状動脈であることはすでに説明しました。

次の分岐は、弓部大動脈にあります。腕頭動脈、左総頸動脈、左鎖骨下動脈です。これら3本の動脈は全て脳を栄養しています。冠状動脈や脳に血液を送る3本の動脈は、万が一血圧が極端に下がるようなことがあっても、最後まで血流が維持されるようになっています。動脈の分岐にもひとつ一つ合理的な意味があるのですね。動脈の分岐はしっかり学んでおくべきポイントです。

図3 心臓に近い栄養動脈図3 心臓に近い栄養動脈

執筆者情報

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廣町 佐智子

hiromachi-sachiko

<日本看護研究支援センター 所長> 看護系短大・大学での教員経験ののち、2002年より日本看護研究支援センターにて、臨床看護師の看護研究指導に従事。同時に、解剖学や看護師国家試験対策の非常勤講師として、全国の看護学生の指導も経験。国家試験のすべての領域についてのわかりやすい指導には定評がある。