看護師国試対策|止血の仕組み、血液凝固と凝固因子

看護師国試対策|止血の仕組み、血液凝固と凝固因子

最終更新日:2024/05/14

出血から人体を守る止血のメカニズムは非常に巧妙で複雑です。血管が破れると、血管と血液の成分が次々に段階的に反応を起こして出血を止め、生命を守ります。またこのメカニズムを応用すれば、検査用に採血した血液を固まらせない方法もわかります。今回はこれら止血の仕組みを解説します。

問題 血液凝固に関連するのはどれか。

  1. ヘモグロビン
  2. フィブリノゲン
  3. マクロファージ
  4. エリスロポエチン
  5. [第96回看護師国家試験より]

解答・解説

1.(×)→ヘモグロビンは、ヘムという鉄を含む色素と、グロビンというポリペプチドで構成され、赤血球に大量に詰め込まれています。役割は酸素の運搬です。

2.(〇)→フィブリノゲンは血漿タンパクのひとつで、血液凝固の最終段階でトロンビンの作用によってフィブリン(網目状の糊)になり、血液を凝固させます。

3.(×)→マクロファージは白血球のひとつで、体内に侵入した異物を貪食し、異物に関する情報をリンパ球に伝える役割を果たしています。

4.(×)→エリスロポエチンは、酸素不足に反応して腎臓から分泌されるホルモンをさします。エリスロポエチンは骨髄の幹細胞に働きかけ、赤血球への分化を促します。

Point:血液内に存在する成分と働きを知っておこう

覚えておきたい止血のメカニズム

血管が破れて出血が起こると、人体は急いでその破れに栓をして血を止めます。人体はなぜ出血していることがわかり、次々に止血のための反応が起こるのでしょうか。

血管の内壁は、スベスベの内皮細胞に覆われています。血液はこの内皮細胞に接しているときは、固まらずにサラサラと流れています。ところが血管が破れると、内皮細胞がスベスベではなくなり、血管壁の中のコラーゲンなどゴツゴツした構造が露出します。血液はこの状態を「血管が破れた/出血した」ととらえるのです。

一次止血と二次止血

出血したことにまず反応するのは、血管自身です。破れた穴を小さくしようとして収縮を始めます。

こうしているうちに、露出したコラーゲンめがけて、血液による止血が始まります。まず血小板が、ゴツゴツしたコラーゲン部分に次々に引っかかり、あっという間に血小板による血栓が出来上がります。これを「一次止血」といいます。

血小板による止血は完全ではなく、ばらけてしまう危険性があります。そこで血小板のまとまりをしっかり固めなければなりません。そのために網目状の糊であるフィブリンを作ります。フィブリンの合成のスタートもコラーゲンの露出です。

さらに、これをきっかけとして、血液中の凝固因子が次々に活性化していきます。活性化にはカルシウムイオン(Ca2+)の存在が必要です。

この反応の最終段階では、プロトロンビンがトロンビンとなり、トロンビンがフィブリノゲンをフィブリン(網目状の糊)に変化させます。フィブリンは血小板だけでなく、赤血球も含めてしっかり固め、強固な血餅(けっぺい)を完成させます。このフィブリンによる止血を「二次止血」といいます。

図1 一次止血と二次止血図1 一次止血と二次止血

図2 凝固因子による二次止血図2 凝固因子による二次止血

大量出血で血液は凝固しにくくなる

大けがなどで大量に出血しているときは、流れ出る血液を最小限にするのが大原則です。出血が大量になると、生命活動を支える重要臓器(心臓、脳、肺、肝、腎)に酸素が届かなくなるだけでなく、血液凝固がますます困難になってしまうからです。

血液凝固が困難になる理由は二つあります。ひとつは出血によって血小板がどんどん体外に流れ出てしまうため。もうひとつは、血液凝固という化学反応に必要な37.0度という体温が維持できなくなってしまうからです。止血の処置をする際に、傷病者の保温にも気を配るのはそのためです。

なお、看護師が行える止血の方法には、「直接圧迫止血法」「間接圧迫止血法」「緊縛法(止血帯法)」などがあります。傷病者の出血の特徴や部位によって方法を選択します。

\ こちらもチェック! /

国試対策動画

豆知識|「血算」のオーダーが出たら

臨床現場では、血液検査は日常茶飯事です。ちなみに「血算」というのは「全血球計算」の略で、赤血球数、白血球数、血小板数などの検査です。看護師は、検査の内容に応じて血液を入れる試験管を選びます。

血液が血管壁内から露出したコラーゲンに反応して凝固することは、さきほど説明しました。もうひとつ凝固するきっかけがあります。それは、異物に接触したときです。そのため試験管という異物に血液を入れると、すぐに凝固して「血餅」ができてしまいます。血餅になってしまったら、赤血球数や白血球数、血小板数を数えることはできなくなります。それでは検査できませんね。

血液を固まらせずにサラサラのままにするにはどうしたらいいでしょう。凝固因子が活性化するのを邪魔すればいいわけです。複数ある凝固因子のひとつでも邪魔できれば、フィブリンはできません。そこで、血算用の試験管内には、凝固因子のひとつであるカルシウムイオンを取り除く、クエン酸ナトリウムが最初から入っています。

血液を血算用の試験管に入れたら、試験管を静かに動かしてクエン酸ナトリウムと混和します。わたしは新人看護師の頃、緊張のあまりこの混和が不十分で、血算の血液を凝固させてしまい、何度か採血し直ししたことがあります。

患者さんには本当に迷惑をかけてしまいました。失敗を「気にしないでいいよ」と言ってくださった患者さんのお顔が今も眼に浮かびます。

執筆者情報

プロフィール画像

廣町 佐智子

hiromachi-sachiko

<日本看護研究支援センター 所長> 看護系短大・大学での教員経験ののち、2002年より日本看護研究支援センターにて、臨床看護師の看護研究指導に従事。同時に、解剖学や看護師国家試験対策の非常勤講師として、全国の看護学生の指導も経験。国家試験のすべての領域についてのわかりやすい指導には定評がある。