看護師国試対策|腸の働きについて、消化・吸収、便の性状

看護師国試対策|腸の働きについて、消化・吸収、便の性状

最終更新日:2024/05/14

口から摂取した水分や栄養素は主に腸から吸収されることはご存じですね。
それでは「吸収」とは、どんな現象を意味しているか正しく理解しているでしょうか。
また、小腸と大腸の機能の違いはわかりますか?
今回は、看護師国試の過去問からひも解き、「腸の働き」を解説します。
また、腸に関係が深い「人工肛門(ストーマ)」について豆知識として紹介します。

問題 大腸で吸収されるのはどれか。

  1. 脂質
  2. 水分
  3. 糖質
  4. 蛋白質
  5. [第109回看護師国家試験より]

解答・解説

1.3.4.(×)→吸収とは、「血中に入ること」を意味します。そこで吸収されるためには、栄養素が血管壁に空いている小さな孔を通り抜けるほど小さくならなければなりません。

血管を通り抜けられる大きさは、脂質の場合では「モノグリセリドと脂肪酸」、糖質では「単糖」、蛋白質では「アミノ酸」のレベルとなります。このレベルまで小さくする働きを「消化」といいます。栄養素の主な吸収の場は小腸です。小腸ではこのほか、水分・電解質の吸収も行っています。

2.(〇)→小腸で栄養素・水分の吸収が終わると、こんどは大腸で最終的な水分・電解質の吸収が行われます。

Point:栄養素が吸収される主な場所は「小腸」

大腸で吸収される水分は、経口摂取した水分のほかに消化液も含まれます。その量は1ml程度です。この水分の吸収により、上行結腸では液状であった便が横行結腸では泥状に、下降結腸では固形状に変化していきます。

固形状になった便は、S状結腸に溜まっていきます(図1)。

図1 大腸(結腸)内の便の性状図1 大腸(結腸)内の便の性状

現在はほとんど行われていませんが、かつては経口水分摂取が困難で、かつ血管確保が難しく輸液もできないとき、患者さんの直腸から少しずつ生理食塩水を注入して、水分を摂らせる方法を用いていました。少し古い映画などでは、そのようなシーンが見られることがあります。

これは大腸から水分が吸収されるメカニズムを応用したものです。

覚えておきたい「消化液」の体内循環

下痢とは、水分を多く含む便が排泄される状態です。

下痢は、腸蠕動が活発過ぎたり、消化液の分泌の増加などによって、小腸や大腸での水分・電解質の吸収が間に合わないことから起こります。この水分・電解質の一部は消化管に分泌された消化液です。

消化液は、「細胞外液から作られ、小腸・大腸から吸収されて細胞外液に戻る」という循環をしています。そのため、下痢になると、消化液に含まれる水分や、HCO3(重炭酸イオン;アルカリ性)、Na+、K+などの電解質が体外にどんどん排出され、細胞外液の成分に異常が出てきます。異常が著しくなると、神経の中の電気の流れや代謝(合成や分解)に影響が出て、ひどくなれば死に至ります。

そこで下痢がひどいときは、水分だけでなく塩分(Na+)を含んだみそ汁やスープ、水や電解質の補給・維持に適した経口補水液の摂取が有効です。経口摂取が困難な場合は、病院で血液の電解質や水分量の減り具合を調べ、適切な輸液が処方されます。輸液にはさまざまな種類があるので、臨地実習で病棟に行ったときに調べてみてください。

昔の赤痢は脱水で亡くなることも

先日、帰省したとき、母が6歳の頃に「赤痢」にかかったという話を聞きました。戦後すぐのことだったので医療設備も整っておらず、赤痢になった患者は、夏休み中の小学校に隔離されたそうです。

患者たちは板の間に等間隔で寝かせられ、「下痢がひどくならないように」と、水分摂取を制限されたそうです。もちろん点滴もなかったそうです(※この場合の下痢は、赤痢菌を体外に出すための生体反応なので、本来は止めてはいけません。そして下痢で失った水分と塩分を適切に補充することが必要です)。

母と同じフロアで寝ていた高齢者は脱水を起こしたためか、バタバタと亡くなっていったそうです。適切な対処をしていれば助かった命かもしれません。

当の母は奇跡的に回復しました。人間は、水分や電解質が足りなくなったとき、尿として捨てるはずだった水分や電解質の量を調節する力をもっています。母の場合はその力が強かったのかもしれませんね。学校から家に戻るとき、母はお祝いに絹の着物を買ってもらったそうです。

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豆知識|人工肛門(ストーマ)造設術とは

人工肛門(ストーマ)について解説します。

人工肛門(ストーマ)造設術とは、腹壁に便の出口を造設するもので、直腸がん、クローン病(口から肛門までの全消化管に炎症が起こる疾患)、消化管穿孔(消化管に孔が空くこと)の治療法の一部として確立しています。

消化管のどの部位でストーマを造るかで、回腸ストーマ、横行結腸ストーマ、S状結腸ストーマなどと分類されます(図2)。また将来、人工肛門を閉じて元に戻すか戻さないかで、一時的ストーマと、永久的ストーマという分類方法もあります。

図2 ストーマの種類(一例)図2 ストーマの種類(一例)

下部直腸がんの場合、ストーマは一般的にS状結腸に造られます。この部位は、完成した固形状の便が溜まる場所です。食事をきっかけに腸全体の蠕動が起こると、S状結腸に溜まった便も、腹壁から押し出されてきます。その便を腹壁に貼り付けた袋(パウチ)で受け止めます。

ストーマの場所が消化管の上部になるほど、未消化物や水分・電解質が排泄されてしまい、脱水や電解質異常、栄養障害のリスクが高くなります。また、アルカリ性の水様便は固形状の便に比べて処理が難しく、皮膚に付着すると皮膚障害を起こしやすいというリスクもあります。

こうした問題を解決し、患者さんが自立した生活を送れるように患者さんに向き合い、個別に援助する専門家が、皮膚・排泄ケア認定看護師です。排泄という完全にプライベートな行為の尊厳を守る尊い仕事です。将来、みなさんのなかからも誕生することでしょう。

執筆者情報

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廣町 佐智子

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<日本看護研究支援センター 所長> 看護系短大・大学での教員経験ののち、2002年より日本看護研究支援センターにて、臨床看護師の看護研究指導に従事。同時に、解剖学や看護師国家試験対策の非常勤講師として、全国の看護学生の指導も経験。国家試験のすべての領域についてのわかりやすい指導には定評がある。