看護師国試対策|貧血とは? 検査項目、指標と数値、種類と原因は?

看護師国試対策|貧血とは? 検査項目、指標と数値、種類と原因は?

最終更新日:2024/05/14

国試対策を始めるのは早いに越したことはありません。
基礎的な知識は低学年から身につけていきたいもの。そこでこの連載では、国試で出題された基礎科目にあたる「必修問題」の過去問から、基本的な問題をピックアップし、低学年から学んでおきたいことを解説します!
まずは「貧血について」です。

問題 貧血を診断する際の指標となる血液検査項目はどれか。

  1. アルブミン
  2. ヘモグロビン
  3. フィブリノゲン
  4. プロトロンビン時間
  5. [第109回看護師国家試験より]

解答・解説

1.(×)→アルブミンは血漿タンパク質のひとつで、肝臓で作られています。その働きは、栄養源、膠質浸透圧(血液中の水分が血管外に漏出しないように引きつけること)、物質の運搬などです。栄養状態や肝機能などの指標になります。

2.(〇)→貧血の指標として、ヘモグロビン量、赤血球数、Ht(ヘマトクリット)値などがあります。ヘモグロビン(Hb)は、ヘムという鉄を含む色素と、グロビンというポリペプチド※1で構成されています(図1)。ヘモグロビンは赤血球のなかに大量に詰め込まれていて、その役割は酸素の運搬です。

図1 ヘモグロビンの構造図1 ヘモグロビンの構造

3.(×)→フィブリノゲンは血漿タンパク質のひとつで、トロンビンの作用で繊維状のフィブリンとなり、血小板とともに血液凝固に関与します。肝臓で作られており、出血や血栓形成、肝機能などの指標になります。

4.(×)→プロトロンビン時間は、血漿に組織トロンボプラスチンとカルシウムイオンを添加し、フィブリンが析出するまでにかかった時間をいいます。フィブリンやプロトロンビンなど、血液凝固に関わる様々な因子(血液凝固因子)の異常によって時間が延長します。

※1 ポリペプチド; 2つ以上のアミノ酸が結合することをペプチド結合と言い、結合したものをペプチドという。アミノ酸が2つ結合すればジペプチド、3つ結合すればトリペプチドという。多数のアミノ酸が結合すると、ポリペプチドと呼ばれる。アミノ酸が50個以上結合したものがタンパク質である。

Point:貧血の指標は「ヘモグロビン量」「赤血球数」「ヘマトクリット値」

覚えておきたい指標と数値

貧血の指標は、ヘモグロビン量が有名で、WHOの基準では、男性13g/dl以下(血液100ml中、ヘモグロビンが13g以下)、女性(非妊時)12g/dl以下、(妊娠時)11g/dl以下です。

貧血の指標はこのほかに、赤血球数(基準値;成人男性 435万~555万/mm3 成人女性 386万~492万/ mm3)やHt(ヘマトクリット)値があります。Ht値は血液中の赤血球の割合(%)で、基準値は成人男性40~50%、成人女性で35~44%です。

貧血は非常にありふれた病態ですが、さらに詳しく調べると、色々な原因があることがわかります。図2は、赤血球が生まれてから破壊されるまでのプロセスと、その異常によって生じる各種の貧血についてです。

貧血の種類とさまざまな原因

貧血と分かった段階で、さらに検査を進めると、どの貧血に当たるのかが特定されます。

平均赤血球容積(MCV)は、赤血球の大きさを示す指標で、貧血が小球性、正球性、大球性のいずれであるかを判定するのに用いられます。

小球性、正球性、大球性により、次のような貧血の種類に分かれます。

・小球性貧血:鉄欠乏性貧血など
・正球性貧血:溶血性貧血、再生不良性貧血など
・大球性貧血:巨赤芽球性貧血、悪性貧血など

MCVのほか、網赤血球数(成熟してすぐの赤血球)や平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)、末梢血液像や白血球数、血小板数などの検査を用いて、貧血の鑑別診断が行われます。

急性白血病や悪性リンパ腫など重篤な疾患が、貧血の原因である場合もあります。

図2 貧血の原因と骨髄・赤血球の種類図2 貧血の原因と骨髄・赤血球の種類

貧血のなかで最も多いのが、鉄欠乏性貧血です。鉄は食物から摂取するほか、破壊された赤血球からのリサイクルでまかなっています。極端なダイエットや、消化管出血や性器出血などでリサイクルされるべき血液が体外に出てしまうと鉄欠乏性貧血になりやすくなります。

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豆知識|疲れやすさ・集中力の欠如の裏には貧血も

わたしは東京の某医療系専門学校で、解剖生理を教えていたことがありましたが、いつも遅刻をしてくる男子学生がいました。色白で、痩せていて、疲れやすいのか、授業中にしょっちゅうウトウトしています。彼の手元を見ると、爪床は白っぽく、爪が薄く反り返っていました。鉄欠乏性貧血の症状のひとつである「スプーン状爪」です。眼瞼結膜も明らかに白っぽく、栄養が足りていないように思いました。彼は偏食が激しく、毎日菓子パンしか食べていないとのことでした。

鉄が欠乏すると、酸素を運搬するヘモグロビン量も減少し、細胞に酸素が行き届きにくくなり、効果的にATP(アデノシン三リン酸)※2をつくることができなくなります。その結果、疲れやすくなったり、集中力が続かなくなったりしてしまうのです。

高度の貧血は高山病と同じ状態

彼は、じわじわと鉄欠乏性貧血に陥ったケースですが、わたし自身も急激に鉄欠乏性貧血に陥ったことがあります。今から10年ほど前、胃潰瘍で吐血し、救急車で搬送されたのです。そのときヘモグロビンは、一気に8g/dlまで下がりました。

入院3日目に、なんとかトイレ歩行可の許可が出ましたが、足が重くていつものように歩けません。ハアハア息が荒くなり、ドキドキ動悸もしてきます。酸素運搬能力が低いので、心臓や呼吸器が血液の回転率を上げようと頑張っているのがわかりました。あげくに頭痛までしてきました。酸素不足の時は脳の血管が拡張し、頭痛が起きるのです。

「この感じ、どこかで経験したような・・・。」

そうです。その夏の富士登山で経験した高山病の症状にそっくりでした。「酸素不足という点では、急激に高度の貧血に陥ったときと、3000m級の山に登ったときは同じ症状なのだな」としみじみ思いました。

退院後のわたしは、家族が心配するので胃潰瘍の治療をしっかり継続して、定期的にレバーも食べて、今は元気に暮らしています。みなさんも偏食をせず、お肉や赤身のお魚などをしっかり食べてくださいね。

※2 ATP:細胞活動を維持するためのエネルギー源となる物質です。このATPを産生する過程(TCA回路)で、酸素が必要になります。

執筆者情報

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廣町 佐智子

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<日本看護研究支援センター 所長> 看護系短大・大学での教員経験ののち、2002年より日本看護研究支援センターにて、臨床看護師の看護研究指導に従事。同時に、解剖学や看護師国家試験対策の非常勤講師として、全国の看護学生の指導も経験。国家試験のすべての領域についてのわかりやすい指導には定評がある。