静岡県立静岡がんセンター 水主副看護部長

「御社からは“知恵”を買っているんです」―圧倒的な情報量とノウハウが支える看護職員採用


静岡県立静岡がんセンター(静岡県駿東郡)

2002年創設。「患者さんの視点の重視」という基本理念のもと、「がんを上手に治す」「患者さんと家族を徹底支援する」「職員が成長、進化を継続する」の3つを患者さんとそのご家族への約束として医療に取り組んでいる (615)


静岡県立静岡がんセンター
水主 いづみ(すいしゅ いづみ)副看護部長 兼 認定看護師教育課程 課程長

国立がんセンター中央病院、鹿児島大学医学部附属病院にて病棟看護師として勤務後、佐賀医科大学医学部看護学科では教員としてご活躍。2004年より静岡がんセンターへ。看護部教育師長を経て、2007年、副看護部長に就任(現在は認定看護師教育課程 課程長も兼務)。静岡がんセンターでの勤務の傍ら、静岡県看護協会認定看護管理者研修等の講師も務められている。

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株式会社エス・エム・エス 人事・組織コンサルティング事業部
ナース専科西日本セールスグループ 嶋田 靖士(しまだ せいじ)

2009年入社。キャリアパートナーとして看護職、リハビリ職の方々の就職・転職支援を担当。2016年より、現部署にて主に東海エリアの医療機関を中心に新卒看護師の採用に関する支援を担当している。


新卒看護師を増やしたい ― 創立10年目で感じた課題

インタビュアー:5年前に新卒看護師数確保に本格的に動き出したと伺っておりますが、当時の看護職員の人材マネジメントに関する課題はどんなものでしたか。

水主副看護部長:必要看護師数の確保。これに尽きるかと思います。設立以来、ずっと増床を続けてきておりましたが、増床分を稼働させるための看護師数が確保できておりませんでした。

嶋田:創設からちょうど10年目の年ですね。立ち上げ期の人員構成としては、やはり異動や中途採用の看護師さんの割合が多かったのでしょうか。

水主副看護部長:そうですね。とにかく数を確保しなければなりませんから、国立がん研究センター中央病院からの異動や中途採用で、即戦力となりうる看護師を多数採用していました。

嶋田:新卒看護師の採用に舵を切った背景は何だったのですか。

水主副看護部長:当院は「がんの治療だけではなくケアも大事にする」という想いで創設された病院ですが、やはり急性期のがん看護が主な業務になります。それに対し、中途で採用した職員たちの一部が、前施設の経験から来る入職前のイメージとのギャップによって思うように活躍できず退職する、ということが起きていました。新卒看護師はもちろん立ち上がるのに時間がかかりますが、それでも新卒看護師を採用して最初から育てることにエネルギーを注いだ方が良いだろう、という判断に至りました。

求めたのは採用のノウハウ ― 「ナース専科」との出会い

インタビュアー:新卒看護師の採用は、最初からうまく行ったのでしょうか。

水主副看護部長:いえ、そんなことはありません。新卒看護師も4大卒が増えてきていて、「がん看護をやりたい」という方々も多くいらっしゃいますが、1年目から「がん」という疾患に特化した看護の世界に入ることをちょっと敬遠してしまうところがあるのだと思います。ただ、その敷居の高さを取り除ければ優秀な方々を採用できるのではないか、という仮説はありました。けれども、それまで新卒看護師の採用を本格的にやっていなかったこともあり、どうすればよいのかまでは分かりませんでした。結果、当時は目標人数に対して半分程度しか採用できていませんでした。

嶋田:今から3-4年前のお話ですね。そのころに、私の前任者が水主様に初めてお会いした、と伺っています。

水主副看護部長:そうでしたね。御社とのお付き合い自体はもっと前からさせていただいていたかと思いますが、私がお会いしたのはそのころが初めてです。確かナース専科の合同就職説明会の打ち合わせのときでした。

嶋田:なにか印象に残っていることなどはありますか?

水主副看護部長:合同就職説明会における学生の皆さんとのコミュニケーション手法やブース装飾など、とにかく色々なアイデアをいただきました。一番のヒットは「チェックリスト」。

嶋田:それは今でも使っていただいていますよね。

インタビュアー:それはどのようなものですか?

嶋田:合同就職説明会では、学生さんは限られた時間でたくさんの病院を見て回ります。そのため、あまり長い時間引き留めると悪印象になりかねませんが、病院側としてはたくさんの情報を伝えた方がより興味を持ってもらえるのではないか、という思いがあり、どうしても長くなってしまいがちです。そこで当社からご提案させていただいたのがA4一枚の「チェックリスト」です。学生さんがブースを訪問してきたら、まずそれをお渡しして、学生さんが聞きたい項目にチェックを入れてもらいます。そうすることで、学生さんにとって不要な情報に時間を割くことなく、興味がある情報にフォーカスしてお話ができます。引き留める時間も必然的に短くなりますので、一石二鳥のリストです。

水主副看護部長:他にも「ブース応対の職員は年代の近い若手職員にする」ですとか、「ブースの装飾が病院イメージと合っていない」ですとか、それはもう矢継ぎ早に()。これはすごい、と素直に感じました。方法論の引き出しの数が圧倒的だから、こちらがアドバイスを求めた際にもスピード感を持って対応していただけるのだろうと思います。

目標人数達成の先へ ― 「質を伴った採用」のための取り組み

インタビュアー:一昨年には新卒看護師の採用人数目標を達成されましたね。

水主副看護部長:はい。3年前と比較すると2倍です。

嶋田:数は確保できるようになってきて、次は静岡がんセンター様が求める人物像に合致する学生さんの割合をどこまで高められるか、という挑戦になりました。「どういう人物が静岡がんセンター様に合うのか?」一緒にディスカッションしながら作り上げて行きました。

水主副看護部長:御社の採用シートと、当院のものとを比較したりもしましたね。

嶋田:離職者の方々、活躍されている看護師の方々のそれぞれの傾向などを見て議論を重ね、つむぎ出したのが「自主性」と「協調性」。この二つを採用基準にしつつ、母集団形成のために全国にプロモーションの場を広げました。

水主副看護部長:今年も数は確保できていますが、質が断然変わったと感じます。求める人物像に照らし合わせ、それに合致した学生の方々だけを選定できるようになりました。ちょっとぜいたくなくらいです。

「御社からは“知恵”を買っているんです」 ― お客様の経営課題から採用を考える

インタビュアー:水主様とは、さきほどの人物像のディスカッションも含め、さまざまなお話をさせていただいているんですね。

水主副看護部長:そうですね。当院では新卒看護師採用に力を入れる一方で、離職を抑制するための取り組みにも同時に取り組んでおります。そのときに重要になってくるのが師長、副師長クラスのマネジメント層を巻き込んだ組織作り。御社とは、院内ではあまり話をしない組織論についても意見を交わすことが多く、大変勉強になっています。「現場の声を聞く」という方法論を教えてくださったのも御社です。新卒看護師採用にもかなりそれが生きています。

嶋田:当社でも、全てのお客様と密にお話ができているかというと、そうではないのが現状です。「人・モノ・カネ・情報」という経営資源の中でも、病院経営においては「人」のウエイトがかなり高いです。つまり採用とは病院さんにとっては「経営」そのものと言えると思います。それをサポートさせていただくわけですので、我々としては病院さんの「中」に入り込まないといけないんです。「なぜ採用をしようとしているのか」の背景には、経営そのものへの課題があるはずです。合同就職説明会ひとつ取っても、それをご利用いただくことに意味があるのかが分からない状態では、本当の課題解決につながらない可能性もあります。それでは私たちが介在する価値がない。水主様とさまざまなお話をさせていただけるからこそ、私たちも課題解決のためのさまざまな提案ができますし、その課題に対して有効だと思われるノウハウをお渡しできるんです。

水主副看護部長:御社からは、商品ではなく “知恵“を買っている、という感じです。この世界で仕事をしていると、なかなか一般の企業の方とお話する機会がなくて・・・。看護師採用というきっかけではありますが、御社と出会えて本当によかったなと思っています。本を薦めてくださったりもするので、それまで本なんて全然読まなかったのに、読書家になりましたし()

嶋田:前から愛読家なのかと思っていましたが、違うんですか!びっくりしました。

「ナース専科」でのお付き合いを越えて

インタビュアー:静岡がんセンター様とは、新卒採用関連以外でもお付き合いさせていただいていますよね。

嶋田:そうですね。「ナース専科マガジン」の取材であったり、「ほすぴぃ」へのご協力だったり、さまざまな部署でお世話になっています。いつでも快くお引き受けいただけるので、大変助かっています。

水主副看護部長:それも日頃のお付き合いがあってこそ、ですよ。

嶋田:自画自賛みたいになってしまいますけれども、さまざまなサービスを持っていることも当社の強みのひとつだと思うんですよね。握っている手の数が多くて、それぞれ関わり方が違う。その関係性から来る圧倒的な情報量が、新卒採用の方にも生きてきています。

水主副看護部長:社内の連携もしっかり取れているんだろうな、と感じます。御社の方々は、今日取材に来てくださってる方々もそうですけれども、会う方会う方、皆さん意欲がありますよね。それは素晴らしいことだと思います。皆さんとお話していると、こちらも元気になってきます。うちの職員にも見習わせたいくらい。

嶋田:ありがとうございます!

水主副看護部長:嶋田さんはただ・・・、朝から一緒にいる顔じゃないですよね()

嶋田:朝からはちょっと濃いですかね・・・。ではお昼食べて午後から、という感じですかね・・・。なんかすみません。

水主副看護部長:いえいえ、いいんですよ。そのときそのとき、適切なときに登場すればいいんですから。午後、その見た目を発揮できる。いいことです()


インタビュアーから一言

「商品ではなく知恵を買っている」・・・この言葉に象徴されるように、私たちが提供しているサービスは、人が介在しているからこそ価値があるのだと改めて感じるインタビューでした。価値を感じ続けていただくためにも、お客様が求める「知恵」を常に引き出しの中に用意しておかなければならない・・・身の引き締まる思いにもなりました。

終始冗談を言い合いながら和やかにインタビューが進み、あっという間に2時間が経過。楽しい時間となりました。日ごろからたくさんのコミュニケーションを重ねているからこそいただけている信頼、それがそのまま表れているのだと思うと、同じ会社の一員として大変うれしく、誇らしく思いました。

インタビュアー:ナースライフサービス開発部長 村木 範子
※所属は取材当時のものです

※転載元:株式会社 エス・エム・エス