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Special Topic 1 看護部長インタビュー [トップが語る学生へのメッセージ]

時代の変化に柔軟に対応する看護の提供を基盤に、
個々の患者さんの生きる力を引き出せる
プロフェッショナルな看護師を育成

日本赤十字社医療センター

看護部長

潤子さん

専門職としての倫理観や
看護の探究的視点が必要

貴院の果たす役割と使命を教えてください。

 当センターは、渋谷区をはじめとした23区における中核的な医療拠点の役割を担っています。特徴としては、がん診療、小児・周産期医療、救命救急医療、災害救護に重点をおき、高度医療から地域包括医療まで、幅広い疾患の患者さんを受け入れ、安全で確実な看護を提供しています。
 新型コロナウイルス対応については、2020年2月、政府の要請に基づき、横浜港に停泊したクルーズ船への救護班派遣から始まりました。その後2年以上にわたり、一般診療、救急診療を継続しながら現在も対応しています。
 数多くの国際派遣を経験し、クルーズ船においても多国籍の乗客・船員に対し人道支援を統括指揮した国際救援部の苫米地副部長がフローレンス・ナイチンゲール記章を受章、皇后様よりメダルを授与されました。

看護部の理念に込められた思いをお聞かせください。

 私たちは「その人が健康に生きる力を引き出すことを支援し、看護の独自性を追求し、創造性の高い看護を提供すること」を理念として掲げています。患者さんが病と向き合いながらも健康に生きる力を少しでも引き出せるサポートが看護職の役割と考え、看護の独自性を発揮しています。「どのように生きたいか」という意思を大切にするセルフケア支援にも力を入れています。

看護理念を実践するための看護師の資質は、どのようなものですか。

 看護実践能力はもちろんのこと、専門職としての倫理観、常に探究的視点を持ち看護を追究することが必要です。3~4年目以降は、チーム医療におけるマネジメント能力や人を育てる力を養うことも大切です。また、広い視野を備えて国際活動や災害活動を行えることも、日本赤十字社の看護師の特徴です。

看護師教育には定評がありますが、教育体制について教えてください。

 新人教育は、集合研修と現場での教育が中心です。キャリア開発ラダーに沿って、実践者ラダーⅠの取得を目指し、看護職としての基礎を築きます。プリセプターやエルダーナースと目標を共有し、実践できるよう部署全体で新人を支える体制が整っています。
 1年目は技術の習得を求めがちですが、まずは職場に慣れることからスタートしてください。社会人になって初めての一人暮らしなど、慣れない環境で落ち込むこともあります。メンタルサポートに力を入れ、プリセプターやエルダーナースだけでなく、リエゾンナースが早期から介入しサポートしています。基本的に3年間はローテーションを行いませんが、上司やリエゾンナースなどと面談を行い、必要に応じて異動する選択もあります。看護師になるという志を持って働いている皆さんには、挫折することなく乗り切ってほしいと願っています。
 昨年度から、新型コロナウイルス感染の拡大により、集合研修もグループを分け少人数で実施する対策をとりました。教育担当者が各部署にラウンドを行い、新人の話をヒアリングし、一人ひとりの頑張ろうという意欲に、きめ細かく対応しています。

災害看護をはじめ、専門性の
高い研修でキャリアアップ

2年目以降の教育についてはいかがでしょうか。

 3年目までは基礎力充実期とし、看護実践、教育・研究、管理、赤十字などの領域にわたり、キャリアに応じた必須研修と選択研修を用意し、学ぶ意欲をサポートしています。
 当センターには、目標を持ちキャリアアップしたいスタッフが数多くいます。専門・認定看護師の資格取得は大変なことですが、師長とキャリア面談を行い個々の希望を聞き、目標に向けてローテーションを行い、実践を積み重ねていきます。スペシャリストを目指す人には休職制度や派遣制度を導入し、資格取得後も活動のフィールドを用意して個々の成長を支援しています。

日本赤十字社は災害看護にも力を入れていらっしゃいますね。

 当センターは、赤十字の救護活動に携わる使命があります。国内や海外での救援活動にスタッフを派遣しています。救援活動に求められるのは看護実践だけでなく、現地での指導・教育、語学力など多岐にわたります。救護員になるための研修も用意し、将来、救護員を目標とする人には面談を行い、サポートしています。1年目から研修を受講することも可能です。

ワークライフバランスについてはいかがでしょうか。

 最近は子育てと両立して働く人が増えていることから、個々のライフスタイルに合わせた働き方を選択できる環境を整えています。働き方改革に取り組み、スタッフ同士が協力し合い、効率よく働ける体制を構築しています。
 全国の赤十字病院への異動も可能で、結婚、出産、配偶者の転勤などで、地方の病院で働きたい人や、他施設で経験を積みたいなど、個々の希望を考慮しながら、看護職としてのキャリアを継続できる環境があることも魅力です。

最後に学生さんへのメッセージをお願いします。

 学生の皆さんは、さまざまな可能性があるので、しっかり学習してきてほしいと思います。自分の思いを自分の言葉で伝えられる力を養うことも大切です。そして、学生時代にしかできないアルバイトなど組織の中で働く社会経験も、将来役に立つと思います。
 入職後1年目は、看護の基礎を築く大切な時期です。そこで吸収したことは看護観の確立にもつながります。
 病院選びで大切なことは自分に合った働き方ができることや、自分の目標を達成できるなどの視点から病院を選択することです。インターンシップへの参加や先生や先輩からアドバイスを受けるなど、広い視野で自分に合った病院を見極めることが必要です。
 赤十字は130年の歴史があり、これまで時代に即した進化を遂げてきました。看護の伝統を引き継ぎながらも、現在の社会の要請に対応できる力が求められます。今後も柔軟性を持ち、チーム医療を大切にしながら、患者さんにより良い看護を提供していきます。

川上 潤子さん

日本赤十字社医療センター

[住所]〒150-8935 東京都渋谷区広尾4-1-22

全国にある91の赤十字病院は、それぞれ特徴があります。当センターは大学や福祉センターも隣接しており、大学の先生との連携もスムーズに行われています。自主的に学びを深められる教育環境が整っています。

Profile プロフィール

かわかみ じゅんこ

1986年に4年制となった日本赤十字看護大学の1期生として入学。日本赤十字社医療センターへ入職後、大学院で学びを深めたのち出産、子育てと勤務を両立させてきた。2019年より現職。認定看護管理者。

「患者さんのニーズに沿った看護」は、簡単なことではありません。患者さんが自分自身で最善の方法を考えられるサポートを実践することが求められます。自分の五感を大切に患者さんと向き合ってください。
「患者さんのニーズに沿った看護」は、簡単なことではありません。患者さんが自分自身で最善の方法を考えられるサポートを実践することが求められます。自分の五感を大切に患者さんと向き合ってください。

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