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Special Topic 1 看護部長インタビュー [トップが語る学生へのメッセージ]

地域に密着し、患者さんの心に寄り添う看護を提供。
都立病院間での人的交流、教育の連携を活用して、
看護の視野を広げ、学びを深めていってほしい

東京都立東部地域病院

看護部長

依子さん

地域医療の充実に貢献し、
大都市東京の医療を支える

2022年7月1日より始まった都立病院機構について教えてください。

 都立病院8病院、公社病院6病院とで「地方独立行政法人東京都立病院機構」となりました。旧都立病院は専門性の高い高度医療と一般病院では対応の困難な行政的医療を行っています。一方、旧公社病院は東部地域病院や多摩南部地域病院のように急性期病院の少ない地域の医療を支援するほか、地域包括ケアシステム構築への貢献という役割も担っています。

それにより貴院の医療や看護での変化はありますか。

 地域医療支援病院のコンセプトはまったく変わりませんが、例えば当院の近隣にがん診療連携拠点病院である駒込病院があります。当院にもがん看護の認定看護師は在籍していますが、がんの患者さんのケアで、困ったことやわからないことを解決するために駒込病院へ講師を依頼したり、実際に病院に見学にいったりと連携をとることがスムーズにできるようになります。このようなことが14病院でできれば大きなスケールメリットだと思います。
 他施設で得る新しい知見や経験は看護師の成長を促し、成長した看護師は入院中の患者さん、地域にその力を活かすことができると思います。

他病院との人的交流や勉強会のメリットはどのようなことでしょうか。

 看護師としてほかの病院を知ることは、視野を広げるという点でとても大切なことだと思っています。私自身も民間病院から旧都立病院に移り、現在8病院目ですが、それぞれの病院での良いところ、新しい試みを経験することができました。
 自分の職場だけでは解決できない問題にしても、他病院の取り組みを参考にし、リソースを活用することで解決できることも増えるのが大きなメリットであると考えます。

貴院の看護の理念と特徴について教えてください。

 看護部の理念として最初に掲げているのが、「地域のニーズに根差した看護の提供」です。当院のある葛飾区は都内でも高齢化率や要介護率が高いので、入院中から地域包括支援センターや訪問看護ステーションと連携をとり、患者さんが地域で暮らしやすい方法を考え、退院後の生活を見据えた看護を提供するなど地域と協力して患者さんを支えています。
 また、急性期病院なので在院日数も7~8日と短いのですが、その中でも患者さんの心に寄り添う、温かい看護の提供を実践しています。

都立病院全体の教育体制と
独自の教育支援制度を整備

看護理念を実践するためには看護教育がとても大切ですが、新人教育についてはどうでしょうか。

 東京都立病院機構全体の教育体系として、臨床にいながら看護専門職として自ら学び、成長し続けるためのサポートシステム「東京看護アカデミー」があります。それにくわえて各病院が特徴的な新人教育を行っています。当院では最初の3カ月をグローアップ研修とし、病院に慣れることを中心に行っています。2週間の集合研修の後に各病棟でシャドウイングから始め、一つひとつ段階を踏みながら実践力を身につけ、少しずつ受け持ち患者さんを増やしていきます。
 当院はパートナーシップ・ナーシング・システムを導入しています。新人のフレッシュパートナーには、年齢の近い先輩看護師を配置し、相談しやすい環境づくりを心がけています。特に夜勤に入る7~8月は新人看護師が一番つらい時期でもあり、新人教育担当者と教育師長で現場を回り、新人看護師の様子を見て、フォローが必要な場合は面接をするなどきめ細かい支援をしています。

2年目以降の継続教育についてはいかがでしょうか。

 都立病院機構共通のキャリアラダーに沿って、教育体制が整えられています。レベルⅢまでは看護師としての基礎的な力をつける時期として、年間計画に基づき、レベルに応じた院内研修を行っています。
 レベルⅠ~Ⅲまでは基礎コースといい、看護の基本的知識や技術を習得するためのコースです。新人はレベルⅠから開始し、レベルⅡ、Ⅲでは、レベルⅠで学んだ安全、感染、看護記録、倫理などの研修内容が更にステップアップした内容となります。
 レベルⅢが修了するとジェネラリストコースとなり、特定分野における質の高い看護実践と指導的役割を担う看護師を育成するエキスパートコース研修、ほかの都立病院で看護実践や看護管理について学ぶジェネラルナース派遣研修、地域の訪問看護ステーションで1カ月間研修を行う実務型訪問看護研修、特定行為にかかわる派遣研修、認定看護師・専門看護師養成派遣研修、看護マネジメント派遣研修のほか、院内研修でも看護記録、倫理などがあり、自分の進みたい方向をサポートする研修体制が整っています。

学生の皆さんへアドバイスをお願いします。

 コロナ禍で授業もオンラインになるなど、実習の時間がとても少なくなっていますよね。特に実際に患者さんに接する機会が減り、患者さんとのコミュニケーションの機会も減っています。そのため実際に病棟で働き出すと、患者さんへの声かけ1つうまくできないなど、リアリティショックを受ける新人看護師も少なくありません。
 それを防ぐためにも、学生時代にいろいろなことに挑戦して、失敗を恐れずに多くの経験を積み重ねていってほしいですね。

新人看護師に期待することはどんなことですか。

 これからも新興感染症の発生は続いていくと思いますし、高齢化も進み、1つの疾患だけでなく、慢性疾患を持ち、家族などの複雑な課題を持った患者さんが増えてくると思います。医療としても困難な局面であるとは思いますが、看護はこうした困難な局面でも、人々が安心して暮らしていくために絶対に必要な仕事だと思うので、こうした複雑な問題を私たちと一緒に解決し、乗り越えていってくれることを期待しています。

小坂 智恵子さん

東京都立東部地域病院

[住所]〒125-8512 東京都葛飾区亀有5-14-1
当院は葛飾区という下町にある二次救急の病院です。高齢者の看護、がん看護や認知症ケアなど幅広い医療・看護が経験できます。認定看護師も多く、チーム医療も充実しています。育児中の看護師も多く活躍する働きやすい病院です。

Profile プロフィール

しいはし よりこ

千葉大学看護学研究科修士課程修了(看護学修士・認定看護管理者)。聖母病院を経て、平成元年に都立病院に就職。大塚病院、松沢病院、広尾病院、駒込病院、小児総合医療センターで勤務。2020年より東部地域病院看護部長。

都立病院機構となり、小児科、精神科、がん・感染症、災害など専門の医療・看護を実施している病院と連携しています。地域支援にくわえ、幅広い分野を学ぶことができます。