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Special Topic 1 看護部長インタビュー [トップが語る学生へのメッセージ]

社会や医療の変化に対応できる看護を目指し
看護の基礎から専門性を高められる
教育体制で
自ら主体的に考え行動できる看護師を育成

東京医科歯科大学病院

病院長補佐・看護部長

えみ子さん(左)

東京大学医学部附属病院

副院長・看護部長

山 智恵子さん(右)

時代に合わせた柔軟な教育で、
一人ひとりの成長をサポート

小見山 国立大学病院では医療人の育成を使命とし、高度急性期医療を担うための人材育成に力を入れています。看護師としての基礎をはぐくむことを大事にし、学びを積み重ねることで個々の患者さんに対応できる看護師を育成しています。ジェネラリストでもスペシャリストでも、確実にステップアップできる教育体制があります。

淺香 当院も急性期医療を提供する役割がありますが、最近は新型コロナウイルス感染症の患者さんの受け入れに伴い、高度な能力や多様性が求められています。どんな状況でも看護の方向性を明確にすることが必要と考えます。

小見山 これまで新人教育は、入職時の集合教育を中心に実施していましたが、コロナ禍では集合教育と現場教育を組み立て直し、少人数制やオンラインでの研修を導入しました。病棟ではプリセプターやエルダーナースが指導にあたりますがプリセプターだけでなく、部署全体でも新人をサポートする体制が整っています。

淺香 以前からオンライン研修を導入しOJTに結びつけていました。研修では参加するだけでなく、何ができるようになったかという成果を重視しています。プリセプターという役割は設けず、新人と先輩が2人1組で臨床経験を積む体制をとっています。教育担当者、先輩看護師、師長など部署全体で新人をサポートしています。

小見山 昨年同様に今年度も実習が少ない状況は続いていますが、現場では先輩の指導のもとで着実に技術を習得できる環境がありますので安心してください。これはコロナ禍に限らず、以前から大事にしてきたことです。

淺香 基礎技術は臨床現場で補っています。またメンタルサポートにも力を入れ、新人だけでなく学習支援者を含めてサポートしています。

小見山 国立大学病院では、それぞれが工夫して教育環境を整えています。また、コロナ禍における病院の体制も変化し、コロナ病床数を増やすことで、病棟から看護師が異動することも余儀なくされています。大きな環境の変化がある中で、新人看護師には適応することが難しいこともあるかと思います。しかし、新人の段階でこれまでと異なる経験をすることは、将来必ず力になると思います。

淺香 そうですね。看護師として働くうえで楽なスタートではないかもしれません。しかし、これからの時代は社会や教育、医療の変化が続いていくと思います。看護部も時代に即した人材育成に力を入れていきます。

自主性と主体性を持って
看護を実践することが大事

小見山 当院の求める看護は、自分自身を高め、患者さんの力を引き出すことです。「みて、触れて、考える」看護は奥が深いものです。この過程を大切にして、自分自身で判断して看護を展開してほしいと思います。

淺香 自分の考えを持ち、社会の変化に対応できる看護師であることが大事だと考えます。看護部の基本方針にも掲げている「主体的、科学的、創造的」を軸として、高度な看護実践ができるジェネラリストを育成しています。

小見山 自主性と主体性を持った看護を実践することは、大事にしてほしいですね。自分の看護観は、人から教わるものではありません。さまざまな経験を積む過程で自分の中で消化し、つくり上げていくものです。苦労を重ね、成功体験を交えながら、自分自身の看護を深めてほしいと思います。

淺香 そのとおりですね。

小見山 看護師の皆さんは、一人ひとりが社会の宝物です。院内では患者さんのニーズに応えられるよう、いろいろな役割を担える存在であってほしいですね。当院でキャリアを積み重ねてほしいと思いますが、社会の一員として別の形で働くことも、1つの選択肢だと思います。社会に貢献できる看護師として成長してください。

淺香 国立大学病院は地方出身者も多く在籍しています。当院で培ったものを発揮し、さまざまな場所で看護を牽引してほしいと思います。それが国立大学病院の果たす役割でもあります。

小見山 看護師としての専門性を高めるための、キャリアアップ支援にも力を入れています。認定看護師を希望する人には研修は出張扱い、費用の一部負担、専門看護師の大学院進学は休職扱いとするなどの支援があります。

淺香 同じ体制を整えています。スペシャリストやジェネラリストなど、個々の目標に合わせて支援しています。国立大学病院では病院間の人事交流も行われ、院内で習得できない技術は他病院で学べる機会を設けています。

小見山 結婚・出産、家族の転勤などのため、住んでいる地域を離れる場合の異動も可能ですので、活用してほしいと思います。

淺香 キャリア支援には力を入れていますが、男性管理職はまだまだ少ないのが現状です。男性看護師は少しずつ増え、あらゆる診療科に配属していますが、全体の1割程度です。

小見山 当院の男性看護師はまだ1割に満たないですね。男性看護師も募集中ですので、ぜひきてください。看護に終わりはありませんが、だからこそ、楽しくやりがいも多い仕事です。安心して看護師としての第一歩を踏み出してください。

淺香 看護に情熱がある人だけでなく、さまざまな思いを持った人にきてほしいですね。初めはきちんとした信念がなくても、看護を継続していくことで多くの気づきが生まれてくると思います。ぜひ、私たちと一緒に盛り上げてください。

小見山 最後になりますが、まだ新型コロナウイルスの収束が見えない中、学生の皆さんは不安に感じていると思います。学生時代に学んだことを大事にして、看護現場に踏み出すことをためらわず、勇気を持ってきてくださることを願っています。

東京大学医学部附属病院

[住所]〒113-8655 東京都文京区本郷7-3-1
私たちは「みて、触れて、考える」看護を大切にしています。実践したケアが患者さんにどう影響したかを判断し、次に生かしていくことを積み重ねてほしいと思います。急性期病院では、退院後の生活を把握しづらいと思いますが、患者さんの生活背景や環境を考えてケアを提供していきましょう。

Profile プロフィール

こみやま ちえこ

千葉大学看護学研究科修士課程修了(看護学修士)。東京大学医学部附属病院就職後、外科病棟、内科病棟、教育担当部門などで勤務。文部科学省出向を経て2003年看護師長、2010年より看護部長、2019年副院長。

東京医科歯科大学病院

[住所]〒113-8510 東京都文京区湯島1-5-45
私自身が看護を実践するうえで大切にしてきたことは「できない」とあきらめず、「できるためにどうするか」を考えることでした。それは今の時代にもあてはまります。看護師としてだけでなく人としての主体性を高め、未来に向けて新しい何かをつくり出せる、創造性のある看護師として育ってほしいと思います。

Profile プロフィール

あさか えみこ

看護学修士(東京女子医科大学)、医学博士(富山大学)。獨協医科大学埼玉医療センター、榊原記念病院、日本看護協会看護研修学校で勤務。主には手術室・救急部門。救急看護認定看護師。2006年看護師長、2007年看護副部長、2020年より病院長補佐兼看護部長。