福岡県の中央部、飯塚市にある飯塚病院。「まごころ医療、まごころサービス」をモットーに、地域のメディカルセンターとして診療活動を行う、救命救急センターを併設した筑豊地区の基幹病院である。
「豊かな感性を持ち人を理解し尊敬し、暖かい心で接する」ことを理念に掲げる同院の看護部では、患者さんの思い(不安、不満)や痛みを早期にキャッチして、それぞれの患者さんに合った看護サービスが提供できるよう、人材育成のための教育に力を入れている。
看護師として必要な能力は車の両輪にたとえられる。一方が、担当する方向性や舵取りとしての「対人関係上の能力」、他方が、担う推進力やパワーとしての「仕事の専門能力」だ。この両輪を養う教育を継続させることによって、専門職としての能力を高める自己啓発が可能となり、質の高い看護を実践できる看護師になることができるのだ。
新人看護師が1日も早く職場に慣れ、活き活きと仕事をするために実践スキルや心構えを学ぶ「若葉ナース研修」がある。「対人関係上の能力」の向上を目的とし、「患者様の安全確保」「倫理遵守」「対人関係向上」「自己成長」の4つにフォーカスして実施されている。
呼吸器・血液内科に勤務する入職1年目の中島愛美さんは、自己成長を確認できたとこの研修を振り返る。
「講義を聞くばかりでなく、ビデオで事例を見たり、グループワークをしたりすることが多かったので、実践的に学習できました。また、不安になることが多い時期に開かれたので、自分のなかに溜め込んでいたものを新人同士で話したり、先輩看護師が務めるインストラクターへ相談したりすることもできて、良い気分転換と問題解決になりました」
研修終了時には、全体のまとめとして各自が実行していきたいことをグループ発表し、各職場での行動計画を立案する。さらに、8カ月後にはフォローアップ研修が実施され、次のスキルアップへとつなげていく。
また、「仕事上の専門能力」を向上させることを目的とした教育プログラムの1つとして、「呼吸器演習」がある。人工呼吸器の取り扱いやリスク管理の演習を行い、看護レベルの向上を図る取り組みだ。人工呼吸器の仕組みや構造、設定方法、動作点検、患者さんの観察方法、異常の発見と対処方法を中心に行われている。インストラクターも受講者も笑顔で参加できること、受講者に人工呼吸器を扱えるという自信を持たせることがポイントの1つになっているのも特徴だ。
「普段触れる機会が少なかったのですが、実際に扱ってみて“吸って、吐く”という呼吸器の基本的な構造を詳しく知ることができました。研修を受けて、呼吸器の取り扱いへの不安も解消できたと思います」と話す入職1年目の奥将也さん(整形外科・膠原病科勤務)。
同院看護部のキャッチフレーズは“あなたのなりたいナースになることを支援します”だ。「ナース全員がキャリアアップノートを持ち、自分の目標や現在の能力に対する自己評価と他者評価をまとめてファイルします。なりたいナースになるために、次に何をすれば良いか一目でわかります」と須藤久美子看護部長。
“なりたいナース”になれるよう、3年間の基礎コースに始まって、5年目からの専門コースまで、充実した教育体制が整っている。そこに体験型学習を豊富に取り入れている点も同院の特徴だ。
「座学ではなく、体を動かして実践する教育なので、自然に覚えられると好評です」(須藤看護部長)
一人ひとりのレベルに合わせた教育内容を現場で工夫しているという同院の研修システム。新たな取り組みとしては、2008年から始まった「卒後臨床研修制度」が挙げられる。この一環として導入された、個々の技術が“なぜ”必要であるのかを理解するためのフィジカルアセスメントを学ぶICU研修は、実技に不安があった大卒者への成果も出ているという。
こうした丁寧な指導を評して「飯塚病院は、病院全体で私たちを育ててくれる」という感謝の言葉が多くの新人から聞かれるという。そんな新人のうれしい反応が須藤看護部長の励みだとか。
「当院は35の診療科があり、三次救急から急性期、慢性期、ターミナル期、精神、小児まで、看護師が学ぶスキルをほぼ網羅しています。そうした豊かな環境で看護師としてスタートし、キャリアを積んで“なりたいナース”になっていただきたいと思います」(須藤看護部長)


