1923年に大原美術館でも知られる実業家・大原孫三郎氏が創設した倉敷中央病院。「病める人々に心の通った医療を行う東洋一の病院」を目指して、患者本位の医療、全人医療、高度先進医療の3本柱を理念に理想の医療を追求してきた。2008年には、地域医療支援病院の承認を取得。年間6万件以上※1の救急患者を受け入れる岡山県西部の急性期地域基幹病院である。
看護部では「病む人を全人的に理解し、一人ひとりのニーズにあった心の通う看護を」と常に前向きに努力を続けている。エビデンスに基づいた安全で安心できる看護を実践し、看護観を深め、人権や生命を尊重するといった人間性豊かな看護師の育成を目指している。01年にクリニカルラダーと目標管理を組み合わせた独自のキャリア開発システムを導入。また年3回行う担当病棟の看護師長との面接で、個性や希望に応じた目標設定を行うなど、一人ひとりに合わせた育成を行っている。
新人教育は、教育担当師長と新採用者専従教育担当師長との2人体制で運営し、1?2カ月に一度集合研修を実施している。ただ単に技術を教えるのではなく、何を観察し、どのようにアセスメントし、“なぜそうするのか”という根拠の理解を大切にしている。その根拠がわかれば、日々の看護実践に活かすことができ、安全で安心できる看護の提供につながる。「新人教育では、心理的なフォローも重要。プリセプター制度は技術指導だけでなく、精神的なサポートを重視していますし、集合研修も同期生が互いに普段の悩みを話し合うことで、心理的な負担を軽減し、リフレッシュする場となっています」(安部小夜子副看護部長)。
※1 2008年度実績
同院では、新人教育において、08年から新人臨床研修制度を取り入れている。これは、入職1年目の希望者を対象とした研修で、3カ月ごとに神経内科、心臓血管外科、外科、整形外科の各病棟をローテーションで勤務する制度だ。
「ローテーション制なので、患者さんや医療スタッフなど多くの人々と交流しますし、幅広い臨床経験を積むことができます。ですから、看護実践能力、人間関係の構築力とも着実に向上しています」(安部副看護部長)
入職1年目の出口幸さんは、新人臨床研修制度の効果を実感し、次のように語る。
「神経内科病棟、心臓血管外科病棟、整形外科病棟と回っていきました。そのなかで脳疾患や心疾患の患者さんを看護しましたが、その経験は別の病棟でも生かせます。さまざまな症例を経験しておくことが、後で役立つことを学びました」
また、同院では、専門看護師や認定看護師などのスペシャリストの育成にも力を注いでいる。現在では、3名の専門看護師をはじめ、数多くの認定看護師が勤務している。認定資格取得のための奨学金制度・休職制度を整備しており、現在も多数の看護師が利用している。安部副看護部長は院内で活躍する認定看護師について次のように話してくれた。
「認定看護師は、患者さんの相談・対応のほかに、現場の医師や看護師へのコンサルテーションも行います。専門的能力が高く活動範囲が広いので、病院全体の看護レベルの向上に貢献してくれるのです。この2、3年は志望者も増えています。目標管理やクリニカルラダーによる教育制度のおかげで、キャリアパスについての意識が高まったおかげだと思います」
出口さんは、入職1年目という立場ながらも、スペシャリストの存在の大きさを実感している。
「スペシャリストの方々が身近にいると、日ごろから専門知識を学ぶことができます。それに、スペシャリストになることを目標として私も努力しようという気持ちになります」
一人ひとりが、希望するキャリアの道を進むためには、長く働くことのできる職場環境も重要となってくる。
同院では、1976年に院内保育所を設置し、24時間保育を実施。93年に採用した週休2日制や産休・育休の諸制度も整えており、08年には内閣府認証NPOから「働きやすい病院評価」※2の認定を受けている。
「現在、開設準備が進められている新棟では、最新の医療設備だけでなく、医療スタッフのリラクゼーション・スペースとして、カフェを併設する予定です。環境を整備して、着実に成長してもらうことが患者本位の看護の実現につながると考えています」(安部副看護部長)
ここには看護師にとっても、患者様にとっても恵まれた環境がある。
※2 「女性医師を含むすべての医療従事者が安心して働くことができる病院」という観点から、内閣府認証NPO ejnetが第三者確認を行い認定するもの。認定期間は2008年10月12日?2013年10月11日。


