急性期医療に対応する「精神科スーパー救急病棟」、高齢者医療に対応する「認知症病棟」などを擁し、時代とニーズに即した精神科医療の実践を目指し進化し続けるハートランドしぎさん。もともと管理者と一人ひとりの看護師の距離が近いオープンな風土が根づいていることに加え、自分のレベルを把握しながらスキルアップできる「クリニカルラダーシステム」をはじめとする充実の教育システムを備え、近年は意欲のある人材活用にも積極的に取り組んでおり、“働きやすい環境”が整っていることが大きな特徴といえる。
その象徴が、3名の看護師の存在だ。救急病棟の看護師長で、行動制限最小化看護認定看護師※1としても活躍する大谷須美子さん(看護歴19年)。同じく救急病棟勤務で、働きながら准看護師、看護師、精神科薬物療法看護認定看護師※2の資格を取得した森脇崇さん(看護歴15年)。入職後に専門看護師を目指し、籍を置きながら大学院を修了、今年、資格試験を受ける予定の外来勤務・松村麻衣子さん(看護歴9年)。資格取得は「知識やスキルの裏づけを明確に持ち、それらを言語化できるようになりたい」、「自分自身と病院全体の、薬物療法におけるスキルを高めたい」、「ここで働く看護師のメンタルヘルスをサポートしたい」など、それぞれが抱いていた強い思いからの決断だった。
「研修への参加などで現場を離れることも少なくありませんが、病院側が難色を示すようなことはまったくありませんでした」という大谷さんの言葉からも「本気で精神科看護に取り組む看護師をサポートしたい」という同院の考え方がうかがえる。
※1・※2 いずれも日本精神科看護技術協会の認定資格。
大谷さんと森脇さんが認定看護師資格を取得した2008年度の春以降、3人は一つの志を持つ同志として活動を展開してきた。
「当院には認定・専門看護師がいなかったこともあり、病院ではスペシャリストを活用する術がなかったんです。まず私たちの存在意義や具体的な役割や活用するメリットを院内で共有することで、今後資格を取得する人たちも活躍できる職場風土を整えたいと考えました」(大谷さん)
3人は事あるごとに、看護師の教育だけではなく、新しい取り組みにおいても活用できる存在であること、自分たちが院外の研修会で講師を務めることが、ひいては病院の知名度アップにつながることなど、スペシャリストだからこそ果たすべき役割や活用することによるメリットを訴え続けた。
そんななか、院内でのムーブメントにつながったのが、奈良県下のほかの病院の看護師も巻き込んで実施された「コンコーダンス・スキル」研修会。コンコーダンス・スキルとは、薬物療法の過程においてコミュニケーションスキルを活用する新しい技法のこと。臨床への還元に熱心な研究者からの「病院内で看護師に向けて継続的な研修を実施したい」という申し出をきっかけに開催された。実施までにはさまざまな課題があったが、3人がそれぞれの役割と立場を活用することで実現。実際にそのスキルが臨床現場で活用されたり、体験を共有したことにより病棟の枠を越えた横のつながりが生まれたりと、数々の成果も実感できた。そして何よりも大きな収穫は「新しい研究やスキルに出会える場でもある」という、病院の新しい魅力を生み出すことにつながったことだ。3人の活動はそれぞれの役割開拓にとどまらず、同院がより働きやすい病院へと進化する原動力となっている。
「こうした取り組みを経て、3人のなかに、今後の活動につながる協力関係のベースができたような気がします」と、笑顔で語る松村さん。また森脇さんは、「病棟でも、わからないことは専門書などを開いて調べている姿を見かけることが増え、日頃の働きかけによって、スタッフの意識が少しずつ変化しているなと感じます」と、その手応えを語る。大谷さんに至っては、「病院側もとても協力的なので活動しやすくなりました。やる気のあるスタッフを発掘して、活動を広めていきたいと考えています」と頼もしい限りだ。
そんな3人に、一緒に働きたい人材像を聞いた。「精神科看護で大切なのは、人の行動や言葉の裏にある意図やその場の空気を読もうとすることです。あとは意欲があれば、周囲のスタッフが人として、看護師としての成長と知識・スキルの向上をサポートします。私たちが病院のオープンな風土を最大限に活用したように、ここならではの働きやすさはもちろん、スペシャリストの存在、新しい環境をフルに生かそうと思ってくれる人に来てほしいですね」


