大学病院として、高度医療を担いつつ、地域の基幹病院、中堅病院と連携をとりながら、地域住民の健康を守る兵庫医科大学病院。同院には、患者さんにより良い医療を提供するため、職員の意見や要望を積極的に取り入れる柔軟で自由な風土がある。なかでも、24時間、常に患者さんと接している看護師の意見を重要視している。山田繁代看護部長は言う。
「病院の医療サービス向上には、患者さんの身近にいる看護師の意見が大切なんです。私たちは患者さんの要望を病院側に伝える重要な役割をもっています。私たちの意見を尊重し、それを積極的に採用する病院だからこそ、良い医療サービスを提供することができるのです」
山田看護部長は副院長という肩書きも担っており、チーム医療にとっても欠かせない接遇や、医療サービス向上のための教育責任者として幅広く活躍している。
「患者さんの一番身近にいる看護師が副院長という権限をもたせていただき、病院全体にかかわっていくことはとても大切なことと思います」
患者さんに身近な看護師が副院長になることで、患者さんの細かな要望も、より実現できるようになった。
「一例ですが、『医師の白衣が、しゃがむと床に着いて不潔だ』という患者さんからの投書が続き、医師の白衣を短いものに統一しました。これは患者さんの気持ちを尊重した当たり前のこと。でもこれは副院長という権限をもっていなかったら実現できなかったことです」
同院は各専門職がお互いの役割を理解し、尊重し合うことで、質の高い医療を患者さんに提供するチーム医療体制が整っている。チーム医療で大切なのは、医師による一方的な主導ではなく、医師も看護師も同じ意識で取り組むこと。
「それぞれの専門職が患者さんにとって一番良い医療を提供するためには、看護師を含め全ての専門職がお互いをプロと認めていなければ、チーム医療は成り立ちません」
そのなかで看護師は患者さんの身体と心のケアも行う重要な役割を担う。
「入院患者さんにとって病院は治療の場だけでなく生活の場でもあるのです。生活の細やかな配慮は看護師しかできません。個々の役割が尊重されているからこそ患者さんをしっかりとケアすることができるのです」と山田看護部長。
看護師一人ひとりが誇りをもって仕事のできる病院だからこそ個々を尊重したチーム医療ができるのだ。
同院には日本看護協会が認定する4人の専門看護師、20人の認定看護師が活躍している。2005年に急性・重症患者看護専門看護師資格を取得したICU師長の宇都宮明美さんは、理論に基づく看護を実践している。
「ICUでは重症の方が多く、『患者さんとの心の交流を求めて看護師になったのに、一体自分は何をしているのだろう』とバーンアウトしてしまう看護師が多いんです。でも、理論的に予測した看護が行えるようになると看護がすごく充実してくるんです。一緒に頑張っているみんなに看護の素晴らしさというものをもっと感じてもらいたいんです」
こうした宇都宮さんの姿勢は仲間たちに確実に浸透している。ICUの看護師は多忙ということもあり、どうしても離職率が高くなる現状があるが、同院のICUからの離職者はごく少数。これは特筆すべき事例である。
専門看護師となった宇都宮さんは、なぜ同院で働こうと思ったのか。
「専門看護師になって、私は自分を活かしてくれる職場に徹底的にこだわりました。関西圏の主要な病院を回り、いろいろな看護部長の考えを聞いた結果、私を活かしてくれる病院はここしかないと思ったんです」
地域医療・総合相談センターの片岡優実さんは大学院で看護理論や患者教育などを学びながら同院で実習を行い、専門看護師の資格を取得した。現在、片岡さんは、慢性疾患看護専門看護師としての専門性を活かし、外来・入院患者さんの指導・相談や在宅ケアを行っている。
「患者さんに対する理解を深めることはできても、実際にその患者さんへどういう看護を提供するのかと考えたとき、以前は答えが出てきませんでした。今では自信をもって理論に基づいた看護を提供できます」
手本にできる人が身近にいることは、キャリアアップをめざす看護師にとって大切なことだ。同院にはキャリアアップする看護師を全力で支えてくれる環境がある。
「ここには初めに組織があるのではなく、人がいて、それを活かす組織をつくるという素晴らしい風土があります。私が入職することが決まって在宅看護相談室ができ、それが今では地域医療・総合相談センターになっています。私のために働きやすい環境、私を活かしてくれる組織を病院が用意してくれたんです。本当にうれしかったですね」と片岡さん。
看護師にとっての可能性が大きく広がる場所がここにある。

