1950年の開設以来、キリスト教の「奉仕の精神」にもとづいた医療を提供する姫路聖マリア病院。兵庫県南西部の基幹病院として地域の医療ニーズに応える一方で、2007年以降3年連続して厚生労働省の「臨床実践能力向上推進事業」で新人助産師・看護師など4部門の研修事業に採択されるなど、大学4校を含む看護系学生など年間延べ1,700人を受け入れる全国有数の教育機関だ。
同院看護部では、「良い看護を提供するには、良い看護師育成が必要」という山中誉子看護部長の方針のもと、独自の看護師教育を行っている。
教育目標は、新人からの5年間でジェネラリストを育成すること。臨床技術・マネジメント・リーダーシップ・ティーチング・研究開発の5本柱での教育カリキュラムに専門研修やスキル研修などを組み合わせ、ジェネラリストを育成していく。そのスタートとなる4月は全体オリエンテーションの後、約1カ月をかけてていねいに看護の基礎技術を指導。臨床現場では、プリセプターが新人の精神的なケアも含め指導を行う。
「私たちが大切にしているのは教える側も教えられる側も共に育つ“共育”。共育を通じて、臨床技術だけでなく、看護に必要な人を大切にする、人に共感するという心を持つ人を育てたいと考えています」
人間形成とともに、新人からの臨床実践能力の向上にも力を入れる同院では、08年から高機能患者シミュレータを活用した模擬体験研修を導入している。同研修の研修担当も務めている、緩和ケア認定看護師で教育責任者の川村真紀さんは、次のように話す。「新人看護師が初めて夜勤を経験する際、大きな不安を抱えます。この不安を取り除き、各部署で適切な看護を実践できるように、9月に1カ月をかけて研修を行います。最初は指導者との1対1、次にチームでの急変対応を行います。2年目、3年目の看護師、また春先の指導者研修でも導入しています」。
この研修では、生体反応をコンピュータで設定できる精巧な人体モデルの高機能患者シミュレータを使用。出血性ショックなど4つのケースでの研修が可能で、間違った処置を行うと脈拍や心拍などの指標が悪化する。使用する器具も毎回新品を使うなど、徹底的にリアリティを追求している。
「教育で重要なのは、本物に触れることです。急変時の感情や感覚を体感しておかなければ、実際のベッドサイドで的確な処置を行うことはできないからです」(山中看護部長)
研修には、教育主任が常に同席する。研修生の看護観察・判断に対して、リアルタイムにアドバイスを送ることで、理解力と実践力を高めているのだ。「この研修で、自分にできることがわかり、今後の課題が明確になります。また刻一刻と変化するなかで、常に患者さんを看ることの大切さも教えています」(川村さん)
体感的に看護を学べるため研修生にも好評だ。ともにICU勤務で新人の東多恵さんと竹尾豊女さんは、「回数を重ねるごとに、スムーズに対応できたので成長を実感しました」(東さん)、「指導者の方から質問されるので、常に根拠を考えながら処置を行う意識がつきました」(竹尾さん)と語る。
スペシャリストの育成にも力を入れている同院では、専門・認定看護師の希望者を公募。試験に合格すれば研修中の費用と学習中の給与を病院が負担する制度も整えている。
現在、7人の専門・認定看護師が活躍中である。老人看護専門看護師の得居みのりさんは、認定看護師とともに地域医療連携室を開設。09年10月には、認知症看護相談の外来もスタートさせた。
「従来の院内での相談対応だけでなく、週に1回認知症の相談を受けつける、自立した形の看護サービスを提供しています。診療報酬にもかかわるので責任は伴いますが、専門性を主体的に活かせるのでやりがいは大きいですね」(得居さん)
さらに、09年11月には認定看護師を中心に同様のストーマケア外来を開設。10年4月には院内助産システムを活用した助産師外来を開設予定である。
「今後は、多くの後進を育てていきたい」と得居さん。専門性を最大限に活かせる場をつくることで、将来のキャリアの幅を広げている。
「スペシャリストが見本となることで、院内の看護レベルが高まります。専門知識を持っていれば、いつでも患者さんのもとへ駆けつけることができますし、医師とも同レベルで話し合える。看護師が主体的に働く環境づくりが、高い看護の提供にもつながるのです」(山中看護部長)。


