理念の一つに「地域医療への貢献」を掲げる東住吉森本病院。2003年には大阪府初の「地域医療支援病院」の承認も受け、地域医療のリーダーとしての活動に積極的に取り組んでいる。 そんな環境を最大限に生かし、保健活動を通じて地域医療への貢献を実践しているのが、09年4月に発足したヘルスケアチームだ。メンバーは保健師の資格を持つ5名の看護師。社会の高齢化が進む昨今、生活指導や健康教育を通じて疫病予防や健康増進に努める保健師の活動への期待が高まっているが、チーム発足のきっかけとなったのは、救急・総合診療部に所属する西口淑子さん(看護歴5年)の「保健師としてできることがあればいいのに」という何気ない一言だった。 「以前から、保健師の資格を活用したいという思いがありました。看護師長と話をしていたときには『でも、救急にいたら使うこともないですよね』なんて言っていたのですが、それが看護部長に伝わり、『健康志向が高まっている昨今、医療費の削減という観点からも予防医学が重要な時代。チームでできることを探して活動してほしい』と、ヘルスケアチームの発足が実現しました」 一看護師の思いと病院側の強力なバックアップから誕生したヘルスケアチーム。地域医療へのさらなる貢献を目指す同院において、その原動力となっているのは、同院の理念を受け継ぎ日々それを実践する看護師一人ひとりであることの証といえるだろう。
ヘルスケアチームのメンバーは看護歴4?6年の若手看護師だ。保健師としての活動経験もなく、発足当初は「何をすればいいのかわからない」という戸惑いがあったという西口さんだが、「保健師のための研修に参加したり、実際に保健師が活動する現場を見学したり、市役所で市民のニーズに関する情報を収集したり、保健師である恩師に相談したり……。院外のあらゆる機関に足を運んで、何ができるのかを模索しました」と、当時の努力を語る。
活動の第1弾となったのは、発足の翌月、5月12日の「看護の日」にちなんで1階待合室に設置した「体脂肪測定コーナー」。来院した患者さんの体脂肪を測定し、食生活などのアドバイスを行った。その後、同院の地域医療連絡室が地域の体育館などを利用して行っている血圧測定にも同行し、来場者一人ひとりへの保健指導を実施した。
さらに10月には、院内で定期的に開催している地域の人々を対象とした健康教室「よもやま塾」に講師として参加。事前に地域の人々へのアンケートを実施し、高血圧に悩む人、高血圧について知りたいと考えている人が多いというデータを踏まえ、高血圧の基礎知識、高血圧によって引き起こされる合併症の説明、高血圧を改善するための食生活や運動に関するアドバイスなどを盛り込んだ“血圧コントロール”をテーマとした研修を実施した。
活動が活発になるにつれて周囲のスタッフの理解や協力も得られるようになり、当初の目的である、同院の地域医療への貢献の活性化につながっていることは言うまでもないが、波及効果はそれにとどまらない。
「入職5年目になりますが、業務に慣れ、新人の頃のように自主的に勉強することもなくなって、看護師として行き詰まりを感じるようになっていましたが、ヘルスケアチームで活動するようになってからは、責任感も芽生え、今まで以上に仕事に大きなやりがいを感じられるようになりましたね。活動に際してあらためて勉強したことで、自分の知識に自信が持てるようになり、救急の業務にも生かせるようになりました」と西口さんは手ごたえを感じている。
活動が軌道に乗ったヘルスケアチームは、新たなミッションに向けて動き始めている。一つは、禁煙を必要とする人を対象とした禁煙指導。禁煙外来のある病院を見学し、指導マニュアルの作成に取り組む予定だ。もう一つが、主に糖尿病足病変の予防を目的としたフットケア。日本フットケア学会「フットケア指導士」の認定を取得したうえで、褥瘡回診に同行し、足病変の継続的なケアに携わりたいと考えている。「将来的には、禁煙外来やフットケア外来の開設につなげていけたらと思っています。開設するまでに、知識・技術を磨き、体制を整えていきたいですね」と話す西口さんは意欲的だ。
このような、メンバー一人ひとりのたゆみない努力と向上心が、ヘルスケアチームを、同院と地域医療の発展の一翼を担う存在へと成長させているのだ。


