神奈川県湘南の横須賀・三浦半島を主な診療圏とする横須賀共済病院は、病床数735床の地域密着型総合病院だ。三次救命救急センター、NICUなどを有する診療地域内の基幹病院として厚い信頼を得ている。
また、地域がん診療連携拠点病院としても、がん看護、緩和ケアに対応している。さらに回復期リハビリテーション看護で自宅復帰を図っている。
このように超急性期から回復期病棟および訪問看護ステーションまで、幅広い領域での継続看護を実現しているのが同院の特色だ。そしてもう一つの特色が、同院の看護師たちは笑顔を絶やさないということだ。
「時間外勤務は月平均およそ7?8時間です」と看護部は胸を張る。その背景には、徹底的な業務改善と意識改革の実践がある。
患者さんへの服薬指導は薬剤師が、病棟の医療機器の管理は臨床工学技士が担うというように、専門性を生かした業務分担と多職種連携を実現させたのだ。また「遊ぶ」「人を喜ばせる」など4つの基本で知られるフィッシュ哲学を導入して意識改革も図り、職員が楽しく活き活き働ける職場づくりにも取り組んでいる。
そんな同院の働く環境を「“ありがとう”という言葉が飛び交う職場」と表現するのは、消化器内科病棟に所属するH・Nさんだ。
神奈川県立保健福祉大学出身のH・Nさんは、2008年4月に入職した。横須賀共済病院といえば教育プログラムの充実や学ぶ意欲を支援する体制が整っていることで定評がある。だが、H・Nさんが同院を志望した動機はそのほかに2つあるという。
「1つ目は、超急性期から在宅まで、幅広い領域で看護に携われることです。看護師として成長するにつれ、自分が抱く関心も変化するかもしれませんし、結婚や出産といった出来事で人生の岐路に立つこともあると思います。どういうときにも、そのときの自分が実践したい看護領域で働けるのが魅力です」とH・Nさんはいう。
では2つ目は? この問いにH・Nさんは「働く環境の良さです」と笑顔で即答した。
H・Nさんは学生時代から、患者さんに常によい看護を提供し続けるには、看護師自身が健やかでいることが大切だと考えていた。そんなH・Nさんが病院見学の際に、同院で注目したのが二交替勤務だった。
「私はオンとオフのどちらも充実するには二交替勤務がいいと思うのです」というH・Nさん。同院の場合は、日勤、長日勤、夜勤という変則二交替制で、夜勤明けは2日連続休日を多くしている。そのため、夜勤明け当日を入れると2泊3日の短い旅が楽しめる。旅行だけではなく、スポーツに親しむ人、eラーニングや研修などの勉強にいそしむ人、家族との団らんを過ごすママさんナースなど、オフタイムの過ごし方はさまざまだ。
「オフタイムが充実していると、心身のエネルギーが充電できて、また頑張って働こうと元気がわいてきます」というH・Nさん。「先ほど“ありがとう”という言葉が飛び交う職場といいましたが、一人の社会人として充実した時間を過ごしているからこそ、お互いに思いやりや感謝の気持ちを抱きながら働けるのだと実感しています」と言葉を続けた。
この思いやりの気持ちが患者さんへのより良い看護を生み出す。H・Nさんがそのことを実体験したのは入職2年目の春だった。
H・Nさんの受け持ち患者さんで末期がんの男性が、疼痛に耐えながら「自宅に帰りたい。家族旅行をしたい。幼い子どもたちに思い出を残してやりたい」と切望していた。これを知ったH・Nさんは同じチームの先輩に相談。やがてチーム全体、病棟全体で患者さんの希望を叶えようと一丸となったのだ。
同院の臨床には、同じチームとしての“和”と患者さんを中心にした多職種連携の“輪”がある。患者さんのために、主治医をはじめさまざまな専門職種が連携した。その結果、疼痛緩和コントロールが可能となり、患者さんは自宅に帰ることができた。「家族そろって韓国旅行も楽しんだそうです。亡くなったときのお顔もとても安らかだったと聞いています」というH・Nさん。この経験がターミナルケアを究めたいという気持ちを強めたという。
「実際に患者さんに看護を提供することを体験できたことは、看護師としての成長につながる大きな学びでした」とH・Nさんは当時を振り返る。その表情は、働きやすい環境は、新人を温かく育ててくれる環境でもあったことを告げていた。


