東京の中枢機能を有する新宿・新都心にある東京医科大学病院。大学病院として診療、教育、研究という3つの機能を担う同院では、高次救命救急から終末期医療まで、常に患者さまを主体とした医療と看護を提供している。看護部では心のこもった看護を実践するため、主体的に学べる教育制度や働きやすい環境を整え、看護師をバックアップしている。
2008年に入職したGさんは、岩手県立大学看護学部を卒業後、聖路加看護大学大学院に進学し、助産師の資格を取得。助産師を目指した理由を次のように語る。
「初めは思春期保健や、命の教育に興味があり、養護教諭の道を考えていました。その過程で命の大切さについてより専門的な知識を提供したいと考え、助産師の道を選択。実際に助産師は、出産にかかわるだけでなく、女性の生涯を支える役目を担う、意義のある仕事だと思います」
現在、Gさんが勤務する産科病棟は、正常分娩だけでなく多胎や、切迫流早産、合併症をもつ妊婦などハイリスク妊婦の管理とともに、流産や死産で処置が必要となる方の精神的サポートも行っている。
「ひと言で出産といっても、その方の人生や環境によって異なります。個々の背景を踏まえたうえで、妊産婦さんとの信頼関係を築くことを心がけています。特にリスクを抱えた方への精神面の支援は不可欠です」
Gさんは以前、緊急に帝王切開となった方の精神的葛藤を十分に支えられなかったことがあった。そのときの経験から、心のケアの大切さをあらためて痛感したという。
「長期にわたり入院し、安静に過ごさなければならない方、疾患を抱えての出産、出産後に初めて新生児の異常が発見されるなど、つらい思いをされる方も少なくありません。個々の訴えや苦痛を受け止めて信頼関係を築き、少しでも出産が良い思い出になるように、また妊娠期から産後に至るまで前向きに生活できるように、妊産婦に寄り添ったケアが求められていると思います」
病棟では、帝王切開には助産師やNICUの医師も手術に立ち会える体制が取られている。たとえ手術であっても出産したという実感を持てるよう、NICU医師の協力のもと、出産直後に赤ちゃんと触れ合う機会を設けるなど、工夫している。
助産師の仕事は、妊娠前の指導、妊娠中の健康管理や精神的サポート、分娩介助、産後の母体管理、乳房ケア、新生児ケアなど、多岐にわたる。現在では性教育や子育て支援、不妊治療ケアなどの分野へと広がり、ひとりの女性のライフステージ全般を支援することが求められている。
同院では、妊娠初期から分娩・産褥期まで、妊産婦の各ステージに応じた継続的なケアに取り組んでいる。Gさんは分娩介助のほか外来勤務、新生児室勤務、妊婦の保健指導、ベビーマッサージ、退院後の指導などに携わり、妊娠期から産褥期まで継続した関係づくりに力を入れている。
「正常分娩の場合、病棟で妊産婦さんとかかわる期間は短期間ですが、外来勤務があることにより、その方の妊娠生活から退院後までトータルで見られることがメリットだと思います。また、産後の親子を対象としたベビーマッサージは、親子のスキンシップやリラックス効果に役立つと同時に、スタッフや母親同士の情報交換の場にもなっています」
同院では来年度から助産師外来を立ち上げる予定だ。妊婦健診や保健指導を通じて、安心して出産に臨めるよう妊婦への支援を強化していく。
同院には、看護者の成長をサポートする臨床看護師育成システムがある。これは、主体的・計画的・段階的にキャリアアップできるクリニカルラダーで、臨床看護師の発達段階と到達目標をレベルⅠ?レベルⅣに設定し、個々の成長度を正しく評価、アドバイスを行っている。Gさんも、充実した教育環境のなかでスキルアップを重ねている。
「病棟内では小児科や産科の医師による勉強会も行われるので、幅広い知識を吸収できます。また、新人でも先輩の指導のもと、多くの分娩に立ち合える環境があり、技術の向上につながっています。分娩介助では、医師と連携を取りながらも助産師が主体的に行動できるのも魅力です」
3年目は、看護研究に取り組む時期となり、現在テーマを模索中のGさん。これまでの臨床経験で培ったなかで、妊産婦の方々が求めているものは何かを検証して取り組んでいきたいと意欲的だ。
「無事に赤ちゃんが生まれることは達成感や感動につながりますが、それ以上に責任の重さを感じています。これからも常に冷静な判断力と迅速な行動力、細かな観察力を養い、リスクを抱えた妊婦の方にも、いいお産だったと思っていただけるようサポートしてきたいと思います」
お産だけでなく女性本来の生命力を引き出すことが求められる助産師の仕事を通じて、Gさんをはじめスタッフ全員が、看護師として、人間としても着実に成長している。

