地域の基幹病院として高度で良質な医療を提供している帝京大学附属病院では、最新医療を備えた高度な医療環境の下で、患者さんの権利を尊重した患者中心の医療、看護が実践されている。
2009年5月、屋上にヘリポートが設置された新病院がオープン。救命救急センターと総合周産期母子医療センターの機能拡充、ER病棟、循環器センターの新設により、救急医療体制のさらなる充実が図られた。なかでも東京CCUネットワーク施設でもある同院の循環器センターは、12床のCICUと26床の後方病棟の2つの隣接する病棟からなる。同じフロアに心臓血管造影室、手術室があり、迅速な検査や治療が可能だ。
その循環器センターのCICUに所属する入職1年目のS・Hさんは、実習先での急変対応の様子に強い印象を受けて、循環器センターを希望した。
CICUは、人工呼吸器や心電図モニターなど多くの機器が並び、いつ急変してもおかしくない重篤な患者さんが入院している緊張度の高い病棟だ。とくに術後や大動脈解離の患者さんは、刺激によってもバイタルに変動をきたすことが少なくない。
「ここでは常に担当する患者さんの病態をしっかり把握し、細心の注意が必要です。病態については医師や先輩が勉強会を開いてくれるので、一生懸命に勉強中です。それに先輩たちが優しく指導し、フォローしてくれるので、安心して患者さんとかかわることができます」とS・Hさんは話す。
重篤な心不全で人工呼吸器を装着していた患者さんが、再挿管を経た後に回復、退院したケースがあった。入院当初は状態が安定せず、苦しそうにしている患者さんをケアするのは、S・Hさんにとってもつらいことだったが、患者さんと共に、最後まで頑張ってよかったと、看護の喜びを感じたという。
そして、この1年を振り返り、次のように語った。
「先輩のような看護をまだ提供できない分、患者さんの苦痛を和らげるために、気持ちを一つでも多く読み取れるように努力してきました」
2年目のS・Hさんの目標は、CICUでの看護のさらなるステップアップだ。病態理解や人工呼吸器、心電図モニターに関する知識を深めること、それによって患者さんを観察する視点が広がり、容態や状態から必要な看護ケア、留意すべきことも見えてくるとS・Hさんは考えている。
「がん性疼痛看護と緩和ケアで分野は違っても、がん看護について専門的な学びをしたエキスパートとして情報や意見を交換したり、アドバイスをし合えるのでとても心強く、そこが当院の緩和ケアチームの特徴の一つになっていると思います」
こう話すのは、緩和ケアチームのがん性疼痛看護認定看護師のM・Tさん(看護歴11年)。同院では07年に緩和ケアチームを発足、09年から本格的に活動を開始した。プライマリーラインのメンバーである医師と認定看護師が1組となり、2つの班を形成。分担をして依頼を受けた病棟に出向き、患者さんに直接ケアすることもあれば、病棟スタッフを指導することもある。毎日、介入方法を評価し、週に1回は多職種によるカンファレンスを開く。
「私たちの介入により、病棟スタッフの緩和ケアに関する知識が増え、提供できるケアが増えていく。そんなスタッフの成長した姿をみることも大きな喜びです」と話すのは、同チームのもう一人の認定看護師である、緩和ケア認定看護師のA・Mさん(看護歴11年)。
2人とも緩和ケアチームの専従看護師として日々ケアにあたり、患者さんの退院後の療養についての相談や、スタッフへの教育も担っている。
この緩和ケアチームと病棟との連携で重要な役割を担うのが、各病棟に1名ずつ配置された緩和ケアコアナースの存在だ。その一人、外科病棟のK・Mさん(看護歴14年)は、同チーム発足当初から活動している。K・Mさんは以前、「終末期の患者さんに十分な対応ができなかったことがあり、悔いが残った」と話す。それ以来、院外研修や日本緩和ケア学会のセミナーに参加するなど、積極的に学びを深めてきた。
その結果、K・Mさんは「患者さんの心に寄り添い、根拠に基づいた説明を行うなど、患者さんや家族から信頼を寄せてもらえるようになった」という。
K・Mさんは現在、病棟における患者さんの状態を把握し、必要時、緩和ケアチームと連携がとれるようにしている。「緩和ケアは24時間継続提供することが大切です」と、スタッフ全員が同じ気持ちで看護を行うことを目指している。
緩和ケアチームの本格的活動から1年。チームの存在も院内で注目されるようになったが、M・TさんとA・Mさんは、「もっと院内にアピールして、有効活用してもらいたい」と、各病棟で勉強会を積極的に行うなど、緩和ケアの向上に努めている。

