最高水準のがん医療の提供を目的に設立された国立がんセンター中央病院は、がん対策の中核病院として先駆的治療・診断法の開発、それに携わる医療者の育成を担っている。
同院では「がん診療の要は看護」と考えており、看護部は「患者さんのニーズを大切にした最良のがん看護を創造し、提供する」ことを理念としている。そうした質の高い看護を提供できる看護師を育成するため、充実した院内教育プログラムが整備され、活用されている。
その教育プログラムは、3年間でがん看護や看護の基礎を学ぶ「ベーシック研修」、経験年数にかかわりなく関心のある専門領域を学ぶ「エキスパート研修」、病棟に知識や技術を還元するコアナース養成を目的とした「アドバンス研修」からなり、キャリアや個々のニーズに応じて学ぶことができる。日々の臨床実践と効果的な教育により系統的にがん看護を習得できることが、同院の最大の特徴でありメリットといえる。
造血幹細胞移植病棟に勤務するCさんは、がん患者の家族の立場を経験し緩和ケアに関心をもったことが、入職のきっかけとなった。
骨髄移植はほかの血液疾患と比べ全身に強いダメージを及ぼす治療が多く、感染症や合併症のリスクも高い。退院後の日常生活にも制約が多いため、患者指導が重要なケアの一つになっている。それだけに、確かな知識と経験が要求されるため、キャリアのある看護師が担当する。
入職して4年のCさんは、昨年からその患者さんへのオリエンテーションを担当することになった。
「移植によって激変する生活を患者さんが受け止められるよう支えるのが、看護師の役割だと思っています。少しでも移植後の生活がイメージしやすいよう、できるだけ具体的な説明を心がけています」(Cさん)
これまで先輩のオリエンテーションに同席・見学して学んだほか、退院後に病棟を訪れる患者さんの実際の声を聞き、ニーズをとらえ、オリエンテーションに反映させてきた。
「がん医療・看護に関する基本は集合研修で学びますが、それ以外にも職場には専門看護師などのスペシャリストが多く、日常的に助言や指導をしてもらえるので、臨床もまた学びの場なのです」
Cさん自身も、関心のある分野をより深めたいと、昨年からエキスパート研修の「緩和ケア」と「放射線IVR看護」を選択、学んでいる。追求したい専門分野が定まれば、将来的には認定看護師の資格取得も考えているという。
1日に1,000人ほどの患者さんが来院する同院の外来には、診察を行う第1外来と、内視鏡や化学療法など治療を行う第2外来がある。
その第1外来、婦人科・泌尿器科に勤務するのがDさん(看護歴5年)だ。Dさんは、入職3年目に妊娠して産休に入り、9カ月後の昨年4月に職場復帰した。
同院では、出産予定日6週間前からの産休と3年間の育児休業、育児・保育短時間勤務、院内保育園などの支援制度がある。Dさんは現在、育児短時間勤務を利用して10時?15時40分までの勤務に就いている。
「育児支援制度を活用することで、子どもに無理をさせることもなく、余裕をもって両立ができています」
Dさんは妊娠当時、胃外科・消化器内科病棟に所属していた。新人の頃は看護観も定まらず技術も未熟だったため、つらい思いもしたというが、多くの患者さんとの出会いから自分なりの死生観や看護観をもつようになると、自然に患者さんとのかかわり方も変化してきた。心を開いてくれる患者さんも増え、やりがいを感じるようになっていた3年目の頃、妊娠がわかった。
「もっと看護を必要としている人の力になれるかもしれないと思う反面、難しい局面での自分の未熟さも感じていました。自信と喜び、もっと学びたいという意欲が生まれ、まさに看護の楽しさを実感している時期だったので、このまま辞めたくないと強く思いました」(Dさん)
当時、病棟には4人の子どもをもつ先輩がいた。その姿を見て、働きながら子育てをするということが具体的にイメージでき、また産休中に病棟を訪れ日々進化する現場の情報を得ていたことで、復帰への不安も小さくなっていったという。
「頑張ろうと思えたのは、周囲の励ましとサポートのおかげ。復帰後は、子どもが熱を出し欠勤する時にも『お互いさまだから』といって理解し調整してくれるので、安心して仕事を続けることができています」
婦人科外来を訪れる患者さんに対しては同性として心痛を感じることもあるというが、看護師としての専門性を高め、患者さんの力になりたいと前向きだ。昨年は幹部看護師任用候補者選考試験も受け、今後のキャリアアップも視野に入れている。
看護師として、また女性としての選択や生き方をサポートする職場環境が、スタッフを支え、仕事のやりがいや意欲向上にもつながっている。

