旭中央病院は、956床、37診療科を擁する大型総合病院だ。その診療圏人口は100万人を超え、エリアは千葉県東部から茨城県鹿島地区にまで及んでいる。周産期医療センター、千葉県最大規模の人工透析センター、がんや心臓病、脳神経疾患の診断に有効なPET画像診断センターなど最新設備も備え、常に先進的な医療に取り組む一方、緩和ケア病棟や24時間体制の救命救急センターなどで地域医療に貢献して来た。
幅広い領域で質の高い看護を実践する同院には、全国の看護大学から多くの卒業生が「看護師としての基礎をここで築きたい」と集まってくる。2009年4月に入職した産科病棟の新人助産師、I・Nさんもそうした一人だ。
同院では産科と婦人科に分かれている。産科病棟のスタッフは全員助産師で、外来と連携をとりながら年間約1,200件の分娩を扱っている。
山形県出身のI・Nさんは、筑波大学医学専門学群看護学類在学中の実習先が同院だった。「そのときに患者さんに対してはもちろんのこと、助産師同士のやりとりがとても温かくて、学生にもきちんと名前で呼びかけてくれました。この病院なら、のびのびと働けるのではないかと思ったのです」とI・Nさんは振り返る。
周産期医療センターを備えていることから、ハイリスク妊娠による入院も少なくない。「ハイリスク妊娠の場合、入院や安静の時期が長期化するためストレスを感じることも多いので、ベッドサイドでのメンタルケアを心がけています」というI・Nさんの表情は明るく意欲にあふれている。
毎月100件前後のお産があり、助産師は分娩介助だけではなく、さまざまなケアも行う。「たとえば、母乳が出ないと悩むお母さんに私が専門職として助言して、母乳が出るようになって、その母乳で赤ちゃんが健やかに育つと、助産師としてのやりがいを実感します」というI・Nさんから、働く楽しさが伝わってきた。
同院では、職場全体で新人を温かく受け入れて、一人前に育つまで的確に指導するという人材育成方法が定着している。安心して働ける環境があるからこそ、I・Nさんのように、新人が仕事のやりがいや楽しさを感じながら、おおらかに成長していくのだろう。
もう一つ、同院では新人看護師のために配慮していることがある。それが、新人教育プログラムの一環で行われる集合研修「フレッシュナースの会」だ。入職後3カ月頃の夏と半年後頃の秋に行われるこの集合研修では、各グループ10人前後でさまざまに語り合いながら、それぞれの振り返りと成長の確認をし、互いに親睦を深める。
「大卒の新人は、それぞれ目的を持って、一人で入職してくるケースが多いのが特徴です。各病棟での先輩たちとの絆を深めるだけではなく、同期の仲間との親睦も深めてほしい。そして、当院に心の根をはってほしいという思いをこめて始めました」と看護部は説明する。
そのフレッシュナースの会でI・Nさんと出会い、同期の友になったというのが、腎臓内科病棟に所属するT・Mさんだ。青森県出身のT・Mさんは、弘前学院大学看護学部の第1期卒業生だ。急性期から地域医療まで幅広い領域の看護を経験しようと、同院に入職した。
配属先の腎臓内科は、慢性腎不全や糖尿病性腎不全などにより、透析導入となる患者さんが多い。入職3カ月目に受け持った50代の男性患者さんもその一人だったが、透析導入を受け入れられなくて悩んでいた。
どうして受け入れられないのだろうと思ったT・Mさんは、プリセプターに相談。その助言で、患者さんの話に耳を傾け、気持ちの整理ができるようにした。「私自身、実習でも経験がなく、腎臓内科や透析は机上の知識だけでした。それで、患者さんにわかりやすく説明できるように勉強して、患者さんの質問にも懸命に答えるように努めました」とT・Mさんはその頃を振り返る。
誠実な努力のかいがあり、やがて患者さんは透析導入を決意した。患者さんの心に寄り添うT・Mさんの看護が、患者さんの心を動かしたのだ。それはT・Mさんにとって、初めての、そして忘れられない看護実践体験となった。「そのとき、やっとこの病院の看護師になれたと実感しました」とT・Mさんはいう。
病棟全体で温かく新人を育てることも、一人で入職してくる看護師にも配慮する看護部の細やかな教育プログラムも、知識や技術の源にある「看護の心を育むこと」につながっている。同院のフレッシュナースは、こうして羽ばたき、自立していく。


