
外科・消化器科病棟ナースステーションでのカンファレンス。左から2番目がNさん、その右隣が今年で3年目を迎えるIさん、右端がI師長
「ここ10年は、入職1年以内に辞めていった新人はいません。それは、新人一人ひとりをゆっくり丁寧に育てている当院の新人教育がみごとに功を奏している結果だと思います。これからも全スタッフで丁寧に、そしてますますゆっくりと育てていきたいと思っています」
このように新人教育について語るのは、西横浜国際総合病院の看護部長・Oさん。これまでも「1年間で一人前に」を目標に新人研修も、各病棟で行われる実技指導も、最初はゆっくりと、一人ひとりのペースに合わせて進めてきた。「医療の高度化と、看護師不足から、病院としてはどうしても早く一人前になってもらおうと、次々と新しいことを教えなくてはと考えがちですが、それでは新人たちはつぶれてしまいます。特にこれまで『ゆとり教育』で育ってきた人たちに、厳しく詰め込んでも無理だと思います。それでなくても、1年目というのは、周りの先輩看護師たちがすごくできるように思えて、『まだできない』という焦りと不安でいっぱいなのです。そんな気持ちを各病棟のスタッフたちが理解してあげ、優しく丁寧に教えてあげることが大切です。看護師という仕事は、学校を卒業して入職する最初の出会いや、環境が非常に重要ですね」
もう一つ、同院の新人教育の特徴は、「リフレッシュ研修」と呼ばれる郊外研修だ。毎年、春と秋に実施されており、昨年の秋は神奈川県鎌倉でオリエンテーションを行った。「五月病」と言われる春ばかりでなく、秋になれば「そろそろ一人前に」という周りの期待にも応えようと焦る時期でもある。「そんな時は、気分転換を兼ねて、病院の外に出て楽しむことも大切です。そこでまた、同期の仲間と会い話をすることで、『できないのは自分だけではない』と感じ、もう少し頑張ってみようと思えるようです」とO看護部長。
新人採用者オリエンテーションに始まり、フォローアップ研修やメンバーシップ研修、看護過程、そして1年目の終わりには「症例発表会」がある。こうした研修を、タイムリーに組み込んでいるのも、新人教育の特徴だ。
先輩看護師のNさんから指導を受けるIさん。Nさんは「素直に聞いてくれるので覚えが早い」とIさんを評価する
各病棟では、1年間にわたって、新人看護師にプリセプターがマンツーマンでつき、現場での指導を行い、さまざまな相談に乗るなど、精神面でもフォローしている。しかし、プリセプターだけに新人を任せるのではなく、教育係やリーダー、師長まで、病棟の全スタッフたちが新人を見守り、フォローしている。
2階外科・消化器科病棟の特徴を、師長のIさんは次のように説明する。「消化器疾患の患者さんのほかに眼科や耳鼻科の術後の患者さん、がんのターミナル期の患者さんまで、疾患が多様化しているうえに、入退院が激しい忙しい病棟です。新人看護師にとっては、大変なことも多いと思いますが、それでも途中で辞めることなく、頑張ってくれているのがうれしいです」 I師長が特に新人看護師に対して、繰り返し言っていることは、「少しでも不安に思ったことは必ず確認する」こと。忙しいと伝えるべきことを忘れてしまったり、伝えたと思っていても、実は伝わっていなかったりということになりがちだ。「お互いに声をかけ合う、必ずメモに残すことを徹底しています」とI師長。インシデントを防ぐには、一つひとつの確認が大切だ。「この病棟の良さはチームワークです」とI師長がいうように、新人に対する指導も、全スタッフで見守り、時には先輩から声をかけて指導するなど、チームワークよく行われている。I師長も年2回の面談のほかに、時間を見つけては新人の話を聞くようにしている。


新卒で入職し、同病棟で今年3年目を迎えるIさんは、「病院見学に来た時、看護部長や病院の雰囲気がとても温かく感じられ、働きやすそうだった」と、同院を選んだ理由を語った。そして新人の頃を次のように振り返る。「とにかく忙しい病棟で、先輩にどう聞いたらいいかもわからなくて、不安でいっぱいでしたね。特にドレーン類がたくさんあり、術式によって違ってくるので、それを理解するのが大変でした。そんな時、プリセプターから声をかけてくれ、細かく教えてくれました。その先輩がいたから、今があると思います」
一方、同病棟のIさんの先輩の一人、Nさん(看護歴5年)は、「とても素直で、教えたことも素直に聞き入れてくれるので覚えも早く、患者さんに対しても、いつも優しくて親切に接してしいます」と、Iさんの印象を語った。
Nさんたち先輩看護師も、忙しい病棟ゆえに、新人に目が届かないことがないように、看護面や精神面に気を配る。「大丈夫?」と自分から声をかけ、なるべく聞きやすい雰囲気になるように努力している。
またNさんは、「急性期からターミナルまで、疾患も幅広く大変ですが、その分、さまざまな患者さんをケアすることで看護の幅が広がり、視野も広がる」ことが、同病棟の看護の魅力だという。「丁寧にゆっくりと新人を指導する」スタンスで新人を受け入れて、すでに10年。現在では新人を指導する先輩看護師たちも、ゆっくり丁寧に育てられてきた人たちだ。新人たちの最初の歩みはスローペースでも、1年後には確実に成長できることを先輩看護師たちが示している。