2018年就職:TOP > 国立国際医療研究センター病院、東京都立病院 広尾病院 | 外国人患者受け入れの医療と看護 2018年度

THE LEADING NURSE

外国人患者受け入れの医療と看護

外国人患者受け入れの医療と看護

国際化が進む中で、今後ますます日本に在住もしくは訪問する外国人の増加が予想されます。
医療現場においても外国人患者向け医療サービスの拡充が求められ、
受け入れ体制を整える病院が増えてきました。
将来、語学力を生かして患者さんをサポートしたいという目標を持つ看護学生の方々に、
国立国際医療研究センター病院と東京都立病院 広尾病院が行っている、
外国人患者受け入れの取り組みを紹介します。


国立国際医療研究センター病院

語学力だけでなく文化・風習を理解し、
さまざまな異文化に対応できる能力が必要

 国内において急増する外国人患者さんに対応するため、医療・看護界でも、世界に目を向けることが求められている。近年、海外医療活動への参加や語学留学などを希望する看護師も増え、個々の海外に向けての意識も高まっている。
 2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、国際化を視野に入れている病院では、外国人が安心して医療を受けられる環境の充実を図る目的で「外国人患者受け入れ拠点病院」や、「JMIP(外国人患者受け入れ医療機関認証制度)」など第三者機関の評価認証を取得し、体制を強化している。
 さらに院内のハード面の充実にも力を入れ、案内表示、説明書やパンフレットの多言語表記、タブレット端末を使用した問診票の導入、翻訳ソフトの活用など、診察をスムーズに受けられる環境を提供している。同時に外国人に対応する医療コーディネーターや医療通訳を配置している病院もあるが、まだ万全といえる病院が少ないのが現状で体制の整備が急がれている。
 外国人患者さんの対応での課題は、「言葉の違い」「文化・習慣の違い」「生活背景の違い」が挙げられる。患者さんと接する機会の多い看護師に求められるのは、語学力や文化・風習への理解、コミュニケーションスキルなど多岐にわたる。こうした背景から、職員を対象とした語学研修や異文化を学ぶ講座などを開催し、レベルアップに取り組む病院も増えている。生活背景に関しては永住者、旅行者、救急など個々の背景や状況が異なるので対応に配慮しなくてはならない。
 外国人患者さんにとって、異国で病気やけがをしたときの不安は計り知れないものがある。対象がどのような国籍や疾患であっても、必要な医療を受けられるよう、正しい情報提供が重要となる。看護の現場では、日本人と同様に患者さんのニーズは何かを把握し、医療やケアの提供を行っていく。そして文化の違いを理解したうえで、患者さんの思いに気づき、個別性を重視してサポートすることが大切だ。
 看護師の役割が拡大するなかで、語学力だけでなく、さまざまな異文化に柔軟に対応できる能力を身に付けることが求められてくるだろう。

東京都立病院 広尾病院


国立国際医療研究センター病院

個室病棟(2011年入職) 東京都出身/都立南多摩看護専門学校卒業 赤津 由美さん

退院されて外来診察に来られた患者さんが、病棟まで足を運び、現在の近況を知らせてくれたときに、やりがいを感じるという。

世界に通用する仕事をしたいと思い、
看護師になることを決意

 大学を卒業するまで海外で生活し、世界で通用する仕事をしたいと模索していました。ある看護師の方との出会いから、看護師になることを決意。入職したときから、個室病棟に勤務しています。
 病棟では外国人の方も入院されていますが、伝えたいことすべてが通じるわけではなく、まだまだ言葉の壁の大きさを感じています。同時に言葉だけでなく習慣、風習、宗教などの違いを理解することが求められ、個人の価値観を尊重し、情報を共有し歩み寄ることが必要です。 当院には国際診療部があり、外国人の方が医療を必要とした際のサポートを行っています。英語以外の言語にも対応し、食事や日常生活の情報を聞き取り、患者さんの不安を軽減します。病棟でも、国際診療部と連携し情報を共有しています。
 入院される患者さんは日本在住で治療目的の方が大半を占めますが、旅行者で海外渡航中に感染症を発症する方もおり、隔離するケースもあります。英語圏の方に加え、アジア系の方も増える傾向にあります。

言葉や文化の違いはあっても、
患者さんにかかわる姿勢が大事

 看護を実践する際に大切なことは、言葉は話せなくても患者さんの苦痛をくみ取り、その思いに寄り添う気持ちを持つこと。日本人でも外国人の方でも、患者さんの不安は同じです。「話せないから担当しない」ではなく、単語でもジェスチャーでも伝えることは可能です。入院生活が長引く場合は、患者さんも日本語を覚えて徐々にコミュニケーションも取れていくので、患者さんに親身にかかわる姿勢が重要となります。外国人の方と接するなかで自分の思いを伝え、相手の思いを引き出す難しさはありますが、それは国籍に関係なく大切なことだと思います。
 今は2カ国語を話せるのは当たり前の時代になってきました。自分自身も現在、独学でタイ語を勉強中です。
 2020年のオリンピック・パラリンピックに向けて、これまでの経験を少しでも生かせればと考えています。国籍にかかわらずひとりの患者さんと向き合う必要性を実感していますが、病棟での経験を積み重ね、将来は国際協力にかかわっていくことが目標です。

看護部長からのメッセージ

研修で国際看護の視点からの学びを深める

看護部長 木村 弘江さん

 当院では以前から、外国人患者さんの受け入れに取り組んで来た歴史があります。さらに診療を円滑に進めるため、都内の病院としては初めて「外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP)」の認証も受けました。
 そして近年の外国人患者さんの増加に伴い2015年に国際診療部を立ち上げ、外国人の受診希望者の相談対応や、日本在住者の方が医療を必要とした際の充実した支援を提供しています。国際診療部には現在4名の医療コーディネーターが在籍。全員が英語堪能な看護師で患者さんの対応から相談まで、さまざまな調整を実施しています。
 言語サポートの必要な方には英語、中国語、韓国語に対応できるスタッフによる、外来での支援や電話通訳も行っています。また祈祷室の設置など患者さんの生活背景も考慮しています。
 国際看護を展開するためには、スタッフの語学力と知識の向上が求められます。全職員を対象とした語学研修では、英語のほかフランス語、スペイン語、ベトナム語などの講座も開かれ、スキルアップを図っています。またグローバル社会を視野に入れ、院内教育プログラムに「国際医療協力研修」を設け、国際医療協力や看護職海外研修など、国際看護の視点から学べる教育環境を整え、人材を育成しています。

TOPIC 1

渡航にかかわる医療を提供するトラベルクリニック

国際感染症センター内にあるトラベルクリニックでは、渡航にかかわる適切な医療を提供している。海外での活動経験が豊富な専任の医師が診療に当たっている。渡航前の健康診断、予防接種相談、帰国後の体調不良時の相談・検査・診療などを実施している。日本語と英語併記のオリジナルの予防接種手帳など、外国人にも対応している。

TOPIC 2

感染症やエボラ出血熱対策の訓練を実施

特定感染症指定医療機関であり、未知の感染症やエボラ出血熱の患者さんを受け入れる病床がある。エボラ出血熱を想定したPPE(個人防護服)の着脱手順の訓練、必要な物品の準備など、本格的な訓練を定期的に実施している。担当スタッフは、いつ患者さんが来ても対応できるよう万全の体制を整えている。

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梶本 莉羽さん

五十嵐 優美さん


東京都立病院 広尾病院

患者支援センター医療コーディネーター 福岡県出身/日本医科大学看護専門学校卒業 岡内 真由美さん

文化や風習などの知識も求められるため、院内・院外研修への参加や、インターネット、書籍などで情報収集しているという。

外国人患者さんがスムーズに
治療を受けられるようサポート

 大学病院で2年間勤務した後、8年ほどカリフォルニアへ語学留学に行きました。現地ではアルバイトで病院に勤務するなど貴重な経験を積みました。帰国後、2009年から当院の救急外来へ。2016年8月に患者支援センターに異動となりました。
 患者支援センターのスタッフは看護師3名、ソーシャルワーカー6名、事務職4名で、現在13名で患者さんやご家族からの相談を受けています。支援内容は入院に関する質問や案内、在宅支援、退院調整、医療費などの相談、地域の医療機関の紹介など多岐にわたり、必要に応じて他部門とも連携しています。院内通訳は、看護師1名、薬剤師1名、ソーシャルワーカー2名、事務職1名で構成され、現在は外国人患者さんがスムーズに治療を受けられるよう、診察手順の説明などの通訳を行う医療コーディネーターとしての役割を担っており、診察時に同席して通訳を行う場面も増えています。

異国での病気という状況に加えて
言葉の通じないストレスに寄り添う

 以前から地域の大使館関係者の方が受診されていましたが、最近では旅行者も多くなり、アメリカやヨーロッパ圏だけでなく、オーストラリア、フィリピン、アフリカなど国籍も多様になっています。
 患者さんへの対応で必要なことは相手の心理を分析する力と、わかりやすい言葉で敬意を持って説明することです。理解できるまで時間がかかることもあるので、患者さんと向き合う忍耐力も必要です。言葉が通じないストレスは、私たちの想像を超えるものです。まず患者さんの話を聞き、文化の違いを理解し対応することが必要です。その一方で説明を曖昧にせず、できることと、できないことを最初にきちんと伝えることが大事です。例えば救急外来で救急搬送された方の意識が戻ったら、状況を説明して医療費の支払いが発生することを伝えます。こうしたケースでは通訳のできる医療ソーシャルワーカーが、患者さんやご家族に診療費の説明を迅速に行い、支払いに関するトラブルを回避しています。
 今後もますます増えると思われる外国人患者さんに対して、病院全体で受け入れ体制の整備を進めています。部署を越えた連携も強化され、職種に関係なく個々のスタッフが尽力しています。

看護部長からのメッセージ

国籍にかかわらず患者さんに適切な医療を提供

看護部長 小坂 智恵子さん

 2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、訪都・在留外国人の増加が見込まれるなか、都立病院のなかでは広尾病院が最も多くの外国人患者さんを受け入れています。当院は「外国人患者受け入れ拠点病院」の指定を受け、さまざまな取り組みを行っています。都立病院のなかで先陣を切り、2017年2月に「JMIP(外国人患者受け入れ医療機関認証制度)」の受審が決定。多言語による診療体制の整備を図り、外国人の方が安心して医療を受けられる環境を提供します。具体的には、院内の表示板や説明書の英語表記の併用、外国人患者対応マニュアルの整備(患者さんの窓口となる予約電話、来院時の総合案内や初診受付窓口での対応)、翻訳ツールの導入などです。ソフト面では外国人講師から医療用語を学び、院内の語学リーダーを養成する「職員のための語学研修」、各宗教の概要とタブーや医療制度の違いなどを学ぶ「異文化理解研修」など、東京都病院経営本部主催の研修も多くの職員が受講し、職場で活用しています。
 外国人患者さんの受け入れに際しては、医療事情や文化の違い、生活背景の違いがあることを念頭におくことが必要です。私たちは自国の患者さん同様、どの患者さんに対しても個々のニーズを把握し、安全で安心な質の高い医療・ケアの提供を基本としています。

TOPIC 1

タブレット端末でスムーズな診療へ導く

外国人向けの医療サービスのひとつが通訳アプリ。ワンタッチで英語、中国語、韓国語、タイ語、ロシア語の通訳に対応している。外国人患者さんとのコミュニケーションも円滑になった。外来ではタブレット端末を使用して、問診を行うシステムも導入。画面に英語の質問が表示され、患者さんは指でタッチして回答する。

TOPIC 2

災害を想定した災害図上訓練に取り組む

2004年に災害医療対策施設「レドマス広尾」を開設以来、東京DMAT、日本DMAT、救護班派遣などの実績を重ね、現在23区唯一の基幹災害拠点病院として災害対策などの研修や訓練に取り組んでいる。外国人患者にもわかりやすい避難表示や避難誘導マニュアルを用意している。

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岩間 未央さん

安生 健太さん