近畿大学医学部附属病院 堺病院/奈良病院 一人ひとりの目標とペースに合わせて成長していける環境づくりを推進

医師を交えたカンファレンスでは、患者さんの家族関係や現に困っていらっしゃる問題などについても話し合い、看護方針を定めていく

病院DATA

医学部開学/
1974年4月
開設者/
学校法人近畿大学附属病院
附属病院
開設/
1975年5月1日
病床数/
963床
堺病院
開設/
1999年3月1日
病床数/
310床
奈良病院
開設/
1999年10月1日
病床数/
469床

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「人に愛され、信頼され、尊敬される人を育成する」という大学の教育理念のもとに医療技術向上を進めてきた近畿大学医学部附属病院。東洋一の規模を誇る、大阪南部で唯一の大学病院として、1975年に開院して以来、高度医療を地域に提供する重要な役割を担ってきた。「患者さん本位の明るい病院」をめざす同院の姿勢はそのまま看護部の雰囲気となって表れている。

看護師の積極的な情報収集が患者さんの「安心」を支える

近畿大学医学部附属病院の看護部では、近年の医療環境の変化をチャンスと捉え、看護師の役割拡大、チーム医療の推進、専門性をもつ看護師の活用と効果的な活動ができる体制づくりに取り組んでいる。今回、取材に訪れた90病棟でも、看護師一人ひとりの成長に向けた環境の充実ぶりを見て取ることができた。
90病棟は肝胆膵外科、消化管外科、乳腺内分泌外科の病棟だ。全41床で、1カ月に入退院と手術がそれぞれ90件あり、在院日数は平均10日ほど。乳腺関係の患者さんの場合は4~5日とさらに短く、看護展開もテンポが早いのが特徴だ。そのため、どのタイミングでどの情報をセレクトして収集するか、時間のないなかで密度の濃いコミュニケーションが求められる。

「入院前の段階で、医師から患者さんへの告知・説明の場に看護師が同席し、入院から退院までの看護計画を練るために情報収集を行います」と看護長のMさん。このとき、患者さんの普段の生活状況を可能な限りヒアリングして、安心して入院できる環境づくりを心がけている。患者さんへのアンケートでは「看護師さんが同席してくれることで安心できた」という声も多く、好評だ。また、毎週開かれる医師のカンファレンスにも看護師が積極的に参加し、情報共有に努めている。

専門・認定看護師や研修生、優れた先輩が後輩の目標に

同院では固定チームナーシング方式をとることで、看護師一人ひとりが責任をもって質の高い看護を継続して実践している。看護師にとってはやりがい感や自己実現がめざせる看護方式だが、とくにチームリーダーを経験することが看護師の成長を促すとM看護長は言う。2009年にリーダーに指名されたM(入職7年目)さんも成長を実感する一人だ。「メンバーから連絡・報告を受け、師長・主任に伝えたり、メンバーの相談に乗ったり、新人の指導をしたりという役割を経験したのですが、自分はまだリーダーシップの部分で不十分だと感じました。リーダーを経験することで次の目標が見えてきたという気がしますね」

Mさん自身も、病棟に配属されて3年ほどたった頃、ちょっとした注意不足で失敗が続き、看護師を辞めようかと悩んでいた時期があった。そんなとき励ましてくれた先輩の「一気にステップアップしなくても、あなたのペースで一つひとつクリアしていけばいいよ」という言葉がMさんを支えている。その先輩はいまもMさんの目標だ。

そして別の先輩の影響を受けたことがもうひとつ。Mさんは認定看護師に向けてスキルアップしたいと考えるようになったのだ。「90病棟には皮膚・排泄ケア認定看護師の先輩がいらっしゃるので、その方から話を聞いたり、相談に乗っていただいたりしています。私もゆくゆくは資格取得をめざしたいですね」 同院には現在、専門看護師2名と認定看護師8名が在職。それぞれが各部署で専門知識と技術を活かし、患者さんへのケアとスタッフ教育にあたっている。

「まだまだ人数も認定領域も増やしていきたいので、やる気のある方にはできる限り研修に進んでいけるよう支援していきたいですね」とA看護部長は、スペシャリストの育成に意欲的だ。同じ病棟で専門・認定看護師とともに働くことが一般スタッフにとってはステップアアップへの動機づけになるという。また、同院は多くの大学院のCNSコースの実習施設となっているため、毎年5~6校から優秀な院生が研修に訪れる。こうした学ぶ意欲あふれる外部の人材から受ける刺激も大きいとのことだ。

“ 一歩の幅”は違っても目標に向かって着実に

学び続けたいという意識が高いMさん(入職7年目)。高校卒業後、会社員として4年間働いてから看護の道を志しただけに、専門的な知識・能力をつけたいという意欲は旺盛だ。「まだまだ専門的な資格を取るのは難しいと思うのですが、90病棟にはがん患者さんが多いので、がん看護に必要な知識を学んでいきたいと思っています」

このためMさんは昨年、がんの疼痛ケアに関する院内研修に参加したという。またMさんの場合、昨年だけでも乳がんについての院外研修や日本クリニカルパス学会、日本看護学会の看護総合の研修などに参加している。看護部が院外研修にも積極的な参加を呼びかけ、希望者があれば勤務調整を行い、研修に送り出しているのだ。

「ただし研修を受けただけで学んだ気にならないで、それを現場での実践といかに結びつけていくかが大切。そのために専門・認定看護師が指導面で果たす役割は大きいと思っています」とA看護部長。個々人によって“一歩の幅”は違うかもしれないが、とにかく前に進みたいという人を応援したいと語る。

そのために活用しているのが目標管理制度だ。「全員に毎年、自己申告書を書いていただきます。自分がいまどんな目標をもっていて、どういう方向に進みたいか、そのために部署異動を希望したいということであれば100%対応しています」

同院では院内保育所や、夜勤のない働き方のできる日勤看護師の制度も整えている。ひとりの女性として人生を豊かにしながら、職業人としては看護の実践能力を磨き、長く働き続けてほしいというのがA看護部長の願いだ。「とにかく明るく楽しく、元気に働ける職場をめざしています。自分がどういう看護をしたいのか、どんな看護師になりたいのか、目標をもっていただければ私たちもできる限り応援します。一人ひとりが伸びていくことが近畿大学医学部附属病院の看護全体の質を上げることにつながると信じているからです」

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「きちんとした挨拶とコミュニケーションができるように。そのためにはまず相手に関心をもって」と、A看護部長はつねにスタッフに呼びかけているという

会社員時代を経て看護師になったMさん。「看護職は多くの人と接する仕事です。責任が増えたぶん、やりがいも大きくなりました」と言う

薬剤部から上がってきた薬剤を、新人といっしょにチェックするMさん(右側)。新人が担当する場合は必ず先輩がついて、画面上の処方一覧表と照らし合わせる決まりになっている