学校法人昭和大学 昭和大学附属病院 新人教育体制の強化と「屋根瓦方式」で着実に成長を遂げる新人看護師たち

循環器センターの処置室で、Mさん(左)の見守りの下、てきぱきと12誘導心電図の電極を装着するTさん

病院DATA

昭和大学病院(特定機能病院)
◆病床数/853床 ◆看護/7:1
昭和大学病院附属東病院
◆病床数/199床 ◆看護/7:1
昭和大学藤が丘病院
◆病床数/643床 ◆看護/7:1
昭和大学藤が丘リハビリテーション病院
◆病床数/216床 ◆看護/15:1
昭和大学横浜市北部病院
◆病床数/663床 ◆看護/7:1
昭和大学附属豊洲病院
◆病床数/161床 ◆看護/7:1
昭和大学附属烏山病院(精神病院)
◆病床数/454床 ◆看護/13:1/15:1
昭和大学歯科病院(歯科病院)
◆病床数/22床 ◆看護/10:1

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首都圏を中心に8つの附属病院で、高度な医療と質の高い看護を提供する昭和大学附属病院。その看護の質を支えているのが、統括看護部が実施する、8病院共通の新人教育プログラムだ。各病院では、プリセプターを中心に新人教育責任者やスタッフらが新人看護師を指導する、「屋根瓦システム」が機能している。新人看護師たちは多くの先輩たちに見守られ、着実に成長を遂げている。

8病院共通の新人教育プログラムは標準化から体制強化へ

昭和大学附属病院の統括看護部では2007年4月から、厚生労働省の「臨床看護実践能力」を基準にした8病院共通の新人教育プログラムを実施している。これは1年かけてクリニカルラダー(臨床実践能力評価)のラダーⅠ(指導を受けながら安全に看護ができる)に到達できることを目標に、ゆとりを持たせて研修が組まれ、必要な時期に必要な技術が習得できるように考えられたプログラムで、教育の標準化を図ることができた。2010年4月より法改正で卒後臨床研修が努力義務化されたことにより、一段と新人研修を整備した。また、入職1年目に必要なラダーレベルⅠだけでなく、その上のラダーレベルⅡ、Ⅲ、さらに将来的には管理職かジェネラリスト、あるいはエキスパートか、いずれを目指すかまで視野に入れた、「昭和大学看護職キャリア開発」を構築し、成長できる体制の病院を目指していく。

もう一つ、同院独自の「屋根瓦システム」による、新人へのサポートも好評だ。これについて、昭和大学横浜市北部病院の循環器センターでの事例を紹介しよう。

プリセプターと新人教育責任者、病棟スタッフ全員で見守り育てる

昭和大学保健医療学部を卒業し、昨年4月に同院に入職し循環器センターに配属されたTさんは、「内科も外科も経験できるセンター方式であることと、横浜という環境が魅力だった」と同院を選んだ理由を語り、「プリセプターがいつも見守っていてくれたので、相談しやすく、何とか大変な時期を乗り越えることができました」と振り返る。

苦手だった採血は、業務が終わった後にプリセプターが時間を設け、Tさんの練習台にもなってくれたという。「わからなかったこと、間違っていたことも、単に答えを教えてくれるのではなく、何が原因で、どこがいけなかったのか、一緒に振り返りをしてくれることで、次はどうしたらいいか、自分で気づくことができました」とTさん。

このTさんを支えていたのが、プリセプターになって2年目のMさん(看護歴5年)だ。プリセプティのTさんについて、Mさんは次のように語った。 「Tさんは技術や知識の習得に対してとても積極的です。クリアすべきところは『ここが今日の強化項目です』と自分から言ってきてくれるので、指導しやすかったですね。私以外にも病棟スタッフ全員が指導にあたるので、1年たった現在、知識やできる技術が増えてきて、看護を楽しんでいるところが素晴らしいと思います。私もTさんに質問された時に、しっかり根拠を示して答えられるように、自己学習は欠かせませんでした」。

また、Mさんもプリセプターを経験することで、気づきや学ぶことも多い。「私は周りのスタッフに、自分から進んで声をかけることが苦手でしたが、プリセプターになってそれを克服できたように思います。そして、みんなが働きやすい環境を作っていかなければという意識も出てきました」と、次なる目標に向かって努力している。

この二人の場合は、プリセプティとプリセプターの息もぴったりだ。しかし、ともするとプリセプターにとっては、1年間、新人を指導することが重荷になることもある。そこで同院では新人教育責任者が、新人だけでなくプリセプターの指導、フォローにもあたっている。

多忙な病棟でも一つひとつの技術、知識を確実なものに

循環器看護歴15年のベテランで、同センターで新人教育責任者として5年目を迎えるSさんは、その役割を次のように説明する。
「まず、循環器病棟の特殊性を踏まえた年間の新人教育研修を立案することと、循環器の内科・外科の疾患とその看護について、知識と技術のチェックリストを作り、3カ月ごとにチェックしています。さらに、新人は病棟の全スタッフが育てるのが当院の教育方針なので、毎朝の申し送り時に、新人が現在どのレベルに到達しているのかがわかるように伝えています」。例えば、技術のチェックには「3回ルール」というものを設けた。 1回目は先輩がやっているのを見学し、2回目は先輩と一緒にやってみて、3回目は新人が一人で実践して、最終的にSさんがチェックする。こうして一つひとつの技術を確実なものにしていく。

もう一つ、新人教育責任者の大切な役割が、プリセプティとプリセプターへの精神的なフォローだ。「元気がないな」と思うとSさんから声をかけ、時には師長も交えた面接を行うことで、問題を明らかにし、早期に対応する。

このような環境にある新人看護師たちについて、同センター師長のNさんは、「必要な知識や技術を一つひとつ確実に身につけている」と胸を張る。 そして、「当病棟は、循環器センターと外科の混合病棟で手術や心臓カテーテルが多く、目まぐるしく入退院が繰り返されるためとても忙しく、業務も繁雑な環境にあります。そのために覚えることも多く、入職1、2年目の看護師にとっては大変な職場だと思います。しかし、きちんと教育の段階を踏んでやっていけば、ケアの一つひとつを意味づけられ、必ずや自分のものにしていくことができます」とN師長。忙しいなかでも、院内の勉強会だけでなく、院外の勉強会にも自ら積極的に参加し、学びを深めている先輩の姿に刺激を受ける新人たちも多い。 「ここで力をつけたら、どの病棟でも通用する看護師になれますよ」と、N師長は新人看護師たちにエールを送る。

屋根瓦システムが根づいた現在、「途中で退職する新人は一人もいませんでした」とN師長。毎朝、元気に出勤する新人たちの笑顔が、それを証明している。

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患者さんの急変時は、病室から処置室までストレッチャーですぐさま搬送する。1分1秒を争う緊急事態だ

患者さんのベッドサイドで、新人教育責任者のSさん(左)の指導を受けながら、電子カルテに患者さんのデータを入力するMさんとTさん

8B病棟のチームカンファレンス。電子カルテを見ながら、患者さん一人ひとりについて、情報交換を行う。左からMさん、Tさん、Sさん、Mさん、N師長

新人全員がBLS(一次救命処置)の認定資格を取得するのが同病棟の目標。Sさんの指導を受けながら、真剣に練習するTさん