
真のチーム医療を実現するために。左から順に栄養士、看護師、ケースワーカー、Kさん、PT、医師、ケースワーカー
東京都西部の八王子市に位置する北原脳神経外科病院グループは、北原脳神経外科病院、北原リハビリテーション病院、北原RDクリニックで構成され、超急性期からリハビリ・在宅まで、一貫した医療を提供する。2008年から脳血管障害と関係の深い循環器内科診療も始動。「世のため人のため、よりよい医療を安く」の実現に、スタッフが一丸となって取り組み、地域医療に貢献している。
重厚な佇まいの外観と、内部は広々とした空間に、暖かな配色を用いたアメニティが施され、落ち着いた雰囲気が漂う北原脳神経外科病院。特に外来棟は、まるでホテルのようなインテリアに、ここが病院であることを忘れてしまいそうだ。
さらに、働くスタッフの対応も丁寧で親切。「すべては患者さまのために」をモットーに、各自が患者さまのために何ができるかを考えて行動する、「患者さま中心の医療」の意識が、全職員に徹底され、実践されているからだ。
こうした意識は看護師たちにも行き渡っている。また、「チーム医療を実践する当院としては、看護師が多職種の調整役となり、チームの要となることで、チーム医療がスムーズに行われる体制を作っていきたい」と、看護科長のFさんは考えている。そして、新人看護師たちにも、自ら考え主体的に行動できるようになるための、さまざまな研修が用意されている。
同院の教育担当師長であり、手術室・救急一般外来の師長Mさん(看護歴16年)は、新人教育について次のように説明する。「まずは社会人としてのマナーが大切なので、接遇教育から始まり、一人ひとりの知識や技術を確認した後、新人の人数によりプリセプター制にするか、病棟スタッフ全員で指導するかを決めています。さらに現場では、各自のペースに合わせ、きめ細かく指導しています。また、入職間もなく、研修で全部署を回ることで、当院で今、自分は何ができるかを考えてもらっています」
Mさんが言う研修とは、職種間の壁を打破し、真のチーム医療の実現を目指す、同院独自のユニークな研修である「ローテーション研修」のことだ。この研修では、看護師だけでなく、医師やリハビリ科・薬剤科・医事課の全職員の新入職者がグループを作り、すべての部署を体験する。「教育というと、どうしても上から与える形になりがちですが、当院の教育方針は『自分で考え行動できるスタッフを育成する』こと。脳神経外科はいかに早く適切な処置を行い、患者さまの障害を最小限にくい止めることができるかは、医師だけでなくコメディカルの力にもかかっています。そのためには指示されるのを待つのではなく、自ら考え行動することが大切です。それに当院なら、脳神経外科看護の救急・手術からリハビリ、在宅と、継続してかかわることが可能です」
こう説明するMさんは、アドバンスト・ナースでもある。これは救急から在宅までを、一人の看護師が受け持つ脳神経外科看護のスペシャリストだ。Mさんが発案して定着し、現在、その第一線で活躍している。
このアドバンスト・ナースを目指す人のためのコースや、専門分野でキャリアアップを希望する人のための認定看護師コース、病院のプロジェクトリーダーとして活躍したい人のためのマネジメントコース、仕事と家庭を両立させたい人のマイペースコースなど、個々のライフステージに合わせ活躍できるさまざまなキャリアコースが設けられているのも、同院看護科の特徴だ。
「脳神経外科の専門病院で働きたい」と、昨年、北海道の学校を卒業して同院に入職したA3病棟のKさんは、脳神経外科看護に興味を持ったきっかけを次のように語る。
「学生実習の時、私が受け持った患者さまは、脳梗塞で失語と片麻痺が残った女性の方で、後遺症を受け入れられない状態でした。まだ知識も技術もなく、何もできないなかで、こうした患者さまに私は看護師として何ができるのか、もっと深く学びたいと思いました」
また、Kさんがこの1年で受けた新人研修のなかで、特に印象に残っているのがローテーション研修だ。入職当初の4月には、多職種からなる6人の新入職者グループで事務系の部署を、その後、リハビリ科や医事課のスタッフ3人と臨床部署を体験した。 「放射線科の研修では、放射線技師の方々が、救急外来で24時間、医師のサポートをしていることや、医事課では外来が混み合っている時に、どうしたらスムーズに診察、会計まで終えることができるかを、常に考えていることを初めて知りました。私はこれまで病院のほんの一部しか知らなかったのだと気づきました」(Kさん)
この研修は新入職者が他部署で、どんな人がどんな役割を担っているのかを理解する場であると同時に、他部署のスタッフに顔と名前を覚えてもらい、チーム医療に不可欠なコミュニケーション能力を養う場でもある。「研修後もいろいろな部署の先輩が、『頑張っているね』と声をかけてくださり、とてもうれしいです」とKさん。そのおかげか、Kさんは昨年度の「新人賞」をみごと受賞した。同院では毎年末、さまざまな賞を設け、頑張った人たちを表彰している。新人賞は新入職者のなかで一番輝いている人を、全職員が投票して決める。「看護科のスタッフが受賞したのは初めてです」と、F科長は、Kさんの受賞を自分のことのように喜んでいた。
他部署の人に評価されるということは、新人看護師たちの働きを、全スタッフが見守っている証でもあり、医療チームの一員として認められたことでもある。こうした横のつながり、職種間の壁を越えた交流やコミュニケーションが、チーム医療にとっても非常に重要である。
このような職場環境と、自主性を育む教育により、自分で考え行動し、チーム医療の要となりうる看護師たちに育っていく。
経口摂取できない患者さまのために、味の違う歯磨き粉を使って口腔ケアをしながら、味覚の刺激を行うKさん
北原リハビリテーション病院での食事介助。ここでは看護師は白衣ではなく、機能性を重視したユニフォームを着用する
先輩のベッドサイドでの処置を手伝うために、包交車で病室に向かうKさん
教育担当師長のMさん(左)と、2010年度の新人教育担当者のSさん